アセンブル:高機動機体

 ACシリーズに触れたとき、ブレードを見て、「これでカッコ良く戦えたらいいな」と思いませんでしたか? もちろん、「興味ない」という人もいるでしょうが、ブレードに憧れを持つ人は少なくないのではないかと思います。
 しかし、ブレードも含めて近距離で行う機体というのは、初心者向きではありません。
 自機から非常に近い位置で、しかも多くの場合高速で動き回る相手には、ついていくのも一苦労です。攻撃する以前に、相手の姿を見続けることもままならない、というのが初級者さんの現実。
 でも、「いつか」のために。あるいは、その「いつか」が今の人のために、近距離で機動力をいかした戦い方をする機体をアセンブルしてみたいと思います。……ブレードの話からはじめていますが、ブレードの使い方講座ではないのであしからず。

 

機動機に必要な能力・不要な能力

 近距離機動戦に必要な能力を大雑把に説明するなら、正確さではなくスピード、と言えます。狙撃機とはまったく逆です。
 たとえ相手が重量機だとしても、自分の近くを動かれれば追いかけるのは大変です。プレイヤーのテクニック以前の問題として、ついていける性能のある機体でなければ話になりません。
 ただし、速ければそれでいいわけではありません。その機体をプレイヤーがコントロールできなければ意味はないのです。なので、より正確に言うならば、「プレイヤーがなんとか制動できる範囲で高速であること」が必須条件でしょう。その詳細はこの後にご説明します。

 逆に、不要な能力は正確さです。
 これも後述しますが、近距離戦の場合、遠距離から狙撃するときに必要だった正確さは、ほぼ不要になります。もちろん精密であるに越したことはないとしても、この点は、より重要な性能のために妥協する部分になります。

 以下ではそれぞれの点について、実際のステータス、パーツと合わせて説明していきます。

 

機動機に必要な能力

 スピード、と一口に言っても、いくつかあります。
 機体の手足の動きの速さ、移動の速さ、それから、一息に移動する距離の大きさというのも一種のスピードに近いかもしれません。それから、攻撃に移るまでのスピードも重要です。

 機体の手足の動きというならば、見るべきステータスは、まずは腕部「運動性能」と脚部「旋回性能」です。運動性能は、腕が銃を動かすスピード。旋回性能は、Rスティック左右で旋回する、あの速度ですね。
今回は緑色の線を見てください 左の図は、敵が近くにいる場合と遠くにいる場合の比較図です。今回見ていただきたいのは、ピンク色の線と、自機に書き加えてある腕の部分。敵が遠くにいる場合は、腕をあまり動かさなくても狙えます。しかし近くにいる場合は、より大きく腕を動かさなくてはなりません。もしかすると腕だけでは間に合わず、機体を旋回させる必要もあるでしょう。しかもそれは短時間で行われなければなりません。とすると、ゆっくりしか動かせない腕、ゆっくりしか回らない体では、相手を狙うことすらままならないことになります。
 それから、どうせなら振り回しやすい武器を選んだほうがいいですね。「近接適性」の高い武器は、文字通り、近接して使うのに高い適性を持っています。慣れない内はマシンガンやアサルトライフルなど、近接適性の高い武器を選んでおきましょう。こまかな数値の差は、もっと慣れてきたときに実感できるようになる……かもしれないものですので、最初からこだわる必要はありません。
 なお、ブレードを使う場合には、運動性能は関係せず(たぶん) 、重要なのはレーザー武器の威力に関わる「EN武器適性」になると思います。
 
 それから、自機が移動するスピードも重要です。
 相手が自分から近づいてきてくれるなら、自分は動かずに、運動性能と旋回性能の高さだけで相手を捉えることもできますが、相手が逃げようとするなら、それを追いかけなければなりません。自分の得意間合い、近距離へと接近する必要があります。
 機体が移動するスピードを生み出すのは、ブースターと、機体+装備品の重量です。
 推力の高いブースター、軽い機体、というのが一番分かりやすいですね。
 しかし、軽い機体はそこそこの推力でも素早く動きます。なので、機体が軽ければブースターはそれほど高推力でなくてもいいかもしれません。逆に、少しくらい重量があっても、高推力のブースターで補強することで、スピードを上げることは可能です。
 試しに、とにかく軽い機体と重い機体とを作って、同じブースターを入れて実験してみてください。重量によるスピード差がよく分かります。

 ブースターの推力は、機体のスピードを決めます。しかし、この単純な「移動速度」と、移動する距離の大きさはちょっと違います。
 短距離を素早く動く機体がいいのか、スピードは少し落ちても長い距離を一息に動く機体がいいのかで、ブースターの選択は変わってくるでしょう。
 この点についての詳しい解説は「噴射時間とは」をご覧ください。端的に説明することは難しいので、ここでは割愛いたします。

 最後に、攻撃に移るまでのスピード、と言った部分についてです。
 これはFCSの「ロック速度」のことです。
 敵は自分の近くを動きまわり、自分も敵の近くを動きまわる。その状況下で相手の姿を自分の視界に捉えておくことは、中・遠距離に比べてはるかに困難です。ものすごくコントロールが上手くて、自力で相手についていける人はともかく、初級者を脱出しようというレベルの人には、まず無理。というか、それができないから初級者なわけで。
 それなら、相手が見えている短い時間に、少しでも確実な攻撃をしたいところ。そのためには、一瞬で相手を赤ロックできたほうがいいのです。(赤ロックについては「ロックマーカーの見方」をご覧ください)

 

機動機に不要な能力

今回は緑色の線を見てください さて、以上のような「必要な能力」のために、妥協しても問題ない性能についてです。
 一言で言えば正確さ。もっと具体的に言えば、「照準精度」「射撃精度」です。
 再び出てきたこの図の、今度は緑色のラインを見てください。敵を狙って撃ったけれど、少しだけ左にブレてしまった場合なのですが、近距離にいる機体には、それでもヒットしています。
 多少のブレは問題ない。それが近距離での戦闘です。ですから、近距離で使うような武器は、そもそも高い精度を持たされていません。そしてそれを扱う腕も、精度は特に必要とされないのです。

EN消費の問題

 スピードを確保するために推力の高いブースターを使うと、問題になるのがENです。
 どういうことかというと……。
 推力の高いブースターは消費ENも大きい傾向にあります。それに、近距離で激しく動きながら敵を追い、敵から追われていると、QBも多用することになりがちです。つまり、狙撃機などと比べると、近距離での高機動戦闘は非常に多くのENを必要とします。
 しかし、MAXWELLなど大型のジェネレーターは、とにかく重いのが難点。
 軽量脚では積載が足りないこともありますし、そもそもジェネレーターが重いのですから、その重量分スピードダウンすることにもなります。(ジェネレーターの重さをナメてはいけません。軽いものと重いものでは、3000以上の重量差があります。レギュ1.40だと5000もの差です。コアや脚と同程度、ヘタをするとそれを越える重量差を抱えているのです!)
 だからといって軽いジェネレーターを入れると、大量消費するENをまかないきれないこともあります。
 近距離で機動戦を行う機体が難しいのは、EN面での調整と、戦闘中のEN管理も必要になるからです。
 
 ではどうするか?
 いくつかの例を挙げますが、どれも「調整」が必要です。単純に、「これをこう替えればOK」とはいきませんのでご注意を。

 たとえばその1。脚を中二脚にして積載量を増やし、ジェネレーターを大型にする。脚とジェネレーターが重くなりスピードダウンした分を、ブースターの推力で補強する。
 ただし、せっかく大型にしたジェネレーターですが、その分EN食いのブースターを使うので、うっかりすると「前よりもEN効率が悪くなって、しかも遅くなった」なんてことにならないように。スピードを少し妥協するのもいいでしょう。初級者さんはこれがオススメです。速すぎても扱いきれないので、スピードを妥協して積載やENに余裕を持たせ、上達するにしたがってシェイプアップしていけばいいと思います。

 たとえばその2。とにかく省エネにする。
 外見にこだわりがないなら、小型のジェネレーターと高推力のブースターで問題なく動けるように、とにかく機体や武器を省エネにすることもできます。

 たとえばその3。ていうか本当にそんな高推力のブースターが必要?
 機体が軽いため、推力が程々でもスピードも距離も得られるのが軽量機です。なにも考えずにメインブースターをVIRTUEとかにした挙げ句、カッ飛びすぎて全然コントロールできてない、なんてオチはありませんか?
 スピーディに飛び回る機体はカッコいいかもしれませんが、自己満足の領域です。性能を求めるなら、自分に扱える機体にしなければなりません。その際、それでもVIRTUEがいい、というならそれで良いのですが、実はこんなに必要なかった、なんてことがないよう気をつけてください。
 
 機体そのもので調整できるのは、大雑把にはこれくらいでしょうか。
 調整の仕方はプレイヤーそれぞれだと思いますので、自分であれこれ考えている内に、自分なりの調整の仕方、妥協点を見つけられると思います。いろん攻略サイト・ブログで上手い人たちの理論を探してみるのもいいですね。
 機体の調整でどうしようもない部分は、プレイヤーの戦術とか、操作テクニックで補う部分です。がんばってください。ファイト★

 

ブースターの選択

 たぶん、ですが、近距離で高機動戦闘をするときには、QB(クイックブースト)とQT(クイックターン)のお世話になると思います。
 そのために注意したいのはブースターです。特に、クイック推力の高低は、機体の挙動を大きく変えてしまいます。

 では、近距離用の機体を作るときには、どんなブースターを選べばいいのか?
 残念ながら、これに決まった答えはありませんし、簡単なオススメもありません。
 何故なら、機体の扱いやすさ・強さは、機体そのものよりも、プレイヤースキルに大きく左右されるからです。プレイヤーの腕前や反応速度、感覚、そういったものが強く関わってきます。
 たとえば、SOLUHフレームに高推力のブースターを積んで、武器なども軽くした機体は、かなりのスピードを持つようになりますが、それを動かして「まだ遅い」と感じる人もいれば、「速すぎてついていけない」と感じる人もいます。初級者の場合は、中量機でも「速い」と感じるかもしれません。
 その人にとって扱いやすいスピードや挙動は、様々です。そのため、ほとんど動かなくても戦える狙撃機に比べると、「こんな感じがいい」というサンプルは非常に上げにくいのです。
 
 よって、どんなブースターをつけるかは、自分でよくプレイして決めることになります
 私がポイントにしているのは、前QBで接近するときの速度、左右QBで回避するときの速度と、QT時のコントロールしやすさです。
 特にQTは、その後にできるだけ早く相手を画面の中に捉えなければなりません。このときに、回りすぎる、回り足りないなどで、サイティングに手間取るのはNG。脚の旋回性能と合わせて、「思ったとおりに近く動ける」ような機体へと調整していきます。

 なお、ブースターの選択は、高機動機を自分好みの挙動にするため、一番悩ましく、難しいパートではないかと思っています。
 かたっぱしから組み込んで実際に動かし、どれがいいかを選ぶくらいでいいかもしれませんね。

 

サンプルでお試し

 高速・高機動機体は、プレイヤー自身の腕前や慣れ、感性に大きく左右される部分があります。そのため、「こういう機体はどう?」というサンプルは非常に提案しにくかったりします。
 そこで、皆様のアセンブルの参考にするために、こんな実験を推奨してみます。
 重量や推力に差をつけた機体を、実際に組み立てて、実際に使ってみていただきたいのです。そして、その違いが自分にとってはどう感じられるものなのか、どの組み合わせの機体がしっくり来ると感じられるか、それを確かめてみてください。

 ストーリーがどこまで進んでいるかにもよりますが、フレームはSOLUHかLATONAのパーツを使ってみましょう。JUDITHもいいですね。LAHIREは消費ENが多いので、一部ならともかく複数パーツを使うのは、この練習サンプルの場合にはあまりオススメしません。
 作った軽量フレームに、
・セットA……重量ジェネレーターに、ショットガン「SAMPAGUITA」やアサルトライフル「0A-MARVE」などの、近距離用の武器ではあるけれど重量1000前後のやや重い武器
・セットB……軽量ジェネレーターに、マシンガン「VANDA」や「01-HITMAN」などの重量500程度の軽い武器
 というオモリと、
・セットC……LAHIREシリーズなど、軽量かつQ推力の高いブースター
・セットD……「MB107-POLARIS」など、重くてQ推力が低く、低消費ENのブースター
 スピード差を明確にしたブースターを組み合わせてみます。

 A+Cは「少し重い体を高推力で飛ばす機体」。
 A+Dは「少し重い体を、マイルドなブースターで動かす機体」。
 B+Cは「軽い体を高推力のブースターでカッ飛ばす機体」。
 B+Dは「軽い体をマイルドなブースターで動かす機体」。

 なんとなくでも、「今の自分には軽量+高推力は手に負えない。軽量+低推力よりは、中量+高推力のほうが好みだな」とか、感じるのものがあれば幸いです。
 どんな操作感の機体が心地良く感じるか、コントロールしやすいかは人それぞれですし、腕前の上達によっても変化します。「今の自分」を出発点にして、高機動機体はプレイヤーととも変化していくのです。

 

必要な能力……だが、今はまだ不要かもしれない

 既に何度か書いていますが、いくら高速・高機動といっても、速ければいいというものではありません。どんなに性能の高い機体ができたとしても、自分が思ったように動かせなかったら無意味です。
 スピードのある軽量機は、動きの一つ一つが素早く大きいため、コントロールは大変忙しいですし、困難でもあります。そのため、「今の自分でも、なんとか思ったように動かせる機体」を作るのが、実は一番強かったりします。
 上で試してみた機体の中で、「軽くて高推力」が馴染む人もいれば、「重くて低推力」でもちょっと扱いかねた人もいるでしょう。
 やたらと軽量化、高速化するよりは、その時々の自分の腕に合わせて、少しずつグレードアップしていけばいいと思います。
 
 つまり、「近距離機動機体に必要な能力」は、たしかに高いほうが「機動機らしい戦い方」ができるものの、高すぎてプレイヤーの手に負えないのでは、意味がありません。
 そのあたりが、高ければ高いに越したことはない、という狙撃能力などと大きく違うところです。
 ロック速度や運動性能は高いに越したことはありませんが、ブースターの推力や脚部の旋回性能に限っては、むしろ低いほうが扱いやすいこともあるのです。

 

ロック速度について

 近距離で戦う機体には、射撃の正確さはそれほど必要ない、と先に書きました。
 とすると、ロック速度が高いほうがいいというのは、矛盾です。
 何故矛盾なのか分かりますか?

 ロック速度とは、赤ロックまでにかかる時間のことです。そして赤ロックは、動く相手のところへ少しでも「正確に」弾を届かせるために行うものだからです。
 正確さは不要と言う一方で少しでも早く赤ロックしろって、正確さは必要なのか不要なのかどっちやねん!て?

 一番大事なのは当たるかどうかです。
 たとえば、サイティング(敵を視界に捉えること)が上手い人は、自力で敵を視界の中にとどめておけます。つまり、ロック速度が多少遅かろうと、赤ロックされるまでの間きちんと敵を確保しておけるのです。なので、ロック速度が遅くても、赤ロックまで待って攻撃できます。
 また、白ロックで撃ったとしても、それで当たっているなら問題ありません。これもまたサイティングが上手い人なら、赤ロックはしていないけど敵が銃口の正面にいるからOKなのです。しかも、距離が近ければ短時間で弾が届きますから、撃った後に移動されて云々、というのはあまり起こりません。
 つまり、FCSの補正が入らずとも、当てられる、当たっているなら、それで一切問題なし! そういう場合は、ロック速度など二の次でFCSを選んでください。
 
  しかし、ここにいる初級者さんたちは、そんなサイティングができないから初級者の称号を持っています。
 だったら、まずは基本に忠実に、FCSの力を借りて少しでもヒット率を上げるべきです。

 

総括

 長くなりました。
 ですがこれで終わりではありません。
 別ページにしますが、近距離での戦闘をどうやって身につけたらいいか、練習方法みたいなものにも触れてみたいと思います。
 しかしまずは、解説はこのへんにしておきます。

 というわけで、興味のある人は、「高機動戦闘のトレーニング」へどうぞ。ちなみにこの項目は、ここからしかリンクしていません。だって、人様に堂々とそんなもの教えられるほど、自分が上手くないんだもぬ……。