珍しく、夜間を指定した依頼があった。 夜のガル・ダ・バル島はまだ未知の世界で、なかなか受け手が見つからなかったその依頼を、ボイドは引き受けた。 暗闇と、どこになにが潜むのか分からない空間は、得意とするものだ。恐れる理由はない。 そしてまた、一つだけ思うところもあった。
夜の島、遮るもののない海岸線で、空を見上げる。 満天の星空だ。 シティ付近には人工の明かりが充満し、とてもこんな星空は拝めない。 さりとて街灯のない区域に夜間進入することはまだ許されておらず、星空を手に入れるためには、ガル・ダ・バルの夜は最高の条件だった。
波の音の他はなにも聞こえない浜辺。 暗い藍色の空に、無数の星。 見上げていると距離感を失い、体が浮遊しているような心地にすらなる。 砂浜に腰を下ろし、そのまま手足を投げ出して仰向けに寝転がった。 きっとこの世に、これよりも美しいものはないだろう。 星は瞬き、光を降らせている―――。
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