Family

 我ながら、似合わないことをしていると思う。
 私の見かけはどう見てもヒューキャストであり、それ以外のものには見えない。家庭で働くメイドやサーバントとは、体格が決定的に違う。彼等は家の中で立ち働くのに不自由ないよう、マンと大差ないサイズに作られているが、私は、背丈だけでもゆうに2メートルを越えている。
 それに見合う以上のバイオチューブ(人造の擬似筋肉の一種だ)で強化された体は、幅もある。当たり前のドアなど、まっすぐにはくぐれないほどだ。
 そんな、どう見ても「戦闘アンドロイド」である私と、学校、小さな少女。
 私は先月の頭に養女にしたラルムを、今日、学校へ入れに行く。

 一人で行かせるにはまだ小さいし、学園長への挨拶くらいはしておくべきかと思うから、付き添ったのだが、私はいかにも場違いだった。
 なにせ、学校というところには、アンドロイドはほとんど存在しない。いたとしても、用務員として力仕事を担当している者がせいぜいだ。
 アンドロイドは普通、成人程度の人格を持って生まれてくるから、まずもって生徒の中には存在しない。そして、あまり複雑で観念的な思考はできないから、教師の中にもいない。さらに言えば、生徒の親も当然マンばかりだから、父兄の中にもいないのである。
 私のようなアンドロイド、それもヒューキャストが学校の敷地内に現れるのなど、前代未聞の珍事だろう。

 私が放課後を選んで訪問したのは、できるだけ人に見られないためだった。
 恥ずかしいだのということはない。ただ、騒ぎになるのは避けたかった。
 ハンターズというものは、一面では難事を片付ける英雄的な存在であり、子供たちの憧れだが、反面、犯罪者と大差ないところもある。中でも、戦闘を必須とする仕事を請け負う者の行っていることは、殺戮だ。相手がクリーチャーであり、人類の「敵」であればこそ「正義」と呼ばれるが、剣の向く先は、時に同じ人間になることもある。
 賢明な大人たちは、そういった両面性を充分に理解し、善悪の判断もままならない子供を、迂闊にハンターズに近づけようとはしない。そのハンターズが非常な善人であったとしても、子を持つ親であれば、そんな危険な連中と仕事に憧れられてはたまらない、という心理が働く。我が子が、危険で人から後ろ指をさされかねない仕事につくことを、喜ぶ親はいるまい。
 実際のところハンターズなど、苦労と危険に比べれば、その報酬は実に小さなものだ。「憧れ」てなるようなものではない。

 そういったことも考慮して、私はあらかじめ学園長に連絡し、子供の帰宅したあとの学校へ、ラルムを連れて行った。
 学園長のクーゲル氏は、ラルムの入学については滞りなく手続きしてくれたが、私が「親」をつとめることについては、今もすっきりと納得はいかないようだった。
 無理もない、というより、それが当然だろう。
 いかに現在のアンドロイドが「自我」を持ち、自らの意思と良心に従って行動しているとは言え、その思考・情動は、あくまでもプログラムによって生じているものだ。無論、私は彼等(私も含めてだが)の「心」がプログラムにしか存在しないのではないことを知っている。たとえて言うならば、AIというものは、あくまでも基本機能を備えた赤ん坊の脳だ。思考内容や知識こそあらかじめ詰め込まれているが、それを発展させていくのは、使うことによってである。
 マンの脳とアンドロイドのAIは、体の中で担う役割こそ同じだが、マンの脳は生物の長い進化の果て、何億年という時間の果てに作られたものか、あるいは「神」という完全極まる存在によって生み出されたものとされている。それに比べれば、私たちのAIなど、百年単位の歴史しか持っていない上に、作り出したのは不完全なマンなのだ。
 マンの脳と同じレベルで成長することなど望めない、と言っても過言ではない。
 そんな不完全な脳と、その脳に深く関わる心とで、充分な養育ができると思うほうがどうかしている。
 それが常識だ。
 そしておそらく、私は他にはないと思われる、例外。

 だがそのようなことを説明する気はない。
 私が親として不足ならば、この学園において、その分もラルムをしっかりと育ててもらわなければならない。
 幸い、彼にはその心意気がある。そうでなければ、私がわざわざ近場の学校を無視して、ここを選んだ意味もないというものである。
 そう。
 私はあえてここを選んだ。通学にエアバスを乗り換える必要さえある、この離れた学園を。
 選択基準はシンプルだ。それぞれの教育機関の長に連絡し、自分がヒューキャストであり、マンの女の子を養子にしていることを告げ、その子を引き受けてもらいたい、と頼む。その時の反応で、私は決めた。
 私がふざけていると決めてかかり怒り出した者、呆れかえってぞんざいな対応になった者、冗談だろうとゲラゲラ笑い出した者、こんな連中が長をつとめる学校など、たかが知れている。
 その中でクーゲル氏は、非常に驚き、疑問や不安を隠そうとはせず、しかし真剣に話を聞いてくれた。その人柄は抱える教師に反映し、生徒たちにも影響しているだろう。私はそう判断した。
 あとは、これが間違いでないことを祈るだけだ。

 ラルム自身にも挨拶をさせると、私は彼女だけ、先に廊下に出した。
 それからもう一度、ラルムの境遇や、私の手元にくるまでの出来事を伝えた。
 充分に理解して、そのうえでラルムをしっかりと支えてやってもらわなければ困る。血のつながりなどなく、養子にしたのでさえ先月のことだが、私の「娘」にした以上、彼女の養育は私の義務であり、責任だ。
 彼女がちゃんと自分で生きていけるようになるよう、育ててやらなければならない。
 それになにより、同情なのかもしれないが、私にはあの子が可愛いのだから。


 彼女を拾ったのは、穏当ではない組織の所有する古びた倉庫で、彼女(たち)は商品として出荷される直前だった。
 私は友人の刑事から頼まれて、スラム街で起こっている子供の失踪事件の解決に手を貸していた。そして「商品」の集積所と思われる倉庫を割り出し、自分の戦闘能力にものを言わせて乗り込んだ。
 近頃の「組織」というものは、人間を使わずにコンピューターを頼って雑事を片付ける。おかげで、倉庫にいたのは数人の見張りと、あとは大型のコンピューターが一台だけだった。
 コンピューターというものは、自分より知的水準の劣る相手には絶対的な強さを誇るが、自分より上の相手に対すると、ザルも同然になる。その点が、決定的に人間よりも弱い。
 私は外部からハックインしてそのコンピューターを自分の管理下においたうえで、見張りの数人を片付けた。なんとも呆気ない幕切れだ。
 そして、集められていた子供たちを解放した。

 彼等の反応は、興味深いものだった。
 応援に駆けつけた警官に連れられ、安心して泣いている者や、喜んでいる者は一握りもいなかった。ほとんどの者は大人への不信感に満ちた目で、黙って寄り添い、仕方なく指示に従っているようだった。大人によって守られたことのないスラムの浮浪児には、「仲間」以外の者を信じたり頼ったりする心はないのだろう。
 そんな中で一人の女の子だけ、何故か私の傍にいて離れなかった。
 それがラルムだ。
 自分の倍以上もある、金属の体の持ち主など、普通の子供は怖がるものだ。まして私の外見は漆黒に青。あまり親しみやすい色ではない。
 にも関わらず、ラルムはマンの刑事ではなく、あえて私を選んで傍にいた。

 子供たちは皆、しかるべき施設に引き取ってもらうまで、いったんは警察署内の保護センターに預けられることになった。
 誰も喜んではいなかった。
 実際、隙を見て逃げ出し、スラムに戻ったグループもあったようだ。
 ラルムはおとしなしく刑事の言うことに従いながらも、心残りそうに何度も私を振り返っていた。
 私が考えたのは、以前に何処かで会ったことがあるのだろうか、ということだった。
 だが、記憶にはない。
 だいたい、10歳にも満たないような女の子と知り合うような機会など、私にはない。
 気になってその子を呼び止め、私がどうかしたか、と尋ねた。
 怖がらせないように傍に膝をつき、頭でも撫でてやろうとのばした手……指を、彼女はおそるおそるといった様子で掴んだ。

 その時は、それだけだった。
 その子は他の子供たちと一緒に収容され、私は小さな不可解さだけ抱えて、日常に戻った。
 だがもとより私は気まぐれで、興味本位で好き勝手にやっているタチだ。
 暇に任せて、その子のことを調べることにした。

 三日とたたず、たいていのことは分かった。
 スラムに入り込んだのはほんの数ヶ月前。それまでは、とある富裕な家に暮らしていた。だがそこは生家ではなく、共に住んでいるのも実の家族ではなかった。
 父母は二年ほど前に、クリーチャーに襲われて死亡していた。
 その事件については、私も知っていた。
 ランズエンドに旅行にきていた親子がクリーチャーに襲われ、両親は死亡、7つばかりの女の子一人だけ、そのクリーチャーを狩りに来ていたハンターズに助けられ、かろうじて無事だった。クリーチャーの棲息領域に旅行者が入ってしまったのは、一帯を管理するアットランド衛星の不備によるもので、一時期問題になったものだ。

 両親を失い、叔母にあたる人の家に引き取られたが、ヒューマンとニューマンのハーフであるその子にとって、そこは決して居心地のいい場所ではなかった。隣家の老夫婦がハーフにも偏見のない人たちで、仕打ちを見ては可哀想になったが、おいそれと口を挟めば、あちらは名家、こちらはその土地を間借りしている立場。なにも言えず、してやれず、実につらい思いをしていたという。その子の姿が家から消えた時には、まずは、死んでしまったのではないかと心配したくらい、日々の有り様は大変なものだったらしい。
 詳しくは聞きたくもなかったし、老夫婦も語りたくはなかったようだが、どんな落ち度があったのか、首輪をつけられて外に放り出され、犬同然に食事をとらされていた日があったことだけ、ちらりと聞いた。
 だがそれでも、同情を寄せていたのはこの老夫婦だけで、逆隣の大きな屋敷の住人にいたっては、そんなのがいると目障りだ、と叔母なる人の家に文句を言いにいっていたというのだから……。

 聞いただけ憂鬱な話だった。
 おそらく両親と死に別れる前までは、親子三人、あまり人目にもつかないようにひっそりと、けれど幸せに暮らしていたのだろう。
 それが、親を失った途端、その仕打ちだ。
 一人で生きていくには幼すぎる身で、それでも耐えかねて逃げ出し、スラムに迷い込んだに違いない。
 私たちの捜査があと少し遅ければ、「商品」としてどこかに売られていたのだから、遣る瀬無い。

 ヒューキャストである私の傍にいたがった理由も、調査の過程で分かってきた。
 クリーチャーから彼女を助けたのは、黒いヒューキャストなのだ。それが誰かとまで調べる気はないが、「黒いヒューキャスト」だけが、両親の他に自分に優しくしてくれた唯一の者なのだろう。
 だから、自分をいじめるかもしれない「両親以外のマン」ではなく、「黒いヒューキャスト」である私を頼ろうとした、ということではないだろうか。

 私はその結果を得てからしばらく、施設に収容された子供たちが、これから辿ると思われるいくつかの可能性の未来について考えていた。
 差し迫るほど危機に満ちてきたこのテラには、もういかなる余裕もない。現に今、パイオニア計画と呼ばれる、他惑星への移民計画が進行している。その第一陣、開拓を担当するパイオニア1が出航したのは、二年ほど前のことだ。
 物資はもちろん、人の心にもゆとりなどなくなった。
 自分の明日が無事に存在するかどうかすら危うい現状で、他人のことなど構ってはいられない。個人は我が身と家族や恋人、友人のことがせいぜいで手一杯、国家は自国の威信と国民への義務だけで限界。
 公営であれ私営であれ、孤児施設の内情は火の車、餓死者が絶えないという。
 半年前だったか、孤児院の中で子供同士が殺しあう事件があった。きっかけは、隣の子供の食事トレーをうっかりと蹴って引っくり返してしまった、というだけだった。
 表沙汰にならないだけで、こんなことは他にいくらでも起こっている。
 そして、国家も個人も、そんな現実をもうどうしてもやれないほどに追い詰められている。

 傲慢だろう、とは思った。
 だが私は、あの場所で他の誰でもなく私の手をとった少女を、拾い上げることにした。
 他に同じことをする子供がいても、二度はやらないかもしれない。
 だがせめてあの子一人、寝る場所や食事の心配などしなくていいところへ連れ出してやりたかった。
 それが私の自己満足に過ぎなくても。


 私は、努めてそういった自分の感情や考えは出さず、事実だけを告げたつもりだったが、クーゲル氏は深く頷き、
「ハーフということは、隠しておきましょう。幸いここはフランスじゃあありません。誰もあの子の昔のことなど知らないでしょう。あくまでもニューマンの子、親と死に別れて、貴方に引き取られた、ということにしたほうがよろしいでしょうな。貴方のことも、自然に知られる時までは、あえて宣伝することもないかと思いますが、どうですかな」
 実に真摯な目で私に問うた。
 異存はない。
 養父がアンドロイドであることは、隠すほどのことでもないが、大袈裟に教えてしまっては、それは特殊なことであり異常なことだという印象を与えてしまう。
「そのようにお願いします。もし緊急でなにかあれば、PPCのナンバーにコールしてください。仕事柄、端末は常に携帯していますので」
「はい、たしかに」
「では、私もこれで。ラルムをよろしくお願いします」
「はい、はい」

 クーゲル氏は立ち上がり、デスクを回りこむと私の前に来、手を差し出した。私はその手を取り返す。小さいががっちりと締まった、労働に鍛えられた手だと思った。
 それからあらためて一礼し、出て行こうとした時だった。
「貴方は本当にアンドロイドですかな?」
 突然、悪戯げな声がかけられた。
「中にマンが入っているとでも?」
「だとしても、不思議ではないと思いましてな。私は教育者として生きていくことを決めた時、知りうるかぎりのことを知りたいと思いました。それで、教師になるまでに20年、様々なことをしてきた。おかげで何人ものアンドロイド、ハンターズのかたにも出会うことができましたよ。だから私は、アンドロイド=ハンターズがどういったものかを、実際に知っています。貴方は、あまりにも違いすぎますな。彼等のほとんどは、仕事と自分のこと以外のなにかについて、責任や情愛など感じないようにできている。自分が関わってしまったことに対して責任を感じることはあっても、自らあえて関わって責任を持とうとはしないものに見えましてな。それに、子守りまでできるメイドロイドでさえ、持っているのは自分の仕事に対する責任であり、子供に対する責任感ではない。情愛ですら、プログラムによって組み込まれた一般的なものだといいます」

 ……とんだ識者に出会ったものかもしれない。
 私はどう応じるべきかを考えた。
 論理的結論は、笑って受け流すことだ。
 だが感情的には、彼と信頼関係を結ぶため、真摯に受け答えるべきではないかと思う。
 迷う時間が、沈黙になって返った。
「いやいや、余計なことを言いましたな。申し訳ないことです。ただ、貴方のようなアンドロイドもいるのだと思うと、無関心でいることが難しい。アンドロイドはこんなものだ、という認識を改めねばなりませんな」
 また答えにくいことを。
 私のAIは特殊な経緯を経て完成したもので、他のアンドロイドとは決定的に違う。そんな私を一般のアンドロイドの中に加えては、基準がめちゃくちゃになる。
 だがそんなことを自分の口から言うのは、おこがましい。

「お嬢さんのことは、たしかに引き受けましたよ。先ほど申し上げたとおり、本来の年齢よりは一学年下から入ってもらいますが、成績次第ではすぐに繰り上げましょう。お、そうそう。もしご家庭でなにか手に余るようなことがあれば、ご遠慮なく相談にきてください。それに、お仕事柄、家をあけられることもあるかと思いますが、当学園には小さいものの寮もありましてな。しばらくお預かりすることもできます」
「お気遣い感謝します。しかし、長期に渡る仕事は、あの子が今の環境に慣れるまでは、入れないつもりでおりますので。それでは」
「はい、はい」

 園長室を出ると、壁にもたれて待っていたラルムがぱっと背を離した。
 私を見上げ、なにか言いたいような顔をするが、口は開かない。
 引き取った直後ほどひどくはないが、叔母の家での暮らしで、すっかり自己主張をしない子供になってしまっている。今までに一度として私に、なにかをしてほしいと言ったことはないし、物をねだったこともない。
 第一、養子という形で籍に入れたからといって、それでいきなり親子になるわけではないのだ。今はまだ、法的に親子であるというだけの他人だ。私にとればラルムは可哀想な子供であり、ラルムにとれば私は物好きな大人に過ぎない。
 だがそれも、同じ場所で暮らし、形だけでも親子として振る舞っていくうちに、自然に情も通うようになるだろう。そしていつか自然に、無理なく私を「父」と呼べるようになるのかもしれない。……なってほしい。

「帰りにアロウストリートの雑貨屋に寄ろうか」
「はいです」
「それから、BGCで服でも買おう」
 私が言うと、ラルムが泣きそうにも見える顔を精一杯に上に向け、私を見る。
「私が着るわけはないぞ?」
「でも……」
「明日から学校に通うんだ。服なんて、今あるだけじゃすぐに追いつかなくなる」
「でも、毎日洗ったら、ちゃんと足りるです」
「いいんだよ」
 私の腰ほどまでもない位置の、頭を撫でる。そのまま下ろした手に、以前のようにそろそろと、ラルムが自分の手をつないできた。
 甲には、鞭かなにかの痕と思われる傷がある。年頃になる前に、ちゃんと病院で消してやらねばなるまい。

「少し遠いが、ちゃんと毎日通うんだぞ」
「はいです」
「乗るバスを間違えたりするなよ?」
「はいです」
「もし迷子になったら、すぐに私にコールしなさい。まあ、ならないに越したことはないが」
「はいです」
 ずいぶんと気張った顔で、大きく頷いた。
 その顔につい苦笑して、キャッチした情動コードの不思議な曖昧さに、安堵した。「可愛い」と思う気持ちと「愛しい」と思う気持ちが直接にリンクした、これまでにないパターン。論理的に認識してしまうと味気ないが、これがきっと、私たちの間をつないでくれるに違いない。

 自分からはなにも欲しいとは言うまいから、好きそうなものを買ってやろう。必要なもの、必要ではなくてもあると嬉しいもの、女の子が好きそうな小物、それから、お菓子でも。大きな瓶詰めのビーンズなら、見ていてもきれいだから、きっと気に入るだろう。
 いや、一緒にいて買ってやるより、明日にでもいきなり買って帰って、驚かせようか。
「そら、帰りはこのバスだ」
「はいです」
「うちに帰る時は、終点まで乗るんだ。今日は、途中で降りるがね」
「はいです」

 マンの子供を連れたヒューキャスト、などという珍妙なものに、乗り合わせた乗客たちが呆気にとられたような顔をする。
 ヒューキャストと共にいて不自然でないのなど、ハンターズくらいのものだ。
 ということは、ラルムがハンターズにでもなれば、私といても自然な取り合わせになるのだろうが……やはり冗談じゃない。
 一瞬の判断ミスが死につながるような危険な仕事はさせたくないし、雑用程度の仕事をするなら、ハンターズになどならなくてもできる。
 そんなことを思って、我ながら「父親」らしい発想をするものだと苦笑した。

 

(END)