思いつくまますぎる呟きたち

 

○○さんと私

 思いつくままに、キャラクターと自分とをなんらかの形で関係づけたり、私からの極めて個人的な思い入れとか、そういうものをポツポツ語ろうと思います。SSがまとまらないときの緊急手段という噂もあります。
 いやでもほら、背景までバッチリ描きこんだものを「イラスト」といい、さらさらっと描いたものを絵板でアップする絵描きさんと同じような感覚でいくなら、こういう呟きが絵板にアップされるものにも相当するかなぁと。……ダメですか?

 というわけで、常日頃よりもますます偏見と偏愛と独断と我が儘に満ち溢れるかもしれませんが、ご容赦ください。
 あと、全員分書くことはないと思います。接点とかなんとか、特になにも思いつかない相手について無理やりひねり出しても面白くないと思われますので。これき好き嫌いはほとんど関係なく、キャラクターの造形とか、私の好みに強く関わりますので、たぶんオートボット(サイバトロン)側の人は出てきません。うん。

 最後に申し上げておきますと、キャラクター語りではなく「私語り」になる可能性も高いので、管理人に興味のない人はスルーしたほうがよろしいかと思います

スタースクリームと私

 こんな呟きを書こうと思ったのが、そもそもスタスクという存在のためです。15日付で追加している知育絵本「ANNUAL 2010」のキャラクター診断のページで、4つあるスタート地点のうち3ヶ所でスタースクリームに行き着いたんですよね、私。
 スタスクに行きつくための最後の質問は二つしかなく、一つは「(分からないことがあったとき)貴方はその道の権威に質問をしますか?」というもの。ここで「ノー」と答えると、「自分は誰よりも優れていると思いますか?」という質問に行き、イエスと言えばメガ様、ノーと言えばオプになります。
 で、もう一つの質問というのは「貴方はなにがあっても友人の味方ですか?」というもの。ここでイエスと言えばオプで、ノーと言えばスタスクです。しかし私、この質問に辿り着いたことはありません。
(ちなみに1つだけスタスクにならなかったのは、最後の質問が「貴方は今までチームを移籍したことがありますか?」みたいな質問で答えようがありませんでした。イエスだと「車たち」というその他大勢になり、ノーだとバンブルビーになります)

 ともあれ。
 初代アニメのスタスクのお馬鹿さんぶりはすごいものがあるのでちょっと保留したとして、スタースクリームと私は、あのキャラクターたちの中ではかなり似てるんだよなぁと思っていたりします。
 無駄に高い自尊心とか、顔と腹が裏腹で組織の中を泳いでいたりとか、小賢しいところとか、詰めが甘いところとか、まあ、マイナス面で主に。ナンバー2的な立場というのも、今の私にとっては親近感のあるポイントです。
 昔は否応なく委員長とかやらされてましたが、今は、店長がいればその店長の「一番汎用性が高いので中ではまだしも不安のない部下」な位置です。決して優れているからではありません。有能な片腕というのではなく、今のところ周囲の人は、なにか突出して優れているところがあると、なにか大きく問題なところもあるので、そういった落差のない、それでいて平均的に及第点をとって困ったところのない存在が、相談役とか緩衝役としては使いやすいらしいというだけです。

 そういう私のマイナス面を極端に大きくして、更に有能にすればRUIN世界(「D」の世界ですね)のスタスクになり、有能にしつつプラスの面を拡張すれば世話焼き苦労性なスタスクになります。
 人から認めてもらいたいとか、必要とされたいといった自尊心を満たしたがるところと、単純なお節介なところ。そういった諸々のものを、事実として有能なスタスクさんにくっつけるとあんな感じになりました。
 だからたまに思うんですよね。世話焼きスタスクにとってのメガ様、心から敬愛し信頼する上司みたいなのがいれば、私もけっこうフルにその人を支えるために動くのかもしれないなぁと。(案の定「私語り」になってますので、ウザっと思ったらサヨウナラ!!)
 有能極まりない上司の片腕となって、いくら有能でも一人では零れてしまうところをせっせと拾って渡すも良し。ちょっと抜けたところのある上司のケツ引っぱたくオカン的な役割も良し。
 ただ一つ、仕える条件があるとすれば、「私の価値が貴方にとって小さくないことを、なんらかの形で示してください」です。助かってるよとか、おまえに聞かせて良かったとか、言ってくれて助かったとか、私の焼く世話や行うフォローを、ちゃんと見ていて評価してくれないなら、たぶん、ついていきません(笑
 だから、メガ様の下にいたらきっと幸せなんだろうなぁと思います。スタスクも私も。心身かけて仕える甲斐のあるすごい指導者ですし、ちょっとした労いの言葉とかを惜しまない。ただまあ、がんばりすぎて過労死しなきゃいいですがスタスクさん(と私)。

 あるいはRUIN世界的に、自分がもし有能だったとしてですが、気に入らないけれど利用価値はある上司の下にいたら、まさに「言うことを聞いてはいるが自分は自分独自の考えで自分のために動き、虎視眈々と漁夫の利、あるいはおこぼれを狙う」と思います(笑/って笑いごとかそれ
 なんにせよ、上司の権威と自分の立場と、口先三寸でうまく周囲を騙し誤魔化し煙に巻き、上にも下にも小ずるく立ち回るのはものすごくよく似ているのではないかと……。

 そんなわけで、書いていてものすごく楽しいスタスクさん。自分のマイナス面を投影していることもあるので、ただ単純に楽しいかというとそうでもないのですが、「こういうことってあるよね」といったものが少しだけリアルで、物語の中に組み込んだとき、客観視できたりもします。

ブラックアウトと私

 RUIN世界の彼はものすごく困った人なので一緒にいたらブチ切れそうですが、IF世界の温和で優しい癒し系のブラットさんは、傍にいてほしい人ナンバー1。誰にとってもそうかもしれませんけど。
 メッセージをくださったかたの中にも、実際にいたら恋に落ちそう、と書かれたかたがいらっしゃいます。実際にいたら、けっこう優柔不断だし頼りにならない面もあると思いますが(笑)、それでも、そのかたはリーダー的な立場の悩みに共感してくださったりもしているので、きっと日頃バリバリ働いたり、責任を負ったりしてらっしゃるのだと思います。
 だとしたら、一緒にいたらほっとしてリラックスできるブラットさんは、「必要」なタイプの人ですね。
 でも、甘えさせてくれるタイプではないなと思ってます。
 人の愚痴とかは聞くのが本当は嫌なんだと思います。愚痴というのは誰かの悪口だったりもするので、誰かが悪く言われているのも好きではないし、そんなふうに誰かを悪く言うその人を見ていてもちょっと心苦しいというか。
 それに、彼自身それほど許容量……積載量といったほうがいいでしょうか、背負えるものの重さはあまりない気がします。甘えられて頼られると、優しさから「なんとかしてあげなきゃ」と思うけど、本人それほど器用でもないし要領も良くないので、自分のことも相手のことも抱えていっぱいいっぱいになってそう。
 なので、彼と付き合うなら、同じ部屋で、別々のことしててもいいのでゆったりと過ごすとか、楽しいことをするのが一番ですね。愚痴は言ってもさらっと。大したことないよ、気にしなくていいよ、くらいの雰囲気にしておきましょう。
 って、なんでだか恋愛相談室?(笑

 なんにせよ、ブラットさんには「こういう人いたらなぁ」という理想が投影されてはいますが、本当にそんな人がいたら―――私にはもう「枕」です(笑)。なにもしてくれなくてもいいけど、気持ちよく心地良く、だらーっとさせてくれ!と。
 料理上手で家事も得意だし好きなんてサイコー! しかも、彼のいいところは他人が散らかしていても、それに目くじら立てないところです。「もう、仕方ないなぁ」と。ただしそれも、その人がなにか他のことに打ち込んでいるとか、なにか理由がないと単にだらしないと思われて敬遠されますが。
 あー、でも、彼のような温和で優しい人に呆れられたらもう後がない感じなので、本当の意味でリラックスは、私、できないかも……。ガーン。

フレンジーと私

 今から10〜15年ほど前の自分をかなり重ねたのが、IF世界のフレンジーかもしれません。だから欠点の上げかたが容赦ないキャラクター話のページ(笑
 実力はそこそこあります。それは事実で、突出したものではなく凡百ではあるけれど、その中ではけっこう高めのパフォーマンスを備えています。なので、普通の社会で普通に生きていく分には「デキる奴」の部類に入るんです。
 でも、実力以上に自分を大きく見せたがって虚勢を張ったり、他人の粗探しとその指摘を頭のよさと勘違いしていたり、思いやりに欠けて、とにかく「自分」のことしか考えられない。
 思いやりや気遣いは演出みたいなもので、たとえば、「いじめ」に合ってる人と友達になるのは、いじめを馬鹿馬鹿しいと本当に思うからではなくて、いじめは馬鹿馬鹿しいから俺は気にしないと周りにアピールするため。いじめに合ってる人のことをどれくらい思いやっているかと言えば、ゼロ。「フェアで優しい自分」という看板として利用してるだけみたいなもんですね。
 ひどいこと言ってますが、これは今の私がかつての私、中学生とかね、その頃の自分を評して言う言葉です。
 そういう、今の私にすれば「自分本位なガキ」なところを投影したのがフレンジー。スタスクが「今の私」をある程度投影している以上、フレンジーがスタスクと似た系なのは、なんとか分かっていただけるかもしれません。
 無視されたり馬鹿にされたりするのが嫌で、自己アピールが過剰だったり、臆病さの裏返しで強気に振る舞ってみたり。その中でフレンジーは、自分のしてることが「子供っぽい」と気付けないから子供。そんな感じに。

 そういう個性を「何故?」と振り返るとき、そこにあるのは、無条件に愛された記憶がないことなのかもしれないなと思ったりします。
 フレンジーは、A級ドローンという「オートボットたちによる創造物」として生まれて、道具のように使われる人生です。
 できないことは咎められるけど、できたことは当たり前にされる。
 そういう中で生きてきたら、そうそう優しくもおおらかにもなれっこないなと。他人のことを気遣う前に、自分の存在意義とか有用性を守ることが第一ですよ。さもなきゃ、自分がなんでここにいるのか分からなくなってしまう。

 フレンジーの話からは離れてしまいますが、そう考えると、逆に、他人のことを自然に、本当に気遣えるブラックアウトのようなタイプは、自分の存在意義に根本的なところで不安を抱えていない人なんだと思います。
 なにかができなくても、それでも大事にしてくれる人がいる。そのことを心の深いところでしっかりと感じとって刻みつけた人は、強い。無条件に存在する自分の価値を、信じるよりももっと深いところでしっかりと感得していれば、自分の価値やすごさを他人にアピールすることに必死にならなくてもいい。
 生まれてすぐに預けられた軍事訓練チームのリーダーが、ブラックアウトの「親」に当たるような人なのですが、その人が自分の抱えた訓練生たちに、しっかりと存在意義を植え付けてやったんでしょうね。
 バンブルビーみたいに、存在そのものが人と人との心をつなぐような形で望まれて生まれれば、それはもう無敵です。「いてくれたらそれでいい存在」なんて、最強ですよ。
 けどなにか、「役に立たなかったら意味がない」と感じたジャズとかラチェット、極端なところではバリケードやフレンジーなんかは、しんどい人生送ってます。

 ともあれ。
 さんざ欠点を設定しているフレンジーですが、その欠点というのがほぼリアルの私のかつて通った道をなぞっているので、私にはものすごく「分かる」キャラクターになってます。だから散々書きながらも、可愛いというのとは違いますが、「いいんだよ」と。
 その一方で、「こういう奴っている! なんかムカつくんだよ」とか「鼻もちならない」と思わせたくもあります。それは、書き手としての私の、キャラクター造形における説得力として、リアルなキャラクターを作れたということなので。
 でも、私自身は、過去の私の半身みたいなものなので、「いつかここから脱却しような」となまぬく〜く見守っているのでした。

サイバトロンの皆さまと私

 リアルじゃないなと。
 もうミもフタもないのですが、彼等はどうにもリアルじゃないイメージがつきまとってしまいます。
 バンブルビーとか「もし現実にこういう奴がいたら……」とて考えてもその次の瞬間には、「いるわけねーよ!」とノリツッコミ一発で話が終わります。
 彼やオプティマスのように、とにかく他人のことを優先して考え全力投球なんて、実際にいたとしても「胡散臭い」とか「気持ち悪い」と思うと思われます。正直、私のようなイキモノには、彼等の博愛主義的な思考回路はリアルには感じられません。
 ひどい話ですが、彼等はフィクションだから魅力的なのであって、だから私は、ディセプ側のキャラクターたちのほうが好きなのです。
 だから、あえて欠点をはっきりと設定し、「いい人かもしれないけどそれはそれで実はかなり困った奴等で、周りにいる連中の中には反感を持ってるのもいるし、ウゼェと思ってるのもいる」ことにしているのです。そしてやっと、彼等が少しリアルに感じられるのです。
 本人は素で立派なんでしょうが、それを自然と周囲にも強制してしまうオプとか。
 高潔すぎて友達になるのは遠慮したいラチェット先生とか。
 正義感と独善性、無邪気と無神経が紙一重のバンブルビーとか。
 アイアンハイドは元のイメージが清濁あるキャラクターなのでまだいいのですが(親を排除していいか発言とか)、他の連中はどうにも、なにか反動をつけないと動かしづらくてたまりません。
 あと、ジャズはスタスク、フレンジーの系列で、かつサイバトロンなのであまりヒドいキャラにできず、だから動かしづらい罠 orz 本当はフレンジーのキャラクターをそっくりそのままジャズに持ってきて、フレンジーはマッドなクソジジイにしたかったんですが、そこまでやると、それはもうジャズじゃない気もして断念したんだったりします。やっぱサイバトロンの連中は、根幹が「善良」でないと別物になってしまいます。(アイアンハイドは元ディセプですのでさほど善良でなくてもいいという)

 オプとビーは同系ですね。
 本人はかなり「いい人」だし、周りもそう思ってるけれど、たまにその「いい人」であることそのものが負担になったり、反感のもとになったりします。
 あと、IF世界のメガ様は偉大すぎるので、私ごときは視界に入るのも恐ろしくて近寄らない気が……。
 あと、ラチェットみたいな人が現実にいたら、私はまず近寄りません! だって怖い!
 なんのかんの言って、欠点だらけの私は、自他共に認めるはっきりした欠点のあるようなタイプでないと、とても一緒にはいられないなと思うのです。
 スタスクやアイアンハイドなら、もし彼等が本当にいて(私が設定したようなキャラクターとして)、出会うことができたら、話したい、また会いたいと思いますが、オプとかビーは遠くから見てるだけでいいです。

Friend

 ちょっとした空想で「楽しそう」とか「一緒にいたい」と思うキャラクターと、よくよく考えて、本当に存在したらと仮定したときに本当に一緒にいたい、友達になってほしいキャラクターは、案外違う気もします。
 たぶん、本当に出会ったとき、尊敬してすごいなと思って、それで一緒にいさせてもらいたいと思うのは、私の場合、一番がスタスクです。
 「能力はともかく、精神的な部分では自分でもまったく不可能とは言えない、欠点も込みでの理想形」なので当然と言えば当然かもしれませんが、自分に近いものを持ちつつ、自分よりずっと強いし(腕力体力でなくて)しっかりと生きているから。それでいて、メガ様とかみたいにはるか彼方の遠い人って感じではないから。メガ様に認められると重すぎてつらいので遠慮したいけれど、スタスクに「こいつけっこうやるな」と思ってもらえたら嬉しい。そんな感じです。

 って、自分で設定したキャラクター相手になにを語ってるのか。冷静に考えるとかなり滑稽ですね。ウヒ★

My Car or My Jet

 というところで最後に、自分の車、あるいは飛行機になってもらうなら誰がいいかなぁという妄想に辿り着きます。
 もちろん、一番傍にいたい人=乗りたい人になるかと思います。私は……マッハに耐えられればF-22に……。セイバートロンの技術で、Gとか感じないでいいようになってると思いたいところ。でも曲芸飛行はやめてください。

 そして、この項目の本題はそれではないのです。

 SSの一つとして、「貴方は」と語りかける二人称ものをちょっと考えているのです。
 つまり、主人公は「貴方」。
 その「貴方」をいくつかのパターンから設定します。うちのIF世界で設定するので、たとえば入り込んでしまった見学者だとか、秘密を知らされているスタッフの一人とか、あるいはエキストラ、それとも政府の関係者。別に街の住民でもいいですし、奴等が日本にいないとも限らないのでアメリカに住んでなくてもOK。
 この「貴方」の設定と、「貴方」が一番仲良くなりたい、あるいは自分を友達だと思ってほしい相手、あるいは少しでもいいから触れ合ってみたい相手を決めて、SSを書いたらどうなるかと。

 というわけで。
 できるかどうかは別の問題として、募集だけしていいですか?
 うちの個性ガチガチの連中ではアクが強すぎるので、もう少し表面的でライトな設定でいきますが、「貴方はどういう経緯で彼等と知り合い、どのオートボットと時間を共に過ごしたいですか? その際、どんな出来事を経験したいですか?」
 もちろん、私は「貴方」の細かいキャラクター設定(人となり)を知らないので、そのキャラクターと友達になりたい理由、自分がどういうように感じ、行動するからそうなのかを滔々と語ってくださったほうが細かく書けます。
 が、それはそれではづかちぃこともあるので、キャラクターはステレオタイプにし、とにかく「貴方は」と書かれるモノガタリの中で、「貴方」の好きなキャラクターと一日デートなりなんなり、していただこうかと。
 ただし、繰り返しますが、書けるとは限りません。はい。それから、私の書く「貴方」は貴方自身のようには行動しないはずです。
 ただもし書ければ、それは私が書いた「貴方」のためのモノガタリには違いありません。
 面白そうだから、書けたらラッキーくらいで希望を伝えてみよう、と思われたかたがおられましたら、どうぞメールにてご連絡ください。

Sample

 大変に短いのですが、だいたいこんな感じ、というのをサンプルとしてちょろっと書いておきます。なお、別に「私」として書いてもいいようなものですが、あえて「貴方」にしてみるのは面白半分です。
 以下の話になる「設定」がどんなものかというと、「バンブルビーと会いたい。短い時間でもいいので一緒にいて、ちょっとほっとしたり、慰められたりしたらいい・失恋して、出会って元気になるとか」というのだと、こんな感じに。あえて男女ははっきりさせてません。

 

【Heart Repair】

 店を出ると、雨が降っていた。赤茶色の煉瓦を模して造られた歩道には、落ちてくる雨粒が次々と波紋を生んでいる。
 店に入ったときには曇っていただけなのに、ついてない。
 貴方は溜め息をついた。
 店の人に傘を貸してほしいと言えば、貸してもらえるだろう。それとも、タクシーを呼んで帰ることもできる。もちろんお金はかかるし、それは貴方にとって決して安くはない。
 貴方はそのまま雨の歩道を歩き出した。それは傘を貸してほしいと言いづらかったからではないし、タクシー代を考えたからではない。濡れて歩いてみたかったからだ。
 馬鹿馬鹿しいとは思う。演出過剰だとも思う。けれど、そんな馬鹿馬鹿しい自己演出をする自分の、馬鹿さ加減にでも浸りたい気分だったのだ。
「だから、そういうのが嫌だって言ってるんだけど? ウザいよ」
 さっきあの店で、恋人に言われた言葉がまだ耳の中に残っている。
 急に別れたいと言い出すから、なんで、どうしてと尋ねたらそう言われた。
 貴方はそれきりなにも言えなくなって、「もう連絡しないで。出ないから」と言って伝票を掴んで出ていく恋人を見送りもせず、テーブルを見つめていた。
 頭の中で、鐘の音が長く長く鳴り響いているようだった。その音が少し弱まると、なにがダメだったんだろうと疑問が浮かんできた。それと同時に涙も湧きあがってきて、貴方は泣きだす前に席を立ったのだ。
 そして外に出たら、雨が降っていた。
 貴方は傘を持っていなかったし、ここから自宅まではけっこう距離もあったが、そのまま歩きだした。
 俯いてしょんぼりと歩くのは、いかにも「何事かありました」ふうで嫌だったので、無理して平然と歩いた。
 洒落た店の並ぶ表通りから角を一つ折れ、少し行くと道は細くなり、民家が立ち並ぶ。平日の昼下がりには通行人も少なく、貴方はそこでようやく、顔を俯けた。でも泣くのは癪だった。
 俯いたまま歩いて行くと、電信柱の傍、高いブロック塀の傍に、ごそごそと動く段ボール箱があった。たぶん、捨て犬か捨て猫だろう。
 貴方は素通りすることを決める。
 気分が普通なら、傍に寄って蓋をあけるくらいのことはしただろう。けれど今は、今の自分が捨て犬だか捨て猫だかに構うのは、演出過剰な気がしてしまったのだ。恋人に捨てられて、捨て犬だかを拾うなんていうのは、惨めさの演出としては効果的すぎる。貴方はそう感じて、素通りすることにした。
 そのときだ。
 電信柱の少し先、街を灰色に染める雨のカーテンの向こうから、あきれるほど明るいブライト・イエローをした車が動き出し、こちらにのろのろと近付いてきた。
 場違いにも程がある。灰色の壁に灰色のアスファルト、アイボリーや白の民家の壁は雨の中、おとなしく灰色に沈んでいるのに、この馬鹿げているほど能天気な黄色はなんなのか。持ち主の気が知れない。
 見ているだけで恥ずかしいので、貴方は決して運転手と顔を合わせないようにしてすれ違おうとした。
 しかしそのとき貴方のすぐ前で、近付いてきた黄色い車のドアが開いた。誰かが降りてくるらしい。それは電信柱のすぐ傍なので、能天気な運転手か同乗者が、可哀想な捨て犬か捨て猫を拾うことにしたのだろうと貴方は思う。
 けれどドアから降りてくる足は見えず、代わりにスピーカーから若い男の声がした。
『風邪ひくよ』
 あまりにタイムリーすぎたので、貴方は思わず顔を上げて車のほうを向いた。
 そこには、誰もいなかった。
 空白の運転席と助手席、後部座席。
 気のせいだと思うには、スピーカーからの声ははっきりしていたし、車のドアはこんなふうに勝手にあいたりは決してしないと貴方は知っている。
 ぞっとして後ずさると、黄色い車は急にその形を変え始めた。
 そしてものの数秒で、膝をついてできるだけ小さくうずくまる大きなロボットになり、そして次の数秒でまた元の車に戻っていった。
『乗ってかないかい? そこにいる、小さな生き物と一緒にさ』
 ―――あまりにも。
 あまりにも荒唐無稽で、突拍子もなく、異常で、しかし、ゆっくりとした口調で穏やかに語りかけてくる声は、貴方に段ボールを抱え上げさせ、そして、濡れた体を無遠慮に助手席に収める力を持っていた。
『熱かったら、言って』
 スピーカーからの声とともに、エアコンが勝手に動いて、温風が吹き出してきた。それはやはり勝手に向きと強度を変え、貴方の顔には直接当たらないよう、少し強めの風を送り出す。
 たぶん、小さな密室に隔離されたからだ。貴方は急に涙をこらえきれなくなって、歯を食いしばると段ボールを抱えこんだ。途端、箱の中からミャアと小さな声がした。出してほしいとせがむように、箱を引っ掻く爪の音がする。
 貴方は震えだした手で箱を開け、茶色の縞模様をした小さなネコを取り出す。
『それ、ネコっていうんだろ?』
 スピーカーから声がして、なんとなく運転席を見ると、見知らぬ若い男がそこにいた。しかしその姿は、間近で見れば光の像だと分かる。顔つきも人形のようで、現実味がない。見ていると不気味に思えたが、視線をネコに戻すとともに
『良かったら、送るよ』
 そんな声だけを聞いていると、スピーカーから出ている音声だというのに、何故かほっとした。
 貴方はこの不思議な車、それともロボット、今はとにかく車に自宅の住所を告げた。車は小さな電子音を少し鳴らすと、『了解』と言って走りだした。運転席の若い男はハンドルを握っているが、どう見てもそれは、ハンドルが勝手に動くのに合わせて光の像が手を傾けているだけだ。
 なんにせよ、貴方はこの不思議な車に送られて自宅についた。始末に困った段ボールの中にネコを戻し、それを抱えて軒先に入ると、
『風邪、ひかないようにね。それから、俺のこと、人に言わないほうがいいかも。頭がおかしいって思われる』
 小さな笑い声を残して、黄色い車は走りだし、ウインクのようにテールランプを瞬かせた。
 貴方は慌てて声をかける。
「あの、座席濡らしてごめん! それから、送ってくれてありがとう!」
 すると、テールランプがまた二度、瞬いた。
 涙はいつの間にか止まっていたし、あまりの出来事に、フラれたこともどうでもよくなっていた。
 そう、世の中にはこんな大変なこともあるのだから、気の合わない恋人と別れたくらい、実はものすごく些細なことなのかもしれない。あの黄色い車のように(不自然すぎる存在なのに)なんとも自然に傍にいる、そんな誰かを見つけるほうが、自分にとっても幸せなのではないだろうか。なにも、あんなふうに容赦なく自分を傷つける相手と付き合う必要なんかない。貴方はそんなふうに考えた。
 貴方は拾ったネコを抱えて玄関をくぐる。頭はもう、あたたかい風呂のことと、この子猫をどうするかで一杯だった。

 

(終)