MORGAN GREER TAROT

パッケージデザイン【デッキ概要】

ウェイト版準拠   ★★★☆☆
8、11 力、正義
汎用性 ★★★★☆
サイズ 12cm x 7.1cm
紙質

良い……が

 絵柄やデザインが大きく異なっているカードも目立つものの、ウェイト版準拠度は並くらいです。人物がアップになったものが多く、背景はけっこう省略されています。しかし、構図などもウェイト版に準じたカードも多数ありますし、表現しているものはかなり忠実で、準拠度としては実際のところ、3〜4くらいと言ってもいいかもしれません。
 汎用性は高いかと思います。カードは枠なしで全体が絵柄になっており、色合いもかなり鮮やかで個性的。この絵柄が気に食わない人にはどうしようもありませんが、カードの意味の明暗が色合いにもしっかり表れており、伝えたいことをはっきりと表現しています。初心者でも使いやすそうな感じがします。
 サイズは普通。紙質は、コーティングがしっかりしていてかなり良いのですが、湿度でかなり反ります。厚みもそれなりにあるため、78枚フルセットで占う場合には、ちょっと持て余すかもしれません。カードの縦横のサイズは標準的なのに、絵が大きいせいもあるのか、かなり大きく感じます。


大アルカナ・裏面 小アルカナ

【カード紹介】

 裏面は、一見上下対称のようですが、似たようなマークがちりばめられているからそう見えるだけで、実際には上下があります。
 で、各カードはこのとおり。他のカードと比較してもらえば分かりますが、絵柄を縁取る「枠」がなく、カードの端まで描かれています。それがこの鮮やかな色彩で、人物も大きく描かれているとあって、インパクトは倍増している感じ。
 魔術師のカードはスタンダードで、薔薇と百合も描かれていますし、ポーズもウェイト版に倣っています。しかし個人的には、胸元に切れ込んだVラインが非常に気になります(笑)。なにこのラテン系。
 死神はウェイト版ともマルセイユ版とも大きく異なります。背景の太陽も、朝日というより日没、黄昏を感じさせます。はっきりと大きく描かれた白い薔薇が、私には清らかな魂をイメージさせるカードです。
 太陽のカードはイメージ的には似たようなところでしょうか。太陽、レンガ造りの塀、ヒマワリ、子供、といった要素は同じですが、子供は二人でアップになり、太陽から迸る放射状の光線は、顔とともに省略されています。しかし太陽の大きさからか、熱さみたいなものは感じますね。
 このデッキは、エースのカードのイメージは他のデッキよりも分かりやすくなっているように思います。下にソードのカードも紹介しましたのでご覧ください。このワンドのカードも、城や丘などはすべて描かれていませんが、手にした棒から青々と茂る葉の印象が、明らかに他のデッキ、元祖ウェイト版よりも明確です。
 とはいえ、カップの10は腕しか描かれておらず、恋人同士の手にも見えてしまうのは残念なところです。ウェイト版をきちんと学習していれば、夫婦の手だと思って見ることができるのですが……。いっそのこと、ウェイト版を参照することをやめて、イメージだけで見てもいいかもしれませんね。
 ソードのナイトはかなりのアップです。ナイトのカードは、背景がそれぞれ印象的なものなので分かりづらくはありませんが、動きに乏しいのはネックな気もします。ウェイト版を初めとするほとんどのデッキで、ナイトのカードは「馬と騎士の姿勢」で、そのカードのイメージを強く表現していますし、ナイトは青年期のカードなので、「それぞれのスートの要素が、良いも悪いも極端に発揮される」といった解釈もあります。その場合、落ち着いたおじさんのアップだと、そういう極端さはちょっと感じにくくなってしまいます。
 ペンタクルの4はだいたいウェイト版と同じですが、人物の顔が淡々として穏やかなので、あまり強烈な印象はないですね。


イメージしやすいカードも多い【他のカード】

 運命の輪、カップの5、ソードのエース、ペンタクルの9です。
 運命の輪は秀逸だなと思いました。車輪を回す手が、エースのカードと同じく雲の中から出てます。この「雲の中から出る手」は、神の手というか、人間がどうしようもない領域の象徴です。それが運命の車輪を回し、上にいる者は歓喜に満ちているけれど、落ちていく者もあります。正位置で出れば上の二人の人物に焦点が当てられ、逆位置なら落ちていく人物、と考えると分かりやすいカードです。こういう説明がなくても、カードをよくよく見れば、そういった意味なんじゃないかと思い当たるのではないでしょうか。
 カップの5は失望や喪失のカード。パッと見でそれが分かります。で、後ろに二つ立っているカップが「それでも残っているもの、だけど当人は気づいていないか、軽視しているもの」といった意味を持ちます。
 エースのカードは動きがなく、日常的なシーンからはかけ離れているので、「分かりやすい」カードではないですね。このデッキの場合、デザインとしてはウェイト版に忠実ですが、色鮮やかに描かれている分、少しはイメージしやすいのではないでしょうか。
 ペンタクルの9は裕福な女性を描いたカードが一般的。ただ、私にとっては意味を把握しづらいカードです。このカードから受ける印象だと、ゴージャスでエキゾチック。裕福で、美的感覚にも優れ、満たされている、といった感じです。


【烏のザレゴト】 ★★★☆☆

 30年くらい前に発売され、今も愛好者が多いという、その筋では有名なデッキです。
 かなり独特のビジュアルですが、デザインとか絵柄自体は、それほど突拍子もないものはなく、スタンダード。色彩が鮮やかですし、慣れない人にも分かりやすいカードではないでしょうか。
 ウェイト版のように、あれこれと象徴の小物が配置されていても、その意味はよく分からないという普通の人にとれば、一番大きな意味を明確に、それに焦点を当ててはっきりと描き出したカードと言えます。
 ただ、こういう絵柄が好きかどうかで、好みの話は大きく変わりそうですね。
 私は、最初はあまり好きではないと思ったのですが、何度も見ている内にだんだんと気に入ってきました。実際に占いに使うときには、ウェイト版に設定された意味に縛られず、純粋に自分のイメージではどうかを問いかけて使っています。
 好みは間違いなくあるものの、こんな具合に、ウェイト版の持っているカードの意味をより鮮明に伝えてくるカードも多く、愛好者が多いということには本当に納得がいきます。
 好き嫌いは置いておいて、使いやすさはかなり高いかもしれません。絵が気に入るかどうか次第ですが、初心者がどのデッキを選べばいいか迷っているなら、最初のデッキとしてオススメできます。