マルセイユ版タロットの話

 このページは、ただのエッセイみたいなものです。
 ウェイト版をメインに使用していた私にとって、マルセイユ版はどう見えていたのか。何故なかなか使わなかったのか。なのにどうして今はハマってるのか。そういったことをつらつらと書き連ねています。
 もともとマルセイユ版を愛好していらっしゃるかたには、「へぇ、ウェイト版派ってそういうこと考えてることもあるのねぇ」と思っていただければよいですし、かつての私と同じようにマルセイユ版に手が出ないでいる人には、もしなにか敬遠する理由、その誤解みたいなものを解き、面白さや魅力などを伝えられたらなぁと思います。
 もちろん、「そもそも絵が好きじゃない」「なんか合わない」というのは、ウェイト版派でもマルセイユ版派でもあることなので、無理にどっちも好きになることはありません。それに、「こんなもん読んでもなにがいいのか、ちーとも分からん!」なんてことも当然あると思います(^^;
 ともあれ、「私とマルセイユ版★」みたいなもので、あまり大した内容ではありません。軽〜くお読みくださいませ。……うん、ちょっと長いので、お暇なかただけどうぞ。

 なお、文中のリンクはすべて別窓で開きます。

 

マルセイユ版への苦手意識

 1に小アルカナ2に参考書不足
 この二つが、マルセイユ版に触れずにいた二大要因です。

 たぶん、マルセイユ版を使わないかたの中には、私と同じように、「小アルカナが数札で、読めない。ウェイト版やデザイン系のほうが、絵からイメージやインスピレーションが得られる」というかたがいらっしゃるのではないでしょうか。
 全78枚すべてが絵札のウェイト版は、絵を挿絵のように見て、そこにどんな物語があるかを思い浮かべればいいのに、マルセイユ版の数札はシンボルのみ描かれているため、見ただけでは意味が分かりません。
 意味を丸暗記するような記憶力はないし、かといって、いちいち本を開いて意味を探すのではいつまでたっても初心者みたい。大アルカナしか使わない? でもそれだと、残りの56枚が勿体ないし、それに、78枚使ったほうが本格的、高度じゃない? ―――私の場合、なんかそういう思い込みもあって、「使いづらい」と敬遠していました。
 これが理由の1つめ。

 2つめの理由は参考書の不足です。
 ウェイト版には、ゴールデン・ドーンという有名な魔術結社の教義に基づいた、魔術道具のような側面があります。なので実はたぶん、マルセイユ版よりもはるかに難しいのではないかと思います。
 しかし、ウェイト版には多数の解説書、参考書がありました。入門向けからマニアックなものまで、このサイトで紹介している書籍も、大半がウェイト版をベースにしたものです。それを読んでいくことで、独学なりに知識を増やし、理解を深めていけます。それがウェイト版に本来込められた魔術的な意味とは違っていたとしても、「自分なりにモノにしていく」ことはできました。
 それに比べるとマルセイユ版って、未だに、日本語で読める「詳しい参考書」がほとんどありません。それも、私の場合は一冊や二冊では足りません。一冊の本を読んでも、それをまるまる信じることはなく、得るのはあくまでもエッセンスです。複数の本を読んでいくことで、比較検討したりもして、やっと「私にとってはこうかな」というのができてくる感じです。
 だから、もしマルセイユ版の参考書がもっとたくさんあれば、もっと早い段階でデッキも手に取っていたと思います。
 大アルカナの見方と小アルカナの解釈の仕方。何人もの占い師・研究者の意見や観点。スタンダードな解釈と、何故そう解釈するのかのノウハウ。そういったものを、多くのウェイト版参考書のような感じで、入門向けに解説したもの、学習者向けに解説したもの。なんでないねん!!T皿T これは今も変わらぬ私の魂の叫びです(笑

 そんな私は、ずーっとマルセイユ版を持たずにいました。
 しかし、タロットのコーナーを作ってデッキの紹介などするようになるタイミングで、「マルセイユ版も一つくらいは持っておかないとダメだろう」と思い購入。それが、ロ・カスラベオから発売されている「タロット・オブ・マルセイユ」です。
 選んだ理由は、まずはAmazonで安価で手軽に手配できることと、ロ・カスラベオのものなら紙質などの点で大きな不備はないだろうこと、そして、他のと比べて……比べても差が小さくてどれもどれのような気はしましたが、それでも、色がはっきりしていて分かりやすそうであること。この3点でした。
 そうして手に入れはしたものの、マルセイユ版は1個だけ、しかも「持ってはいるけど使わない」状態でした。

 

マルセイユ版にハマる

 だがしかし。
 2012年の冬、どうにももやもやと、「マルセイユ版をもっと使えるようになりたい」「もっとなんか面白いんじゃないか」みたいな気がしてきて、思いきって4つほど頼んでしまいました。
 その時点でのマルセイユ版の印象は、「どれも似たり寄ったり」でした。
 マルセイユ版にもいくつかありますが、そこには、デザイン系のデッキのようなはっきりとした絵柄の違いやイメージ、デザインの違いはありません。言ってみれば、「ウェイト版にもいくつかある、リライト・リカラード系だけを見比べているようなもの」です。
 実際のところはそれぞれに個性もあるのですが、その時点の私では「ほとんど変わらない」と感じられるものでした。そして、そう感じられてしまうなら、私にとっては「どれでも同じ」ということ。
 それでも、少しは違うのは見れば分かりますし、背景色が塗られている「マルセイユ・スペイン」など、絵柄はほとんど同じでも見た目にはまったく違うものもあります。それに、似ているとしても、だからこそよく見比べてみたらなにか違いとか、面白さが分かるんじゃないか。
 面白さを知りたい。正確には、「マルセイユ版は面白いということを知りたい」。そんな思いから、マルセイユ版のことについて書かれたサイトとかブログがないかを探しました。検索キーワードは「マルセイユ タロット 魅力」。マルセイユ版の魅力について語っているところがないかと思い、検索結果をクリック クリック。
 そして見つけたサイト・ブログも参考にして、「タロット・クラシック」「CBDタロット」「カモワン・タロット」「マルセイユ・スペイン」を注文しました。(「カードの履歴」さんで探して一括注文したため、CBDが入った感じです。また、見た目にはっきり違うものということでクラシックが選ばれてます)
 とりあえず4つ。これで面白いと思えなかったら、(今の)自分には合わないんだと認めよう。そんな感じでした。

 届いたものを実際によく見てみると、元からあったものも含めて、どれもこれも、たしかに違う……。
 でも正直、最初は「うーん」でしたね。だって大枠が一緒ですから。パッと見た感じの差は、ウェイト版とデザイン系の間にある差に比べたら、微差と言っていい程度のもの。
 でもとりあえず手元に来た以上は、サイトにアップしたいのでせっせとスキャン。どう違うのか、どんな特徴があるのか、購入を考えている人にとって少しでも参考になるような、事実を観察・確認しないといけません。
 それでカードを見て、見比べて、あれこれ書こうとして、気づくのです。「あれ、こっちは通し番号あるけど、こっちはないぞ?」とか「なんでこのデッキ、カップだけ左右の数字さかさま?」とか、「こっちの顔はけっこう美人なのに、こっちはへちゃむくれだなぁ」とか、いろいろと。
 実は、ロ・カスラベオのマルセイユ・タロット、つまり「バーデル版をベースにしたタロット」の、ワンドが特殊なことにしばらく気づきませんでした。他のデッキを見ていて、「もうっ、ワンドもソードもなんでこんな形してんだよ。それっぽく見えないじゃん」とか思ったり、「あ……ワンドのほうがまっすぐで、ソードはカーブしてるのか」なんてことに今更気づいたり(←それまでどんだけマルセイユ版を見てなかったかが如実に知れるエピソードです)、その挙げ句に、「あれ? こっち、ちゃんとワンドは棒っぽく描かれてるじゃん!?」と(笑
 ウェイト系のデザイン・デッキのような、あからさまな違いではないものの、実はいろいろと違うことが分かってきたマルセイユ版。このあたりから、「よく言われてるコンヴェル版だとかってなんなんだ?」といった、マルセイユ版の基礎知識みたいなことも気になって仕方なくなり、自分の持っているデッキを見比べて違いを発見して、「へ〜、そうなのかー」とかやってる内に、どんどん面白くなってきた感じです。

 こうなると、歴史だって調べたいし、調べて知って、興味を持てばそのデッキだって欲しくなるしで、マルセイユ版からクラシック系まで、芋づる式です。
 2013年1月の怒濤の追加ぶりをリアルタイムでご覧だったかたは、軽く呆れていらっしゃったのではないでしょうか。マルセイユ版ばかりではありませんが、1ケ月間に追加したデッキは約30個という始末です。
 その中には、「昔ながらの絵をそのまま復刻したのって、なんか微妙な感じだけど……」と思っていた、「ヘロン社のコンヴェル版」もあります。見た目そのまま好みというわけではないのだけど、やっぱり一個くらいはこういうのも持っていたい。でもどうしよっかなぁと迷っていました。最後の一押しは、私が好きなブログの管理者さんイチオシのデッキだということ。迷っていたけれど、「よし、このかたがマイ・ベストだって言うものをちゃんと見てみよう!」という決め方です(笑
 そうして手元に来て、実際に眺め、使ってみれば、なんだか良い感じ〜♪ 後でお気に入りのデッキのところでも書きますけど、色や線画が淡くて、ものすごく手に取りやすい風合いで、予想外に自分の好みにフィットしてしまいました。
 こうなると、こういう古い絵柄そのもののデッキももっと欲しくなって、はい「マドニエ版」に「ピアトニック社」のもの〜、とまた芋づる式。
 なんというか、私は数少ないデッキに丁寧に親しんでいくというより、コレクター気質もあって、どんどん手元に取り寄せて、その中で本当にピンと来たものを実用する感じですね。

 

マルセイユ版の魅力

 たぶん、この版画絵そのものになにも感じなければ、絵の点でピンと来ないデッキなのだろうと思います。私は、手を出さずにいたときも、別にこの絵が嫌いなわけではありませんでした。

 実際に手にとって、いろいろ見比べ、実際に試してみて分かったこと。それは、私にとってマルセイユ版は、歴史や成り立ちに興味があるアイテムだということと、占い用としては"気負わなくていいデッキ"だということです。
 これはあくまでも、2013年の大量追加時の感想ですが、私にとってマルセイユ版は、ウェイト版に比べると、ずっとフランクに付き合える、という感じがしました。
 300年以上も生き残ってきただけのことはある、シンプルだけどイマジネーション豊かな寓意。世界観や文化を特に限定せず、世の中のいろんなことに通じていく、タロットが持つ汎用性・普遍性の高さ。これらは、デザイン系のデッキでは薄れてしまうものです。(そのデッキの世界観を表すのが優先になってしまうことが多いですね)
 そして、ウェイト版やトート版ほど、あれやこれやと"作り手"から「こうあるべきだ」とは言われていない―――。これが、そのときの私にとっての思いがけないツボ、マルセイユ版を手にして自覚した、「ウェイト版とマルセイユ版の違い」でした。

 ウェイト版、トート版は、作られたのが100年くらい昔です。そのため、製作者の意図も書籍などでしっかりと残っています。
 しかも、作っているのは魔術結社の中でも秀でた人たちです。ウェイト博士の『ピクトリアル・キー』、クロウリーの『トートの書』。そこで語られるのは、彼等が属し、そしてそこで学び信じていた、魔術の教義です。彼等のタロットは、それに則って作られています。
 そのため私にはどうしても、「ある程度は彼等の意図に従って読むのが正しい」ような気がしてしまいます。
 その点マルセイユ版は、「秘儀が込められている」という主張もあるとはいえ、それは使う側の信念・主張。マルセイユ版というものを世に送り出した"作り手の意図"は、特に残されていません。
 そもそもはゲームカードとして民間に広まっていたものだという定説もあって、だからもっとシンプルに、描かれた絵の基本的な知識だけで、見たまま素直に読んでもいい感じがするのです。

 2013年頃、ここに、「ウェイト版は一流大学の紳士的な教授。スマートで人気もあるが授業は実はかなり難しく、教授の言ってること言いたいこと、本当は半分も分かってないんだろうなぁ」、「トート版も一流大学の、しかしこちらはエキセントリックな教授で、なに言ってるかよく分からない。教授の世界に入り込めさえすれば、面白いんだろうに」、それに対して「マルセイユ版は、なんでも知ってる下町のじいちゃんで、気さくに相談に乗ってくれる」のイメージだと書きました。
 このたとえでいくと、今でもウェイト版、トート版はこんな感じですが、2014年初夏現在、マルセイユ版のイメージは違ってきています。ここまでフランクで気さくなイメージではなく、やっぱり大学の教授なんですけど、真っ白い髭がふかふかで、いつもにこにこしてる感じでしょうか。あれこれと細部について難しい言葉で語ることはなく、ごくシンプルに、「うん、それでいいんじゃないかな」とか、「それで、君が本当にしたいことはなんなの?」と、核心に触れてくる。
 そんなイメージです。
 あ。
 ちなみにこれは、マルセイユ版を使って占ったときそう感じるというのではなく、マルセイユ版というものそのものについてのイメージの話ですよ。

 

小アルカナと参考書籍

 マルセイユ版にどうしても手が出ない理由が、もし数札の小アルカナにあるとしたら。
 今の私からは、「じゃあ別に使わなくてもいいんじゃ?」と申し上げられます。
 いくつかの参考書籍などを見るかぎり、マルセイユ版の小アルカナは、大アルカナの解釈のサポートとして追加で展開されたり、同じ数字の大アルカナに準ずるとされたり、サブ的な位置づけに置かれることもあるようです。

 「大アルカナだけでは本格的な占いにならないんじゃないの?」という感覚もあるかもしれません。
 でもたぶん、本当に高度な占い師さんになると、78枚でも22枚でも、相談の内容に応じてどちらでもしっかりとした答えを出しそうな気がします。
 そしてまた、「高度とかなんとか、程度の差なんか気にしても仕方ない」というのが、私の結論です。そんなことにこだわるのは、「本格的でありたい」という妙な自尊心、見栄みたいじゃないかなと。だから今は、使っていて楽しいこと、面白いこと、なるほどなと思えることが第一だと思っています。
 なので私の場合、こまかいことまで出したいと思えばウェイト版78枚を使いますが、小アルカナが示すようなこまかいことではなく、アウトラインを掴みたい、心の問題だというときには、マルセイユ版の大アルカナだけを使ったりしています。

 でも56枚も使わずにいるのは勿体ない?
 そう感じるかたは、最初から大アルカナだけのデッキを購入するという方法もあります。(たとえば「ロ・カスラベオのバーデル版大アルカナ」) ただ、少し割高で、ともすると78枚のセットよりも高いことも……。
 参考書籍の中には、変則的なデッキの使い方を説明したものもあります。アレクサンドリア木星王さんも、練習用としてですが「大アルカナにエースだけ加えて占ってみよう」といった提案をしてらっしゃいます。それに、占う内容に合わせて小アルカナの特定のスートだけを使った方法もありますし、大アルカナ+エース+コートカードの42枚を使うのもいい感じ。そういったことをふまえると、何枚で占うかなんて、厳密に決められたものではないと言えます。

 それでも小アルカナを使わないのは勿体ないと思われるなら、数秘をかじってみるのがおすすめです。
 タロット本の中にも、特に強く数字に絡めて解説してある松村潔さんの著書があります。(文章自体が少し散漫で読みにくく、前提となる知識がないと理解できない部分も出てくるので、初心者向けではありません)
 "数が持つイメージ"を学んで、自分なりに考えて、繰り返して、感じられるようになれば、あとはスートの要素と合わせてイメージをふくらませていけばOKです。
 タロットを本格的に学びたい、使いたいと思うなら、気長にいきましょ〜。


 日本語で読める参考書があまりにも少ないマルセイユ版……T□T
 このコーナーの書籍紹介で、「特定デッキ専用」として、そこでいくつか紹介しています。しかし内容は、端的すぎて暗記に頼るしかない感じの入門書、カモワンの専用解説書しかもプレミア価格、カモワンの洋書 orz
 なのでむしろ、「学習用本格編」で紹介しているもののほうがいいかも。マルセイユ版の解説書というわけではないけれど、マルセイユ版にも使える内容のものがあります。『リーディング・ザ・タロット』、『魂をもっと自由にするタロットリーディング』『大アルカナで展開するタロットリーディング』などがそう。ただしどれも少し特殊かも。

 英語でも構わなければ、ぜひとも、Yoav Ben-Dov博士の『TAROT The Open Reading』を手に取っていただきたく思います。(特定デッキ専用のコーナーで紹介している白い表紙)
 これは英語も平易で分かりやすい上に、マルセイユ版について非常に丁寧にわかりやすく解説した良書で、ナンバーカードについても絵解きをしてれています。英語をものともしないマルセイユ版ユーザーの間では、2013年冬の発刊以来、大絶賛されている一冊です。
 もう少しライトなものが良ければ、デッキとガイドブックがセットになったものもあります。「ユニバーサル・マルセイユ」には60ページほどのガイドブックがついたものがありますし、「エクスプロア入門セット」のガイドブックは、特にマルセイユ版には限定しませんが、シンプルで汎用性が高いものです。

 

お気に入り&マルセイユ初心者へのおすすめデッキ

 いい加減長くなってますので、これで最後です。
 半ば趣味とお節介の話〜。

 似ている、同じようなもんじゃん、としか見ていなかったマルセイユ版の中に、それでも「これはええわ〜」というものと、「これは好みじゃないな」というのが生まれました。
 最初は「なかなかいいな」と思ったものが、他のものが増えてくるにつれ、あまり魅力的に感じなくなったりもします。しかしそれもまた一時的なことで、少し視点が変わると、また面白いと思うようになるのかもしれません。

 以下、とりあえず今の私の好きなデッキと、マルセイユ版も試してみたいけどどれがいいかなと思うかたに、おすすめのデッキでも紹介してみます。
 順番は、マルセイユ初心者へのおすすめ順。おすすめの理由も記しますが、どんなデッキがフィットするかは人それぞれなので、一参考意見としてご覧ください。
 タイトルの横の★が、「マルセイユ版の中での気に入り度」です。(最大5)

 

「ユニバーサル・マルセイユ」 ★★★
 現代的なものが良いなら、これかなと思います。
 おすすめの理由は、まず、ワンドの形が「普通にワンド」で見分けやすいこと。それから、小アルカナの下に小さくローマ数字が入っているので、上下が分かりやすいことです。
 正逆を取る人であれば、上下が分かりやすいのは便利ですし、それに、片付けるときに元通りにできます(笑) こだわらない人はどうでもいい要素ですけど、几帳面な人には大事なポイントかも。
 このデッキは彩色が水彩のような感じで、少しやわらかくなっています。小アルカナの背景にも共通した色が塗られているため、見た目での判別はますます簡単。
 ちょっと気になるのは、このデッキのべースになっているクロード・バーデル版というのは、マルセイユ版の中ではマイナーっぽいということ。それから、たぶんこの復刻版、色の数が減らされています。
 でも、あんまりこまかいこととか伝統とかにこだわらないなら、見やすいし、使いやすいし、それになにより、ロ・カスラベオのスタンダードなデッキなので、値段が安いのに紙質は非常に実用的。
 ガイドブックつきのものもあるので、英語がそこそこ読めるかたは、それを頼んでもいいかもしれません。

「mamanmiyukiタロット」 ★★★★★
 クラシックなものの雰囲気は好きだけれど、線のかすれ、色のはみ出しなどの粗さが気になるというかたには、これがオススメです。
 20313年7月に完成した、個人製作のデッキです。ベースはピエール・マドニエ版で、基本的には線画をトレースして作られたものですが、人物の表情などは作者のmamanmiyukiさんのこだわりで描きこまれています。
 サイズが小さく、紙質も実用的。場所を取らないので、普段の保管ももちろんとして、持ち歩きたい人にもいいですね。
 古いマルセイユ版というのは版画+ステンシル彩色です。そのため、古さそのままの復刻版は当時の印刷技術の粗さもあって見づらいですし、ロ・スカラベオなどで復刻されたものは機械的なきっぱりした線画と着色になっています。その点このデッキは手書き+水彩。機械的になりすぎない手書きのあたたかみがあります。
 基本的に上下は分からないタイプですが、裏面もまた手書きであり、「デジタルで反転させてつないだ」ということがありません。そのためよく見れば上下が分かります。

「ヘロン社のニコラ・コンヴェル版」 ★★★★★
 紙質が良く、サイズも少し小ぶりなので、非常に扱いやすいデッキです。また、カードにはすべて、大アルカナも小アルカナも、下部に小さなスタンプが押されています。小アルカナも使って、正逆とる占いの場合には大変便利。
 価格は少し高めですが、それでも4000円程度で手に入りますし、国内の通販サイトでも扱っているところが多いのもポイントです。
 オールドスタイルな見た目が気に入るなら、真っ先にこれをおすすめしたいですね。あと、コンヴェル版は、現在流通している多くのマルセイユ版のベースを務めている、おそらく最もメジャーなデッキです。できるだけ伝統的なものを、改変の少ないものを、というこだわりがあるかたには、入手のしやすさとメジャーさを合わせて、これがテッパンかな。
 このデッキは紙の地色がベージュで、使われている色もシック、落ち着いた色合いです。そのため全体的に柔らかく、目に優しい感じ
 愛好者の多い、大いなるスタンダードではないかと思います。

「カモワン・タロット」 ★★★
 "カモワン流"という追加の知識は、別になければないで構わないものとして、ただデッキだけ見た場合、非常に現代的で馴染みやすいのではないかと思います。
 このデッキは人物の顔も少し現代的に描き変えられていますし、色の数が他のデッキよりも多く、カラフルで、明るい印象です。カードの下部にクレジットが入っているため、上下も分かるようになっています。
 また、他のデッキよりも視線の向きを明確にしてあるため、「視線を追う展開法」という、あまり日本では知られていないスプレッドを使うのもやりやすいですね。
 ちなみにこのカモワン・タロットは、コンヴェル版をもとに、「マルセイユ版が本来持っていた秘儀的な絵を復活させた」と謳われています。それを信じるかどうか、納得して受け入れるかどうかは、使う人次第。もし"カモワン流"というのに興味があれば、公式サイトもありますし、スクールもやっているようなので、学べる場が用意されているのは嬉しいところかも。

 

「ジーン・ドダル版」 ★★★★★
 ここから先のものは、初心者におすすめはしません。単なる私のお気に入りです。
 このドダル版も、もちろん気に入ればこれで占って良いのですけど、他のマルセイユ版との共通項が少ないので、汎用性が低いかと思います。
 しかし私にとっては、「マルセイユ版おもろ★」と思った決定的なデッキがこれ。とにかく顔が面白いというだけの理由なんですけど、ユルキャラ系というか、変顔オンパレードというか。あちこちでニヤニヤできるので気に入っています。現代的に復刻されたバージョンで手に入れましたが(オリジンに近いほうも欲しい……だがこれが相当難しい……)、デカ目で可愛いし、色使いも明るくて、どうにもコミカルな印象。
 なんというか……デザイン系にある可愛らしいデッキ、美しいデッキは、そう感じてもらうようにと意図して作られた、商品価値としての可愛さ・美しさという感じです。しかしドダル版に感じた可愛さって、「そう思わせようとしてこうした」ものじゃ100%ないだろうから、どうしようもないんですよね。「なんでこんなの可愛いとか思ってんだよ自分」に、どんな言い訳もできません。「いやもうだってなんか可愛いじゃん、変な顔してて」ってこれしか言えない。
 たいがい失礼なこと言ってる気もしますが、予定調和のないところで突然陥ったフォーリン・ラヴ★だったわけです。

「ピエール・マドニエ版」 ★★★★
 こちらは価格や実用面で少し厳しいかなと思います。
 これは、古典的なマルセイユ版の連続復刻プロジェクトとして、「できるだけ当時のものをそのまま」というコンセプトで復刻されたものです。
 価格が5000円オーバーで決して安くはないし、紙が少し厚いためシャッフルも少しやりづらいですね。数量限定での復刻なので、いずれは在庫が尽きてしまうでしょう。そのときに再販されないとしたら、価格が高騰する可能性もあります。
 そういった点で、マルセイユ版にあまり馴染んでいない人が手をだすのは博打です。よっぽど絵が気に入ったのでないなら、他に手に入りやすいもので試してからのほうがいいと思います。
 しかし私としては、線のシャープさ、色のかすれ具合、人物などの表情や、いかにも版画らしい印刷の写りなども含めて、クラシカルなのに現代的にも感じられる、非常にお気に入りの外見です。
 ただやはり、実用品というより観賞用。そして紙包みのため(外ケースはしっかり丈夫なものです)、出すたび片付けるたび、ものすごく気を使います(笑


 つらつらと書いてきました。
 ここらでいい加減に終わりにしたいと思います。
 マルセイユ版を買おうかどうしようか迷っているかたにとって、なにかになれば幸いです。よし買おうと思ってくださるのでもいいし、やっぱりピンと来ないなぁと思われるのでも構いません。
 お付き合いくださった物好……もとい、暇じ……いやいや、奇特なかたには、厚く御礼申し上げます(笑