鉄とヲトメ |
「ただいま」 シャトはたくさんいる。家全体で言えば、ラッシュの作った青いの、ピンク色の、緑色の、紫色の、黒いの。アズールの作った黒いの、灰色の、白いの。子猫だらけである。 かわいいと言えば。 「うん」 「今言ったこと、全部言ったんだろう」 「面倒臭ェ……、ってより、親父。親父はいつもそんなふうにしてるのか?」 「おい。ガキにそんなことを言っても分かるか」 「……もういい」
(おわり) |
余談:「ヤンに友達は少ない」説 『ガンツ』の中で初めて、ヤンの独白部分にこの設定が出ている。
なにも彼女を貶めたいわけではなく、一人のキャラクターとして設定する時に、より人間らしく彼女をいきいきとさせるポイントになる、と思いあえて表に出すことにした。
だがこれはなにも、私の勝手な設定ではない。あえて作りだす「設定」以前に、ヤンの言動を見ていれば、そう思えてならないのだ。何度もRPしていく過程で、その相手になった私が見つけた彼女の「欠点」がある。
前向きだし思いやりもあるし元気だし、おおむね「とてもいい子」なのだが、相手に腹を立てた場合、それを飲み込んで温和に解決する、ということができないようだ。
カチンときたら、すぐ態度に出してしまう。
ものすごく正直に私がRPし続けてしまうと、「あっそう。だったらもういいよ」とその場から立ち去ることになる展開が少なくなかった。それではまずいので、なんとか話をつなぐことで誤魔化してきたが、そのために多少、こちらのキャラクター設定を変更せざるを得なかったのも事実だ。
まあ、愛着のあるキャラクターではなかったのでどうでもいいことなのだが、とにかく、ヤンは怒りを飲み込めない、ということが次第に浮き彫りになった。
同じプレイヤーの手によって動いている、理知的で温和、寛容なユーサムとはまるで違う。そういう子と、ほぼ同年代の子が一緒にいたとして、どうなるだろうか?
今回ネタにしたこれは、実は「女性を褒めようとした男が陥りがちな罠」を念頭に置いていたから、あえて極端に、黒髪のほうを「悪く」言ったのだが、(そういう意味では、ヤンがはっきりと怒ってくれたのは図に当たったし、狙い通りだった)そこまで言わないにせよ、たとえば現実で「髪切ったんだ? 短いのすごくいいね。こっちのが似合ってるよ」と言った時、いきなりムッとした顔をされて、「私は長いのが好きだったの」と不機嫌な声を出されたら? ショックだったにしても、そんなあからさまな態度に出すなよ、やりにくいな。……にならないか? 悪気があって言ったんじゃないのに、そんなことでマジに怒んないでよ、と。
それが珍しくない反応となると、こっちは迂闊なことは言えないし、なにかあれば折れないといけないし、少し気の強い十代後半なら、逆ギレして喧嘩にもなると思われる。
とても、気楽に一緒にいられる「友達」にはできない。ヤンとうまくやっているキャラクターを考えると、全員、特殊な性格だ。
ラルムは自己主張しない。もしヤンが腹を立てればすぐに謝って、自分が悪かったとしか思わないだろう。友達には違いないが、ラルムがひどく尻込みするのも手伝って、対等とは言えない。
アズは見かけよりはかなり年くってるし、アホな喋りはしていても、状況に応じて「引く」ことができる。ヤンが怒り出すようなことは言わないでやめておく、という具合で関係を保っている。おそらく、友達っぽくはあっても距離のある関係。
ガンツのようなステキなノーテンキは友達を選ばない。
レイヴンやラッシュ、ユーサムは許容力がズバ抜けたタイプで、これは「親」的な位置だろう。
タイラントは「自分の主張や譲れないものとは重ならないのでどうでもいい」という少し離れた立場。
ここまでくるともう「友達」ではなく、あくまでも知人か。あるいは。
お互いに思ったことは言わないと気が済まない似た者同士。
私はこれをモラだと設定している。
喧嘩にもなるが、共感する部分も多い。ものすごい口喧嘩とかになったりもするのに、なにかあった時には電話してしまう。三ヶ月くらい口きかないことすらあるのに、絶交よ!とまで言ってるのに、気になってしまうし、困っているのを見ると放っておけなくなる。
これはもう、一生ものの親友だろう。
ヤンには気軽な意味での友達は少ないが、逆に、モラという親友がいるのが特徴だ。よくよく付き合えば、「こういう欠点はあるけどいい子だ」になるが、実際のトモダチ関係なんて、そこまで付き合う前に発生し、変動する。たいてい、相手の長所がはっきりと実感できるようになる以前の段階で、なんとなく付き合っていく。その段階では、「付き合いにくい」と思ったらそれまでだ。
こう考えてくると、必然的に、ヤンには友達は少ない、ということになる。
初対面の頃は寄って来る子が多いのだが、しばらくすれば離れていく子も多くて、あまり残らない。なあなあ、まあまあ、でやっていけないから、付き合いにくいのだな。このあたりはパラレルにおいて、更にガッシュとも関わるネタがある。
あの男は面倒見がいいのか悪いのか、他の誰かが言わないことを言う。
「あんたみたいに友達一人もいないような奴に言われたくないわよ!」とか怒鳴ったら、鼻で笑われて、「おまえ、自分の取り巻きを友達だと思ってるのか?」とか言われたりね。
面白い題材なのだが、ヘヴィすぎるのでSSにはしない。ただ、こういうことがあってヤンが自分を見つめなおす、ということもあったっていいだろう。SSにおいてヤンの妙味、最大にかわいいところは、ステキなレディ……は無理として(ぉぃ)、まあ、成長していく過程にある、と私は思ってるので、欠点は欠点として隠すことはせず、ずばっとくっつけて、テーマにして目立たせてしまう気でいる。
等身大の女の子が、現実にも抱えそうな悩みや迷いのはてに、大人の階段のーぼる〜♪なのだ(←古っ