ガ ン ツ

 ガンツ。
 れっきとしたヒュ―キャストである。
 ……とも言えない。
 ハンターズとして登録しているアンドロイドには、二通りいる。
 一方は、ハンターズにすることを前提として製造された、生粋のハンターズ=アンドロイド。
 もう一方は、製造目的は別にあったが、自らの意思でハンターズとなることを選んだ者である。
 ガンツは、後者だった。

 ハンターズになろうとした理由など、聞いてもあまり意味はない。
「かっこいいんだな! 女の子にモッテモテだって聞いたんだな!」
 ……そう。そんなものである。
 しかし、それでもちゃんとハンターズ養成所を卒業したのだから、能力的に不足はない。
 ただ、問題があるとすれば、その性格だった。

 彼の友人、某Y嬢は語る。
「うーん……。そりゃ、いい奴だと思うわよ。ちょっと困ることもあるけど、うん、すごくいい奴よ。でもさぁ、少しなんて言うか、トロかったり……、それが悪いっていうんじゃなくて、あれでもヒューキャストとしてちゃんとやってるんだし。でも、あたいが知る中で、一番ヒューキャストらしくない性格よねぇ。お人好しで、どっか抜けてて、妙にズレてて」
 ……あまり具体的な説明になってない気もするが、要するに彼は、好戦的でオレサマなタイプが多いヒューキャストの中では、変り種だということだ。
「だいたいさ、ヒューキャストになった理由も微妙よね。そうそう。あれ、あたいが直談判しに行った時なのよねぇ。あたいはさ、ハンターになりたかったの。でも、適正検査の結果がフォースで、文句言ってたのよ。どういう理由で振り分けてるんだって。そうしたら、その時に隣の窓口にガンツが来てね、もう、要領得ないったらなくて。でも、アンドロイドはいいわよねぇ。特に、後からハンターズになろうっていうのはさ。だって、ヒューキャストかレイキャストか、選べるんだもん。適正なんてその時に調整できるからって、よっぽど偏ってるんでないかぎり関係ないしさ」
 以下、どうやらしばらくは、Y嬢の思い出話が続くようである―――。

 

 あたいが窓口でゴネてたら、隣でなんだかとっぽいアンドロイドが、受付の人困らせてんの。あたいはさ、しばらくお待ちください、なんて言われてほったらかされてたから、なんとなくその話、聞こえちゃったんだけどね。
 ハンターとレンジャー、どっちがいいですかって聞かれて、ずーっと悩んでるみたいなのよ。幸い暇みたいで、だから受付の人も困ってるっていっても大したことなかったみたいだけど。
 それで、よ。
 あいつ、いきなりあたいに話し掛けてきたのよ。君はどっちがいいと思うかな、って。
 あたいはホラ、ハンターになりたかったわけだから、そんなものハンターに決まってるって答えたのよね。今にして思えば無責任だったけど、あの時は本当にあたい、腹立ってたし。
 そうしたらあいつ、あっさりと、じゃあそうするんだな、とか言っちゃってさ。
 それでヒューキャストになったのよ。

 腐れ縁ってヤツね。
 入った時期がおんなじだから、ハンターとフォースに分かれるんじゃないなら、一緒になることも多くて。あいつったら、あれですっかりあたいのこと「友達」だなんて言ってさ。まあ……実を言えば、あたいも満更じゃなかったんだけどさ。
 正直、あいつに救われてたとこ、あるわよ。うん、認める。
 ほら、あたいってすぐ怒っちゃうし、あんまり友達って、できなかったのよね。最初はいいんだけど、気が付くと遠巻きにされてる感じで。
 それまでがあたい、「社会」ってのに出たことなくてさ。友達も多いつもりでいたから、なんで、どうしてって、ものすごく不愉快だった。今にして思えば、あたいって、こうとなったら譲らないトコあるし、こうだと決めたら他の見方ができなかったりもするから、……いい加減にできない、っていうのもあるかな。それが付き合いづらかったんだなって分かるけど……。その時はね、あたいはなにも間違ってないし悪いこともしてないのにって、理由が分かんないだけに、けっこう切羽詰ってた。
 でも、ガンツがね。
 あたいが怒鳴ろうと八つ当たりしようと、翌日にはケロッとして追いかけてくるんだもん。
 だからあたいもさ、あいつがいじめられてたりしたら……そう。笑っちゃうわよね。いじめにあうヒューキャストなんて。でもあいつ、やり返さないし怒らないし、ホントにもう、煮え切らないっていうか。あたい、そういうの見てらんないのよ。可哀想とかいうより、しゃきっとしなさいって感じで。
 それで、庇ってるんだか叱ってるんだか分かんないなりに、ね。

 変な奴よね。
 ちっともヒューキャストらしくない。横にもでっかい図体してドタドタ走って、あの、「〜〜なんだな」って話し方もトボけててさ。
 ヒューキャストとしての頼り甲斐なんて言ったら、かなり寂しいわよね。特にあたいはホラ、タイラントとかさ。あの辺を知ってるから、どうしても比べちゃうし。たまにあいつと組んでポカやられたりすると、タイラントだったらこんなことないのに、って思っちゃうわよ。
 でもさ、……迷子の子とさ、一緒に困ってるヒュ―キャストがいたっていいと思うの。お母さんが来るまではずっと自分が一緒にいてあげるってさ。あいつ、それであたいとの仕事キャンセルしてきたことあるのよ。
 それも、話し方が下手なもんだからさ。今日の仕事は行けなくなった、から言うのよ。理由を言いなさいって言ったら、なんだかゴニョゴニョで。あたい頭に来ちゃって、仕事をナメてんじゃないわよ、って怒鳴っちゃったんだけど。
 そういうことすると、後悔するのっていつもあたいなのよね。後で理由が分かってさ。それこそ、もう少し気の利いた誰かなら、交番に連れて行くとかして、少し遅れてもちゃんと仕事はするんだろうけど……、あたい、ガンツのああいうとこ、別に直してくれなくてもいいと思うのよね。
 だって無理よ。タイラントに迷子の子供あやすなんてさ。絶対無理。逆に泣き出して止まらないに決まってるわよね。

 だからつまり、すごくいい奴なのよ。
 ヒューキャストらしくないトコも含めて。
 困らせられることもあるけど、ちゃんとお釣りがくるからさ。いいのよ、あれで。

 

 ……だそうである。
 そんなガンツとY嬢であるが、だからと言って、Y嬢がガンツを怒鳴らないわけではない。
 今日もそれ、このとおり。
「少しは考えなさいよ! 寝起きのレディの部屋にドカドカ入ってくるなんて!」
 寝癖のついた頭を懸命に誤魔化しながら、怒鳴るY嬢である。察するに、寝ているところに訪問されて、寝ぼけ頭で「はぁい」とか返事をしてしまったのだろうから、Y嬢にも落ち度はあるのだが、この二人にはそんなことは関係ない。
「ごめんなんだな〜」
 どこで誰に教えられたのか、両手を顔の前で合わせて拝むジェスチャーをしながら、ガンツは大きな体をせいぜい小さくすぼめている。

 まあ……Y嬢がトサカに来ているのには、もうひとつ理由がありそうだ。
 昨夜は暑かったものだから、Y嬢の姿はタンクトップにショートパンツ。ちょっと年頃の娘としては、人に見られたい姿ではない。そのことについて、まったくなんにも感じていないというか、分かっていないあたりにも腹が立つ原因があるらしい。土台アンドロイドにそういうことを理解しろというのが無理な注文なのだが。
 ともあれ、この程度はこの二人にとって、日常の他愛ない出来事である。
 ただ、今日はちょっと、思いがけないオマケがついてきた。
 たぶん、たまたま昨日、Y嬢が会っていた人のせいだろう。
「も〜怒った! ガンツ! あんたも少しはレディに相応しい男になんなさい!!」
 そうしてヤンが言いつけたのは、ガンツの一日執事体験だった。
 多分に、先方の迷惑は失念しているY嬢であった―――。

 

 というわけで、ガンツが連れてこられたのは、巨大なお屋敷だった。
「いい? ここでしっかり教えてもらうのよ!」
「まっかせるんだな〜」
 ドン、と胸を叩くガンツに、Y嬢……ヤンは溜め息をついて項垂れる。いまさらになって、ガンツがなにかとんでもないことをしでかすのではないかと心配になってきた。だが、屋敷の主は快諾してくれた後である。
 涼やかなベルの音に、ややあってから落ち着いた男の声が返ってくる。この家には「レディ」は備え付けられていないという。つまり、この男の声は本物の人間の声である。
 やがてドアが開くと、古めかしい、時代がかったスーツを身につけた壮年の男が現れた。
 その隣には長身の女性が一人、立っている。
 黒いドレスに、金髪を高く結い上げて、薄化粧もすっきりと、まあ、美女である。しかも、その辺の「きれいなねぇちゃん」と違うことは見るだけでも分かる。
 直前まではのんきらしい様子だったガンツも、ぽかんと階段の上を見上げたままだ。
「ようこそ、ヤン様。そちらのかたがガンツ様ですのね?」
「あ、は、はいっ」
 こんな答え方は、ヤンらしくもない。

 屋敷の主はローザ。ヤンとはハンターズとして知り合った。同じフォマールである。
 実力はといえば、これはヤンのほうが上である。ローザのハンターズ稼業は、どういう理屈だか知らないが、一種のたしなみだという。ヤンには理解できないのだが、ともあれ、ハンターズとしてやっていけないことはない、という力量のローザである。
 ただし。
 その美貌と財力がものを言うのか、彼女のもとに届けられる品々は、とてもヤンに手が出せるものではない。世界に数個しかないと言われる希少ゆえに馬鹿げて高価な武器や防具が、惜しげもなく贈られてくる。そのため、実際に戦うとなると、そう馬鹿にしたものでもなくなってしまう。
 それでも、ローザにとってハンターズなどあくまでもたしなみ、一つの経験である。
 本来の彼女は、働かずともこうして巨大な屋敷に住み、執事だのメイドだのにかしずかれる生活をしている。

 聞いた話だが、彼女の実家というものも、相当な資産家だったらしい。
 そして、結婚した相手というのも、それに劣らない資産家だった。
 結果、今の彼女は、若くして亡くなってしまった夫の遺産を全て受け継いだ、いわゆる「大富豪の未亡人」なのである。
 幾多の贈り物の中には、「先行投資」な品物もあるのだろう。
 もっとも、彼女の第二の夫になるためには、彼女に認められなければ意味はない。
 出会う男を片っ端からランク付けし、Sクラスでないと夫候補としては見られないと言うローザ。目下、A+ですらラグオルに一人か二人。これでは有象無象の出る幕ではない。
 これではちょっと、なんのステータスもないガンツとは、無縁にも程がある。

 ともあれ、ガンツは今日一日、この屋敷で執事体験をする約束になっている。
 申し込んだヤンもヤンだが、引き受けたローザもローザである。
 ヤンが不安げな素振りを見せつつ帰っていった後、ガンツは豪勢な屋敷の中で、頭のネジが一本か二本、落ちてしまったのではないかというぼんやりとした様子で、あちこちを眺めていた。
 やがて、
「す、すごいんだな……」
 ぽつりと呟く。ローザは口元に手を添えて小さく笑い、傍らの紳士に一つ頷いた。頷き返した紳士がうやうやしく差し出したのは、黒い蝶ネクタイ。ただし、普通のものよりはかなり大きい。
「ガンツ様。今日はこれをつけていてくださいませ」
「これはなんなんだな?」
「執事のシンボルのようなものですわ。クラウス、つけて差し上げて」
「かしこまりました」
 そうして、ガンツの喉元に、ちょんと黒いネクタイがついた。

 さて、ガンツがまず与えられた仕事は、庭の芝刈りだった。執事というより下男であるが、まあ、彼にやらせるならば妥当なところだろう。
 他の者ならばともあれ、ガンツの頭の中はいたって平和で、
「きれいな人なんだな〜。大人のミリョクってヤツなんだな!」
 と嬉しそうに芝刈りマシーンを押して歩いている。まずまず、順調である。
 掃き掃除、電灯の付け替え(これは体が大きいだけあって得意である。しかも、褒められて有頂天になったりもした)、存外ガンツもやるものだ。
 お昼にはちょっと高価なオイルなんかをもらって、
(こんなのだったら毎日でもいいんだな〜)
 などとのんきなガンツ。
(ローザさんはきれいだし、優しいし、ヤンと違って雷は落とさないんだな!)
 彼の辞書に、「高嶺の花」という言葉は、ない。

 さて、とどこおりなく迎えた夕方。
 事件は、起きた。

 上機嫌でせっせと廊下を磨いていたガンツのお尻に、ドカンとぶつかったものがある。
 なにかと思った時には、鳴り響くけたたましい破砕音。
 ガン、ガシャッ、バリン。
 前進ではなく後進していたガンツのお尻にぶつかったのは、廊下の片隅の物置台。
 おそるおそる振り返ったところでは、そこに乗っていたものが、床の上で砕け散っていた。
「し、しまったんだな……」
 破片を一つ手にとり、右、左と見るが、人の来る気配はない。なにせ広大な屋敷であるから、近くには誰もいないのかもしれない。
 しかし。
 しーらない、と言えるガンツではなかった。

 せっせと破片を集めて両手にすくい、トボトボとローザの居室に向かう。
 手が塞がっていてノックができないので、
「あ、あの〜、ボクなんだな〜」
 外から声をかける。
「あら、どうぞ。お入りなさい」
 そう言われても、スイッチに触れるにも一苦労だ。マンならば肘ででも届くが、ガンツには低すぎるし、また、小さすぎる。
「手が塞がってて開けられないんだな〜」
 正直にそう言うしかない。
 やがてドアが開くと、顔を覗かせたのは、ちょっと見かけたことのない若い男だった。

 誰なんだろう、と思う前に、
「あっ」
 と彼の視線はガンツの手の中に落ちている。
「あ、あの、あの……こ、これ、壊しちゃったんだな……」
 ガンツはうつむいて、手だけを前に差し出した。そのせいで目の前の青年は慌てて身をかわさなければならなかったのだが、そんなことはガンツには見えていない。
 絨毯のの上をサラサラと、布地の滑る音が近づいてくる。ガンツはますます小さくなった。
「ご、ごめんなさいなんだな。必ず弁償するんだな」
 けれど、こんな大きなお屋敷のこと。いったいいくらするのか、はたしてガンツに支払えるものなのか。しかしガンツの頭はそこまで回っていない。ローザさんに叱られてしまう、ということだけでいっぱいである。

「弁償って」
 と言ったのは青年のほう。
「君、これはそんなふうに買えるものじゃないんだぞ」
「えっ!?」
「これは、義姉さんと兄さんの思い出の品なんだ」
 ローザのことを「ねえさん」というこの人は、弟ということになるのだろう。そんなことを一瞬だけは考えたガンツのAI。しかしすぐに、お金で買えない思い出の品を壊してしまった、という事実に愕然とした。
 不出来と(具体的な会話言葉では「間抜け」になることが多い)言われるAIだが、何故か、こういうことを理解するのには不自由しない。
 つまり、とても大変なことをしてしまったのだ。
「ど、どうしよう……。ボク、どうすればいいのかな」
 おろおろと助けを求めるように、ガンツは視線を彷徨わせた。

 その視線が最後に止まったところで、ローザがにっこりと微笑んだ。
「壊れてしまったものは仕方がありませんわ」
「義姉さん」
「貴方が怒ることもないでしょう、クレイア。ガンツ様、正直におっしゃってくださったのですね」
「だって、謝らないといけないことなんだな」
 頷きながら、微笑みは更に……ガンツの目には眩いほどになった。
(き、きれいなんだな……)
 一瞬は、手の中のもののことも忘れてしまう。
「ボ、ボクにできることなら、なんでもするんだな! だから……」
「それでは、少し手伝ってもらいますわね」
 甘すぎるよ義姉さん、と、クレイアという名らしい青年が溜め息をついた。

 ガンツが言いつけられたのは、水槽を一つ買ってくることだった。
 お安い御用なんだな、と大慌てで出て行き、大急ぎで戻ってくる。
「これは割らなかったんだな!」
 電送してもらえばいいものを、抱えて帰った水槽を差し出すガンツに、ローザもクレイアも苦笑した。
 さて、その水槽はローザの部屋に運び込まれ、そこにはきれいな水と、いくつかの水草が入れられた。砂利を敷いた上には、ミニチュアの神殿や、門が置かれる。そしてその片隅に、ガンツの壊してしまった、古風な屋敷の破片が沈められた。
 これで少し時がたって、苔でもついたなら、こういうふうに作られたセットにも見えるだろう。いずれは観賞用の魚も入れて、そうなれば完璧なインテリアだ。
 けれど……。
「ロ、ローザさん〜」
「はい?」
「で、でも、思い出の品物っていうのは、こんなふうにしても、元に戻ったことにはならないんじゃないのかな……?」

 答えてローザは微笑み、頷いた。そして、
「壊れたものは、もう二度とは元には戻りませんわね。たとえきれいにつないでも、壊れたことをなかったことにはできないものです」
 ガンツはがっくり項垂れる。その聴覚回路に、
「でも」
 という言葉が続けて聞こえた。
「品物は壊れても、思い出は、そう簡単には壊れないものですわ」
「え?」
 ガンツが目を上げると、ローザは愛しそうに、水槽の中の廃墟を見ていた。
「たとえ形は変わっても、これを見ればわたくしには、あの人と過ごした時間が溢れてきます。壊れる前と後とで、その思い出には少しの違いもありません。それに、クレイア。貴方は怒ってくれたようですけれど、それも考えようですのよ?」
「どういうことですか」
「壊れたという出来事が、この形に表れているでしょう。では、壊したのは誰かしら? なにがあって? それからどんなことになったのかしら? わたくしはこれから、この水槽を眺める時には、あの人との思い出と一緒に、今日のことも思い出すでしょう。黙っていることもできるのに、ガンツ様は正直におっしゃってくださったこと、貴方がわたくしのために怒ってくれたこと。……今日は、とても良い一日でしたわ」
 大きな窓から差し込んでくる夕焼けの光の中、ローザの微笑みは、ガンツにはそれはそれは、きれいに見えたのであった。

 

 さ・て。
 そんなことがあって数日。
 またしてもガンツはヤンの部屋にドカドカと入り込み、怒鳴られていた。
「あんたはローザさんトコでいったいなに教えてもらってきたのよ! 少しは紳士的な振る舞いってのを覚えなかったわけ!?」
 どうやら数日前と大差ないらしい格好のヤンは、シーツを巻きつけて雷連発である。
 しかし、雷にもすっかり慣れてしまったガンツ。少しも動じずにちらりと天井を見上げてなにかを思い出す仕草。にへら、と雰囲気が緩むのがヤンも分かった。それからガンツはじっとヤンを観察し、言ってはならないことを言った。
「大丈夫なんだな! ヤンのは、見ても悪い気がしないんだな!」
「どッ、どぉゆぅことか・し・ら〜?」
 にょきにょきと、トレードマークの角の生えたのが見えた気のする、平和な(?)朝である―――。

 

(おちまい)