実践トレーニング:ブースター:噴射時間編

 ブースターの備えているスピードは、「推力」というステータスで表現されています。
 また、QB時に消費するENも、「クイック消費EN」というステータスに表されます。
 しかし、このステータスだけを見てしまうと、実際の移動力や消費EN量は、間違ったものになってしまいます。(ひどい違いというわけではないので、慣れない内は考えなくてもいい問題です)
 今回は、その原因になる「クイック噴射時間」について実践してみましょう。

 

「推力」の厳密な意味

 「推力」とは?
 ものすごく大雑把に言ってしまうと、「機体の移動スピード」です。そう捉えても間違いではありません。
 ですが厳密には、「機体を推(オ)す力」のことです。
 イメージ的には、ACの傍に巨人が立って、ACを腕力で押して進めようとしている、その「腕力」のようなものです。
 そのため、1ページ目で確認したように、同じ力で押しても軽い機体はスイスイ進みますし、重い機体はなかなか進みません。
 なので、機体の重量によって最高速度は変化してしまいますが、それでも、「その機体の持つスピード」を決めるのは、「推力」だと言えます。

 

「推力」≠「移動能力」

 「推力」がその機体のスピードを決めているのは確かです。
 ですが、その機体が持つ「移動力」は、「推力」だけでは決まりません
 ちょっと意味が分かりづらいでしょうか。
 この問題について、今から説明してみます。

 結論から言います。
 QBの場合に限りますが、機体の「移動力」は、機体の重量・ブースターの「クイック推力」に加えて、ブースターの「クイック噴射時間」によって決定されます
 ACの後ろに巨人がいて、その巨人が腕力でACを前に押す。このイメージでいくと、「クイック噴射時間」というのは、「巨人が何秒間押し続けるか」です。
 巨人Aは、1秒間にACを5m、前に動かす腕力だとします。
 巨人Bは、1秒間にACを4m、前に動かす腕力です。
 同じ1秒ずつACを押したら、Aのほうがより遠くまで運べますね。
 でも。
 巨人Aは、一度に2秒しか押せません。
 巨人Bは、一度に3秒押すことができます。
 さて、一度の運搬で、どちらの巨人のほうが遠くまでACを運べるでしょうか?

 巨人Aは、2秒後に、10m先まで動かしています。
 巨人Bは、3秒後に、12m先まで動かしています。
 つまり、一度しか動かさない場合(一度しかQBしない場合)、実は、時間こそかかるものの「腕力」(「推力」)が低い巨人Bのほうが、遠くまでACを運んんでくれるのです。

これがスタート位置 これを実際に機体に組み込んで実験してみたのがこちらです。
 実験用の軽量機をベースに、メインブースターだけを交換し、2機作りました。
 赤は「ARGYROS/M」緑は「03-AALIYAH/M」を組み込んでいます。その上で、重量差を埋めるため他のパーツをいくつか交換し、重量差は3まで狭めています。
 何故この二つのブースターを使うかといえば、逆転現象が発生しているためです。
 「ARGYROS/M」はクイック推力52916、「03-AALIYAH/M」はクイック推力49474。
 「ARGYROS/M」はクイック噴射時間8、「03-AALIYAH/M」はクイック噴射時間9。
 つまり、速度を生み出す推力自体はARGYROSのほうが高いのですが、噴射時間は1だけAALIYAHのほうが長いわけです。

緑のほうが前に 一度だけQBした結果が、これです。
 緑色のAALIYAHメインブースター搭載機のほうが前に出ました。
 差はほんの少しです。
 でも、推力が高いはずのブースターのほうが一度のQBで移動する距離は短かった、ということの証明にはなっています。

 今回はメインブースターで実験しましたが、サイドブースターには、「クイック推力自体は非常に低いのに、噴射時間が非常に長いため、移動力はとても高い」というブースターがあります。
 「AB-HOLOFERNES」、このブースターは、移動スピード自体は下から数えたほうが早いくらいなのに、QBの持続性が高いため、移動力で比べるとベスト3に入るという変り種です。

 

ほしいのは「推力」か「移動力」か

 「クイック推力」が高いからといって、たくさん移動するわけではない、ということは、分かっていただけたでしょうか。
 そこで、アセンブルの話に移ります。
 機体を組み立てるとき、ほしいのは「推力」なのか「移動力」なのか、これは大事な問題です。
 移動する距離よりも、移動するときのスピードが大事なのか
 移動するスピードよりも、移動する距離が問題なのか

 たとえば、もともとかなり重い機体って、推力の高いブースターを入れても、あまり動かせません。重いので、腕力があっても一定時間に動かせる距離ってのはかなり制限されてしまいます。
 しかし、もし長時間押し続ける持続力があったら、けっこうまとまった距離を移動できることになります。
 そのため、移動するスピードは速くないけど、重い機体でもけっこうな距離動かしてくれる、噴射時間の長いブースターを選ぶ、といった判断も出てきます。
 また、近距離で軽量機を使って戦っていると、移動距離も問題になりますが(ええ、とっても問題ですよ)、移動するスピードそのものを足りない、あるいは速すぎると感じることもあります。
 これは、初心者さんが感じ取れるものなのかどうかは分かりませんが、この私でも、「んー、もうちょっとガッ!と動きたいなぁ」と思うことはあるので、多少慣れてくれば、分かるようになるものではないかと思っています。

 

消費ENと噴射時間

 ここまではスピードの問題、推力と噴射時間について語ってきました。
 これとまったく同じことが消費ENにも言えることは忘れてはいけません。

 前述のサイドブースター「AB-HOLOFERNES」は、ステータスで「クイック消費EN」を見ると、実は二番目に省エネなブースターです。
 しかし、この「クイック消費EN」というステータスは、あくまでも「一定時間に消費するEN」であって、「一度のQBで消費するEN」ではないのです。
 そのため、噴射時間の非常に長い「AB-HOLOFERNES」は、実際の消費ENではワースト3に入ってしまいます。
 この点はよく気をつけないと、クイック消費ENの少ないブースターを使っているはずなのに、なんでだかENが減りやすい、といったことになってしまいます。

 というところで、ちょっと余談です。
 「AB-HOLOFERNES」は、重い機体でも大きく移動させることができるため、重量機にある程度の横移動力を持たせたいときにはホントに重宝します。
 ですが、消費ENの大きな機体にはあまり向きません。
 なので、たとえば、タンク脚ALBIREOとTELLUSフレームで作った、重いけれど省エネな機体なんかは、安心して「AB-HOLOFERNES」を使えます。
 が、消費ENの高いARGYROSフレームで作った重量機に組み込んだ場合は、移動はするけれどEN管理が難しい機体になってしまいます。
 実際に動かし、戦ってみて、ENが足りるかどうか。それを確かめるのが一番ですが、仮組みの段階でも、「これはちょっとEN的にキツくなるかな?」とか予想がつくと、試運転のポイントもはっきりするのではないでしょうか。

 

噴射時間について、まとめなど

 「クイック推力」で示されるスピードの目安(実際に出るスピードは重量によって違いますからね)と、機体の移動能力は別であること、それを左右するのが「クイック噴射時間」であること、お分かりいただけたでしょうか。
 また、その際の消費ENも、ステータスに出てくる数値どおりではなくなっしまうこと、しっかり覚えておいてください。

 それから、同じ時間だけ移動するなら、推力の高いほうが大きく移動する、という点は勘違いしないでください。
 ……ややこしい?
 まとめると、「推力」は、おおよそスピードを示していると考えて大丈夫です。ただし、機体の重量によってスピードは変化するため、「推力は同じだけど、軽い機体のほうが速く、重い機体は遅い」ことになります。
 そして移動距離は、「推力×噴射時間」によって決定されます。

 しかし、推力がどうの、移動距離がどうのというのは、中〜遠距離で、中量機体くらいを使っていると、実はあまり実感できません。
 QBを多用しがちな近距離戦で思うとおりに機体を動かしたいとなってくると、「行き過ぎる」「もっと速くしたい」といった願望も出てきて、「んー……なんかちょっと遅いなぁ」とか感じるようになったりします。
 なので、近距離戦をしない、あるいはできないプレイヤーさんは、あまりこまかく考えることはないのかもしれません。
 でも、重量機体を使っている人や、中量機体でも少しスピードに慣れてきた人は、ちょっと気にして、いろいろなブースター使って、動きの違いが感じられるかどうか実験してみると面白いですよ。

 さて。
 「クイック推力」と、今回のお題「クイック噴射時間」は、実はQBでの前進や後退、横移動だけのものではありません。
 もし貴方が、近距離戦ができるようになりたい、と思っているなら、機体を少しでも制御して思ったとおりに動かすため、もう一つ大事な要素があります。
 それが「クイックターンの旋回角度」です。
 これにもクイック推力と噴射時間が大きく関わってきます。
 というわけで、次の項目はQTについてです。