性格設定の話:サイバトロン

 

 キャラクターの紹介SSとして「TRANS-TRANSFORMER」がありますが、それを読む前に予習して、気に入らないなら読まないようにしよう、というかたもおられるかと思います。
 そこで2009.8.末、現在だいたい決まっているキャラクター設定やイメージを、SSの舞台別にざっと書いておきます。
 キャラクター設定に興味のある人も、どうぞご覧ください。

 なお、「IF世界=TFたちが実在して映画出演していたら?世界」、「擬人化世界=イメージ+擬人化による現代版パロディ」、「RUIN世界=ディセプ更に凶悪化世界」です。
 また、「原作=実写映画という原作」で、アニメやトイではありません。

オプティマス

【IF世界】
 あまり原作と変わらない、誠実で真面目な性格ですが、いささか天然気味です。あと、原作よりも穏当になってます。なにせ原作では「ガラクタ」だの「顔を剥いでやる」とけっこう暴力的な発言をしておられますのでね……。
 責任感が強くて、自分より下の者―――彼は「プライム」なのですべての者の上に立つため、他のすべての者ということになるのですが、彼等に重荷を背負わせたくないとの思いから、やたらと自己犠牲的です。周りの者からすれば、優秀で信頼のできる指揮官のほうこそ替えはきかないのだから、一兵卒が犠牲になっても指揮官は残ってくれたほうがいいのに、とにかくすぐに「自分が犠牲になって」な発想になるのは困ったもんだと思われてます。
 あと、自分は「プライム」としては不出来だと常に悩んでいます。特にメガトロンに対してその思いが強く、自分が不出来なために彼がなにかと苦労し、損な役回りを引き受け、力を費やしてくれているという気持ちがあります。
 彼の優れたところは、それで自分を責めてウジウジしないところ。だから少しでも努力しよう、それでも自分にできることを精一杯やって少しでもより良い未来を築こうと、前向きに進めるところ。悲観的で後ろ向きな気持ちや態度では、みんなも不安になるということをよく分かっています。
 たぶん、自分は至らないところが多い「プライム」で、だからみんなにも大きな負担をかけてしまう、という申し訳なさゆえに、なにかまずいことが起こったときにすぐ、自分が責任をとる=犠牲になるべきだ、と考えてしまうんだと思われます。
 それから、彼のこういう、極度に自己責任で物事を考えつつ前向きに生きるところが、かえって悪影響になってしまっている側面もあります。つまり、彼の近辺にいると、否応なくそういう考え方で物事を進めなくてはならず、そうでなくても許されるとしても失望されたり、オプティマスの負荷を大きくしていると、彼に心酔する者から責められることも。つまり、なにがなんでも有能じゃないとならないような雰囲気になってしまうのです。ある程度自我が確立して頑固になってから仕えたアイアンハイドやラチェット、プラス要素へのアンテナが極端に強いので繊細だけど案外図太いバンブルビーは幸い、オプティマスのマイナス影響は受けていませんが、マイナス要素に敏感で繊細はジャズは、いささか犠牲になった感が……。

 彼と相性がいいのはメガトロンとかバンブルビーあたり。温和で律儀なブラックアウトとの相性も悪くはありませんが、立派すぎるから傍にいづらいと思われてそう。
 権威とかが癪に障るボーンクラッシャーやフレンジーあたりとは相性は悪いかも。

【他の世界】
 今のところ擬人化世界にもRUIN世界にも出てきていませんが、彼はそれほど個性に変化はありません。どこでも真面目で誠実です。
 擬人化世界では政治家の家系に生まれてるし資産もある、名実ともに名家と言える家の跡取りだけど、もっと人の身近にいたいとの思いから教師をやってる、ようなイメージです。無難にいい人すぎてSS中には出しにくいという現実。
 でもたぶん、RUIN世界では原作の強硬で破壊的な要素も持っていて、心が痛まないわけではないけれどディセプティコンたちは生かしておけば世の中の害悪だ、と諦め、決意していると思われます。

ジャズ

【IF世界】
 とにかく口数が多くてやかましい上に落ち着きがない人。思考能力の高さ=思考スピードの速さ、なタイプです。処理速度の速さゆえに、とにかくせっかちでじっとしていられず、熟慮するタイプの人がスローに見えてしまい、イライラ。
 好奇心旺盛でフレンドリーですが、実はあまり他人に共感したり同情したりせず、クールでドライ、情より理なタイプ。いろんなものに「自分を楽しませる要素」として興味を覚えて積極的に関わりますが、あくまでも、その対象も、その対象に関わっている自分も、自分でコントロールできないとならないのです。考えようによっては、かなり自己中心的ですね。
 キレイゴトなしに、彼は基本、上から目線で物事を見ます。「興味の対象」という感じ。ただしそこに悪意はなくて、興味を持って接し研究した結果、こいつはすごいなと思えば、やっと心を開いて対等にもなるし、尊敬もします。というか、頭がいいので(思考速度が速いので)、たいていの相手はバカに見えてしまうんだと思います。それで、なにかはっきりと「こいつはすごい」とか思える部分が見えるまでは、どうしても見下しがちなのかも。
 そういうところはしばらく付き合うと、賢い相手には薄々見えてきてしまうので、遊び相手はいても本当の友達は少ない気がします。
 サイバトロンのメンバーについては、それぞれに「こいつにはこの点では絶対に敵わない」と思って打ち解けていますが、あまり付き合いのないディセプティコンに対しては、陽気に接してはいても実はかなり他人行儀。唯一スタースクリームとは、参謀という同じ立場ゆえに話すことも多く、いいライバル関係だと周りには思われています。しかし、スタスクが探検家として身に付けた経験や知識、ディセプティコンのリーダーとして、メガトロンの後を受け持って旅団を率いてきた苦労と重責が分かるため、―――立場が似ているだけに、そして自分にはそういった実績の幅広さがないために、ちょっと悔しくてジェラシーで、負けたくないというものすごい対抗意識も持っています。いいライバル、というにはちょっと余裕がない感じ。
 仕事においては妥協せず、無理をしてでも完璧を求めます。有能であればそこに必ず価値が生まれるから。自分が無価値になること、少しでも役立たずと思われることを極端に嫌い、軽口や飄々とした態度も、傷ついていたり動揺していたりするのを隠すポーズであることもしばしば。冷静さや頭の良さが自分の価値だと思ってるので、それを発揮できないところを見せて軽んじられたりするのが怖いんでしょうね、きっと。
 で、自分を小さく見られたくなくて上からの態度になりがちなこととか、能力の劣るものを軽んじる傾向とかが、オプティマスの傍で育ったせいで受けた悪影響なわけです。でもそのことに気付いているのはサイバトロンメンバーにはいないような……。なにせ「プライム」は絶対的な存在ですし。その付近にいたら、そういう教育、いわば洗脳されてしまいます。なので、ディセプティコン側でもそういった権威に対する敬意を持たないバリケードが、実のところ一番、ジャズがこうむっている害について冷静に気付いているかもしれません。だからといって助けもしませんが。

 意外なところで、相性がいいのがバリケード。仲良くすることはなくても、自分の真実を見抜かれているのがなんとなく分かるので、カッコつけても仕方ないと、逆に開き直れるかもしれません。バンブルビーとは、相性がいいというより、ジャズが必要としているって感じ。あと、もっと素直になれれば、スタスクともいい兄弟分になれそうですが、なかなか相手を認めることはできないでしょうねぇ。
 ゆったりした思考のブラックアウトやブロウルには常にイライラしてそうです。逆に、存在が大きすぎるオプティマス、メガトロンも実は苦手かも。

【他の世界】
 RUIN世界には出てくる予定がありません。それでもイメージとしてあるのは、IF世界の彼のような脆さや不安定さのない、実にクールな参謀という感じ。ディセプティコンという絶対悪があるから、IF世界とは設定が異なってくるんでしょうね。絶対悪に立ち向かうかぎり自分は善なので、相手を叩きつぶしサイバトロンの仲間を減らさないことだけを考えればよくなりますから。そしてその成果さえ出ていれば、なにを不安に思うこともありません。
 擬人化世界では、IF世界よりも自己中心的で警戒心が強い感じに。陽気にふるまっているけれど実はものすごい人見知りで、なかなか相手に心を開きません。積極的に関わっていくのも、そうすれば自分のペースになるから。自分のペースで物事を進め、相手の反応すら言葉や態度である程度コントロールし、とにかく、誰かに自分のなにかを予想外に見抜かれたり、知られたりするのが嫌い、というか怖い?
 外見も知識も、他人を制して自分のコントロール下に置くための武器であり防具です。攻撃ではなく保身ですけど。それだけ、素の自分に自信がないような感じ。

バンブルビー

【IF世界】
 一番の末っ子みたいな位置付けでみんなに可愛がられています。好奇心旺盛でちょっと考えなしで、年の近いジャズと一緒に悪戯してたりも。でもジャズと違うのは、バンブルビーが興味を持ったときには、その場ですぐに「好きになれるかな」という感情が出てくること。面白いなぁ、可愛いなぁ、変なヤツだなぁ、なんだかいいなぁ、と。ちゃんと愛されて育ち、そのことがストレートに性格に出た感じです。
 しゃべることができた時にはまだ少し我が儘で自己主張を優先したりもしたのですが、しゃべるのに苦労するようになって聞き役に回りがちになったら、人のいろんな思いが言葉の裏側に見えてきたのだと思います。今では、自分はこうだとアピールすることよりも圧倒的に、「君はどう思ってるの?」と相手を知り、少しでも理解し、共感することのほうが大切になってます。
 物事をプラスにとらえるのが得意で、クヨクヨしません。トラブルや困難に直面しても、素で「これもいいチャンスだ」と考えて黙々と取り組んだり。
 サイバトロンの中では一番年下で実績の少ないので、少しでもみんなに追い付きたいと思ってます。努力家でひたむき。人の気持ちにはものすごく誠実で、寛容。
 アニメや原作の設定などとあまり違わないタイプですね。
 ただまあ……良かれと思ってやったことが上手く機能してないことも(笑)。リベンジで、サムを助けるために家まで破壊してしまうように、「これでいいと思ったのに、ダメなの?」なこともよくあるわけです。
 それはたぶん、相手を理解しよう、共感しようとしているものの、自分とはまったく異なる感性や価値観を持ち、同じようには振る舞えないし考えられない人のほうが多い、ということがよく分かってないからでしょう。何万年生きてるんだか知りませんが、子供の部分がどうしても抜けきらないスパークの持ち主で、これはもっともっと長く生きて、もっとたくさんの、価値観を揺るがすような大きな出来事を体験しないと変わりません。彼等は長命で頑丈なため、変化もまた、なかなか起こりにくいのです。
 なんにせよ、バンブルビー好意や思いやりから一所懸命になってくれてることは分かるので、だいたいの人は「まったくもう」と思いながらも可愛がってます。
 しかしまあ、正直ウザい、と思ってる人も間違いなくいますね。いい子ちゃん過ぎてウソ臭いとか、無邪気って言うけど無神経なだけだろとか。ボーンクラッシャーがそういうタイプかも。

 オプティマスやジャズとは相性が良さそうです。お父さん代わりとお兄ちゃん代わりな感じですし。引っ張るタイプとは好相性なので、あまり接点はないものの、スタースクリームともうまくいきそうです。
 一緒にいるとどうしても噛みあわないのは、同じ聞き役のブラックアウトやかなり思考能力の低いブロウル。ブラックアウトとは、お互いに無駄に気を使うことになりそうな感じ。あと、ボーンクラッシャーは合いません。バンブルビー自身はなんでそんなに邪険にされるのか分かってないと思いますが。

【他の世界】
 RUIN世界には出てきません。出てきたとしても、相手がディセプティコンでも、心の片隅には痛みを覚えているでしょう。1作目のオプティマスの台詞じゃありませんが「You left me no choice」、「(他の道を残してくれないから)こうするしかないんじゃないか」といった感じ。仲間を殺されてもいますし、自分も傷つけられているので憎しみや嫌悪感は覚えているものの、できればそんなもの感じずに君らとも仲良くやれたら良かったのに、という感じでしょうか。
 擬人化世界では、ジャズの弟分で聞き役で癒し役。でもあまりに素直で、いつも「うんうん」と聞いてくれることがかえってジャズに自責させることもあったり。かなり偏屈な擬人化ジャズが唯一、なくしたくない、なくせない、なくしたら俺一人ぼっちじゃん、と無意識に感じている大事な友人だったりします。
 バンブルビーにしてみると、ジャズの饒舌と我が儘、怒涛の意見には困ることもあるけれど、知識などについてはすごいなぁと素直に感嘆していますし、その裏にひそむ焦りや不安についても漠然とですが感じ取っていて、「なんかよく分からないけど、俺はここにいるよ」みたいな感じで。ノベライズにあったように、誰かがつらいときや困難なとき、見返りを求めずにそっと傍にいてくれるのです。
 これは相手を限ったことではなく、誰に対しても自分から好きになり、そういう意味で興味を持ち、相手をそのまま受け入れ、いい面をクローズアップして見ることができます。
 というものすごーく、ありえないほどピュアでいい子ですが、気がつかない内に自分の許容量、包容力を越えてしまうこともあります。
 マイナスの感情、「ムカつく」とか「ウザい」とか、そういうものがゼロではないのです。普段はそれを、「いや、でもこういうところすごくいい人だし、そういうところがあるのも仕方ないよね」と、無理もせず自然に後回しにしてるのですが、そのツケがドッとくると、自分では認められない、認めたくない大嫌いな負の感情が、正体不明のまま心の中で大反乱を起こしてパニック状態になったり、鬱になって引きこもってしまったりも……。「ピュアないい子」も、実は精神的にアンバランスで異常な状態だってことかもしれません。

アイアンハイド

【IF世界】
 義理堅い、というのが一番のキーワードです。
 彼はもともとはディセプティコン、すなわち防衛軍の中でも上層に位置する将校クラスとして生まれているため、政治・統制の中枢であるサイバトロンには馴染めないところもあったのです。ちなみにアイアンハイドは、オプティマスの護衛として、メガトロンが送り出したことになってます。
 で、予定調和とかキレイゴトが優先され支配する政治組織の中では、明らかに浮いた存在でした。アイアンハイド自身にしても違和感を覚えて馴染めないし、回りも敬遠してくる。そういう中で、なにかと気遣ってくれたり、回りとの架け橋になってくれたりした「護衛対象でもある若いプライム=オプティマス」と「年の近い評議員=ラチェット」、後から生まれてきて、そういうささいなことには構わず接してくれたジャズやバンブルビー、アーシーなども含みますが(アニメではアーシーの一員であるクロミアさんと恋仲っぽいしね!)、そういった仲間たちには恩を感じているのです。
 心情的にも守りたいと思っていますし、彼等を守ることが俺の義務だとも思っています。
そしてそのために、セイバートロンでの戦争中は「敵」を多数殺してきています。防衛のために多少は戦っても積極的に敵の排除には動かない存在であるサイバトロンの中で唯一、そのときには軍に戻って戦い多くの命を殺していることへの罪悪感もあるし、俺はみんなとは違う、といった孤独感も、なきにしも。
 あと、自分の発想がどうしても荒っぽいことは自覚していて、それならいっそ、他の者があえて言わない選択肢を提示し、それを否定することで他の選択肢をより磨きあげる、そういう役にも立つのだから、無理にいい人ぶるのはやめよう、とも―――思っているというより、ラチェットやメガトロンあたりから、そういう役立ち方もある、と諭されていたりして。ラチェットは一緒にいることが多いので「気にせず言え、フォローは私がするから、そのことで非難されたり不和が起こるかもしれないなんて気にしなくていい」と。なので、ラチェットとは一番仲がいいし、信頼もしてる、チームメンバーという以前に大事な友人。時に愚痴って甘えてみたり、心配になって気遣ったり。いい関係です。
 短気でけっこう子供っぽいところと、年下の若い連中をたしなめたりする大人なところ、それから保守的で腰の重いオッサンくささ(笑)がミックスされた、不思議なキャラクターです。
 アイアンハイドはプラスもマイナスも持って、それに悩んだこともあり、今はそれを自分で認め、なんとか受け入れ、時に振り回されそうになりながらも友人の力を借りてコントロールし、時に失敗もする、なにかに偏らないものすごくバランスのとれた存在かもしれません。それだけなにかの個性に特化することなく地味なのが問題かも(酷

 ラチェット、オプティマスとは特に苦労せずうまくやってます。
 でも偉大すぎるメガトロンとか、理屈っぽくて思考の速いジャズ、スタースクリームなんかは苦手。ジャズは自分よりかなり年下なのでまだしも、スタスクとは社交辞令的な会話くらいしかしなさそう。

【他の世界】
 RUIN世界でも出てくる数少ないサイバトロンメンバーです。自分がかつてディセプティコンにいたからこそ、道を踏み外した連中を許せず、自分の手で殲滅したいとさえ思ってます。事情があろうと思うところがあろうと知ったこっちゃない。出した犠牲をそれで許せるわけがない。ポルト一本残さず消し飛ばしてやりたい。そんな感じに。
 擬人化世界ではまだ出てきてませんが、感覚的には「元番長」(笑)。荒っぽくて喧嘩っ早いけれど愛嬌もあって、教師にしてみると、平気で人を傷つけるような悪い奴ではなくて、むしろ仲間や同校の生徒を守ろうとして喧嘩してたりするので、いい奴だけど困り者。そんな扱いだったと思われます。
 今は手の早さもなくなって落ち着きましたが、兄貴分として慕われているのは変わらず。で、幼馴染のラチェットには昔からずっと頭が上がらないイメージもあります(笑

ラチェット

【IF世界】
 一番「大人」な人。そして一番、心の奥底に「死の匂い」という暗さを抱えた人。
 フォールンの襲撃や、その後に起こった幾多の対外戦争中、命を救うために存在している自分の前で、助けられずに死んでいった何人もの仲間を見ているため、どうしても楽観的になれないのです。彼は「生まれ」がそういう、特定の役割に限定されたタイプなのでなおのこと、自分の存在意義を果たせなかったことが重くのしかかってきます。
 だからこそ誰よりも平和と安全を願い、努力を惜しまず、危険を恐れずに切り抜けるすべを学び身につけようとしてきました。クールというよりもストイックです。
 ただ、それはあくまでも義務感、責任感であって、他人に対する愛情深さとは違います。かなり長く生きているので、後天的にそういった思いやりも獲得はしていますが、馴染みの薄い相手にすぐさま同情したりできるような優しい精神構造はしていません。でも、逆に言えばそういう、「感情に振り回されず義務に徹する」ことは、相手への好悪感で態度や対応が変わらないという安心感でもあります。
 命を軽んじる言動が大嫌いで、そういう冗談は一切通じませんし、軽口も許しません。だから、あえて軽く扱って不安を吹き飛ばそうとしたりするジャズの気持ちは分かっても、発言はどうしても許せない。任務遂行のために自分の身を犠牲にしてもいいと思っているバンブルビーを許せない。もちろん、オプティマスのそういった言動も許容できません。「それが必要な犠牲なら、じゃない、犠牲を出さない方法を本当に考え尽くしたのか!」と。
 そういった言葉が100%の愛情ではないことはみんな、なんとなく分かってます。でもラチェットの生まれからくるハードな責任感や存在意義への葛藤も理解してるので、本気で怒らせる前にちゃんと謝ったり、引いたり、隠したり。
 命の重み……本人にとってより、他人にとっての重みを一番分かってるのは、戦争になれば「敵」を殺しに行くアイアンハイド。サイバトロンの中では誰よりも血にまみれた手をしていることの苦しみ、つまりは奪ったという形で他人の命が自分に寄越す重さを嫌になるほど知っているがゆえに、ラチェットと一番仲がいいのは、彼です。戦争の中で、自分の横で仲間が死ぬところも数多く味わってますしね……。
 ご意見番なので、みんなに尊敬もされていますし一目置かれてもいますが、「うるさい」と思われているのも確かです。でもそれは必要な役回り。がんばれ先生!

 ラチェットを主軸にして考えると、相性のいい相手も悪い相手というのもいないように思います。
 誰とでも対等に、平等に接し、接されるだけの固有スキルと経験、教養、理性、信念、そういったものを持ち合わせているような。
 情よりもはるかに重い義務感や使命感を持って生きていて、しかもそれが人の命を救うというものなので、少し特殊な立ち位置なのかもしれません。ラチェットの前では誰もが等しく、一個の命です。

【他の世界】
 RUIN世界でも出てきます。そこでの彼はIFとは逆に、たとえディセプティコンだろうと命は命で、少しでも更生の可能性があるなら殺すのはやめてほしいし、傷ついている者は救わねばならない者であって、それは敵だろうと変わりません。それもまた、純粋な愛情よりは、救えなかった命に対する罪悪感から来るものですが、IFの彼よりも情が深く優しくなってます。
 擬人化世界では、もちろんお医者さん。実家が医者で、親に強制されたわけでは決してないのだけど、アイアンハイドとか、とにかくケガしてる連中の面倒を見るのに応急手当とか覚えていったら、もう医者になるしかなかった、みたいな。
 容赦なく頭引っぱたいて叱ります。優しいお医者さんじゃないですね。かなり怖い。普段でもけっこう怖い人。というか、周りにいる連中がみんなして怪我ばっかりして来るので、いつも怒っていなきゃいけないだけかも。
 なので、慎重で無茶をしないブラックアウトとか、素直に言いつけを守ろうとするプロウル、ちょっと短絡的ではあるものの同じく素直なバンブルビーのような相手にはものすごく優しいんです。病気や怪我をして、心配になって病院に来る普通の患者さんにも、厳しくも優しい、信頼できる最高のお医者さんなのに、相手がアイアンハイドとかだと途端にものすごく怖いという。
 予防医学が専門で、外科より内科のイメージです。