Discord and Bonds

 

 宇宙は広い。
 その広さについては誰よりも分かっているつもりでいた。スタースクリームは、最新の航行技術をもってしても片道三百年もかかるほど遠い星へ出掛けたこともあるし、二百年ほどの間座標を見失って漂流したこともある。それでも宇宙に果てはなく、また、どこかへ行けば果てがあるのではと思えることもなかった。
 だが、と彼は思う。
 その果てしなさをこれほど重苦しく感じたことはなかった。理由はただ一つ、船に積み込んだエネルギーが尽きかけているからだった。
 ネメシス号の保全を最優先しようとすると、全員が100%の活動状態を維持できるのはあと十日、セイバートロンの時間感覚で十日ほどになる。この間にどこかからエネルゴン・マテリアルを調達できなければ、船の予備エネルギーに手をつけるしかない。そうすれば更に十日程度の猶予が生まれるかわりに、船のトラブルで全員が危機に陥る可能性も大きく上がる。
 限られた資源、それがなければ維持のできない有限の命。それに比べて宇宙ははるかに広く、果てしない。その広大無辺の空間の中から、たった一つ、たった一人を探し出すというのは、どれほど無茶なことなのか……。
 しかも、かつてのエネルギー探索の旅には「帰る」という道があった。だが今の自分たちには帰る場所すらないのだ。
 望むのは、オールスパークを見つけ、再び種の繁栄を取り戻すこと。それから、ディセプティコンの指導者であるメガトロンを見つけ出すこと。これはどちらかが叶えば、もう一方が叶う確率も上がるだろう。拠点とできる場所とオールスパークさえあれば、あらゆる物事を大規模に、安定して進めることができるし、メガトロンの存在はそれだけで皆の支えになる。
 しかしそれが儚い望みであることは、スタースクリームも認めざるをえなかった。千年どころか万年も旅してきて、今までに一度でも、影のようなものでも見出せたかと言えば、答えはノーなのだ。
 いっそ、と考える。いつだったか、たしかフレンジーが提案したように、オールスパークの探査は諦めて、自分たちの寿命が尽きるまで、エネルギーの豊富な星で生きるという道もある。
 数は増えず、なにかあれば減るのみで、いつかは必ず滅ぶことになるが、あてのない希望よりも確かに手に入る安寧を選ぶというのも、悪くはない。
 悪くはないが、それで本当にいいのだろうか。
 そこまで考えて、スタースクリームはかつて行った不愉快な論争のことを思い出し、あれこれと考えるのはやめようと頭を振った。
 思い悩むより動くことのほうが大切だ。それもまた気の重いことだが、―――反発する者は必ず出るし、上手くいかなければ責められると分かっているが、動かなければなにも手に入らない。なにもせずにいてなにも得られずなにも起こらないよりは、なにかしたほうがまだマシというものだろう。なにもしなければ遠からず全滅すると分かっているのだから。
 今、ネメシス号のメインモニターには、青白い太陽の光を受け、赤褐色に輝く星が映し出されている。スタースクリームは単身、あの星に降りることを決意した。
 あの岩石質の惑星にエネルゴン・マテリアルがあるかどうかは不明だ。地上は磁気嵐に覆われて通信も電子探査もままならず、送り出した偵察ドローンとは交信もできない。降りるには甚大な危険が伴うし、徒労に終わる可能性もある。リミットがもっと長ければ、決して選ばない星。だがもう時間がない。この周辺にあるのはエネルギーとして精製できる物質のない星ばかりで、唯一「ないと判明していない」のがこの惑星なのだ。
 動くことだ。そしてその結果手に入ったものが成果だ。それが大きいのか小さいのかは、考えても仕方がない。ましてや、手に入れる前に懸念するのは無駄である。
「サウンドウェーブ。ミーティングルームに全員集めてくれ」
 スタースクリームは無線で指示を出し、一足早くそこへ向かった。

 これがベストだという自信はなかった。
 それでも、様々なことを考え合わせた結論を皆に伝える。
 今からあの星に自分が一人で降下すること。その間他の者は衛星に着陸させたネメシス号で待機し、通信の維持と周囲の警戒を行うこと。もしエネルゴン・マテリアルが手に入ったとして、その安全性まで確認している余裕はないと考えられるので、ネメシス号の隔離ブロックの整備を行っておくこと。等々。
「異論はないか、と言いたいところだが、今は長々と討議している時間もない。別の提案があるなら、そのつもりでしてくれ」
「異論なんかないさ、スタースクリーム。要するに俺たちは足手まといだってことだろ。ごもっとも。役に立ったためしもない。はん。どっちにしたって可能性なんかないんだ。仰せのままに、さ」
 デッドエンドの発言はたいがいが陰気で自虐的だが、今はいっそうそれが気に障る。自分一人のことならともかく、全員の運命がかかっていることを、簡単に暗黒に閉ざす神経が知れない。だが今は、その発言を声高に非難する者もない。つまりは全員、デッドエンドの悲観的な意見を否定できないということなのだろう。
「誰がそんなことを言った。第一それが時間を無駄にしない発言か」
「今のあんたの台詞も時間の浪費だろ。スルーしろよ、指揮官殿」
 まったくそのとおりだと、今度こそスタースクリームは返事もせず他の者を見渡す。
「あの星でエネルギーが手に入るって確証はねえんだろう? だったら、とっとと他の星を探したほうがいいんじゃねぇのか?」
 ボーンクラッシャーの発言に、話を聞いていないのかとスタースクリームの理性が一瞬切れかけたが、その前に
「ここから五日程度で辿り着ける範囲には、充分なエネルゴン・マテリアルを含む星がないことは探査済みだ。そのことは先ほどスタースクリームが言っている」
 サウンドウェーブが割って入った。かろうじて怒鳴らずに済んで、スタースクリームは「他には」と促す。
「おまえの好きにしろよ。おまえが指揮官だ。上手くいこうがいくまいが、どうせ最後には『手に入ったものはある』とか言うんだろう。もういい加減、聞き飽きたがな」
「この……ッ」
 思わず殴りかかろうとして、横からブラックアウトに止められた。
「サンダークラッカー、時間を無駄にするな。他の者も、口論を開始するのが目的と思われる発言を繰り返すなら、退去してもらう」
 サウンドウェーブに淡々と言われ、サンダークラッカーは「勝手にしろよ」と言い捨ててミーティングルームを出て行った。
「悪いが、俺たちも行かせてもらう。おまえを納得させられるようなご大層な意見なんてないし、そんなもの俺たちに期待してないだろう? 決まったことだけ言ってくれ。呼び集めること自体、時間の無駄だ」
「スラスト!」
 行こうぜ、とダージ、ラムジェットを促してスラストが出て行った。
 束の間、破りがたい沈黙が室内を支配する。
 もう勝手にしろ。そう怒鳴りつけたい気持ちをスタースクリームはなんとか胸の内に押し込める。
 今までにもこんなふうに分裂し、去る者たちがいた。納得がいかず、従うのが嫌になり、半数くらいは彼等自身の意思で別行動を選んだ。それを思えば、今の今まで我慢してついてきたスラストやサンダークラッカーは、はるかに忍耐強く寛容なのだ。
 今自分たちの置かれている切迫した状況は、いくつかの判断と対処ミスから陥ったものに違いない。そしてその指揮をしていたのは自分だ。彼等に信頼されるだけの結果を出せていないから、こうなったに過ぎない。彼等を責めるのは、筋違いなのだろう。
 沸き上がってくる感情を押しやって、スタースクリームはできるだけ何事もないように話すことを試みる。
「俺には俺の考えがあるが、それを見直すのに役立つ有効な意見は、いつだって歓迎している。今回は、どうなんだ。もういい加減まともな議論がしたい。いいか? 俺が一人で行くと言っているのは、探査に慣れていない者の面倒まで見ながら進むことがどれほど困難か、もうよく知っているからだ。効率の低下とリスクについて検討して、一人で行ったほうが探索できる範囲は広がると判断した。それから、ネメシス号を失うわけにはいかない以上、防衛と維持のためにまとまった人数を残す必要もある。他の星を探さない理由はサウンドウェーブが改めて言ったとおりだ。移動して探索範囲を広げた、その先にマテリアルの存在する星があったとしても、手に入れるのにどれくらいかかるかも分からん。どちらにせよ不明なことが多く見込みも立てられないなら、この星に賭ける。以上、俺の判断に不足や不備―――不服や不満じゃない。なにか至らないところや見落としがあるなら、指摘してくれ。それがないなら、俺の言うとおりにしてもらう。どうなんだ」
 今度は誰も答える者がなかった。異論がないというより、議論したくない、うんざりしているといった様子の者が大半と、その雰囲気そのものに困惑する者、嫌けがさしている者ばかりだ。最悪の雰囲気である。早く解散しろといった気配が濃厚に漂っている。
 スタースクリームはあえて無神経に、これを異議なしと見なすことにした。
「意見がないなら、俺の指示に従ってもらう」
 しかし、完全に感情を殺すことには成功しなかった。
 言わなくてもいいこと、言わないほうがいいことがつい口をつく。
「もっとも、どうしても嫌だと言うなら、好きにしろ。―――俺の言うとおりにしたせいで死んだ奴もいるんだ。俺に止める権利なんか」
 そこまで言って我に返り、なにを言ってるんだと悔やんだ。
「もういい、解散だ」
 これ以上誰かといると、ますます余計なことを零しそうで、スタースクリームは足早に部屋を出た。

 探査の準備を整えながら、スタースクリームはマイナスに沈みそうになる思考を制御しようと試みる。
 腹も立つし傷ついてもいるが、今から行うことに、そういった気持ちの揺れは百害あって一利ない。余計なことは思考回路から追い出して、すべきことだけを意識に残そうと努力する。
 なすべきは、エネルゴン・マテリアルを探しだし、なんらかの手段でネメシス号に持ち帰ることだ。そこにどんな困難と危険があるかは知れないが、それはその場その場で、これまでの経験と知識、そして瞬間の閃きを総動員して対処する。
 そうして無事にマテリアルを持ち帰れば、こんないさかいなど小さなものになる。結果が出れば誰も文句は言わないだろう。
 ―――もし結果につながらなければ、愚痴や文句を言う者も聞く者もいなくなるだけのこと。
 一抹の絶望感を振り払い、スタースクリームは携行ユニットの最終点検に取り掛かった。
 それが済み、自分のボディの総スキャンを行って不具合のないことを確かめる。
 そのとき、ドックのドアが開くと足音がした。
 誰かが文句でも言いに来たのか、それとも俺たちは俺たちでやると別れの言葉でも告げに来たのかと思うと、振り返る気分になれない。
「スタースクリーム。準備中すまんが、一つだけ、言っておきたいことがあってな」
 声はブラックアウトのもので、思わずスタースクリームは振り返った。
 珍しい。ブラックアウトが文句をつけたり楯突いたりすることがあるとは。つまり、それくらい俺の判断には納得がいかないし、信用もできないということかと自嘲的な気分になった。
 だが、それは気の早い勘違いだった。
「その」
 と言いづらそうにブラックアウトは少し躊躇い、思いきって続ける。
「俺の気のせいなら、すまん。だがもしおまえがなにか気にしてるんだったら、……これまでのことで、うまくいかなかったこととか、犠牲が出たことを気にしていて、自分のせいだと思ってるなら、言っておきたくてな。これはあくまでも俺の個人的な意見だが、ベストを尽くしても犠牲が出ることはあるだろうし、おまえの判断が間違っていて、そのせいで死ななくていい誰かが死んだことがあったとしてもだ。それでも、今ここにこれだけの人数が残っているのはおまえのおかげで、もし他の誰かが指揮していたら、もっと早い段階で全滅している気がするんだよ。皆には悪いが、正直なところ、そう思う」
「ブラックアウト」
「スタースクリーム。分かってくれ。みんな疲れてるし、不安なんだ。あと十日ほどしかエネルギーがもたないなんて、これまでにもなかったことだからな。だからナーバスになって、攻撃的にもなるんだろう。少し落ち着けば、言いすぎたって後悔することになる。だから、あまり気にしないほうがいい」
 彼はわざわざそれを言いに来たらしかった。
(こいつは……)
 好戦的な連中から、腰ぬけだ臆病だと罵られることもあるが、それでも怒りもせず、戦うのは嫌いなんだから実際にそうなんだろう、などと言っている。だが、スラストたちが不安に駆られて攻撃的になっているというなら、その中で誰に腹を立てるでもなく、他人のことを気遣う強さはいったいどこから来るものなのか。
 それとも、他人のことを思えるからこそ、自分一人の不安や恐怖に囚われないのかもしれない。
「余計なことだったか?」
「いや。わざわざすまん。気が楽になった」
「そうか。良かった。ただ、ついでってわけじゃないんだが、一つだけ提案していいか。あの場では考えがまとまらなくて、言い出せなくてな」
「ああ、もちろん。なんだ?」
「一人でいいから、誰か連れて行ってくれ。さもないと危険だ。おまえだって疲れてるし、ナーバスになってるはずだ。立場上それを出せないだけで、……立場上と言うなら、誰よりも負荷は大きいんだ。それともまさか、平気だとでも?」
「……まさか。そうだな、かなり参ってる。否定はせん。だが、だからこそ巻き込みたくない。俺のミスでなにかあったとき、自分一人ならなんとかできても、他の誰かのことまで気が回るとは限らん」
「一人でいたからこそミスすることもあるし、助からないことだってある。その可能性は半々、いや、どっちになるか、今の段階で分かるのか?」
「それは……」
「バリケードを連れて行ってくれ」
「バリケード!?」
 出てきた名前に、スタースクリームは思わず声のトーンを上げていた。よりにもよって、あの短気で荒っぽい上に刺々しいのを連れていけとは。
「今一番冷静で状況に左右されていないのはおそらくバリケードだ。それに彼なら、好奇心や気まぐれで余計なことをすることもないし、パニックを起こすこともないだろう。役には立っても足手まといにはならないはずだ」
「しかし」
「スタースクリーム。バリケードのことが苦手なのは分かる。だがそれこそ感情的な判断だ。あいつはたしかに、ちょっと困った態度をとることはあるが、別におまえの敵ってわけでもない」
「それは分かってるが……」
「俺がここに来ようと思ったのも、そもそもはバリケードの言ったことを聞いたからなんだ。それまでは、なにか言いたいこと、言わなきゃいけないことがあるとは思っても、なにを言えばいいのか分からなかった」
「あいつの言ったこと? なにを言ったんだ」
「ああ。おまえが出て行った後で、あれこれ言う奴もいた。そいつらに向かって、やかましいとか言い出したのが最初で、例によってまた喧嘩になって」
「またか」
「でもそのときに、『そう言うなら代わりに全部おまえが背負ってみろ。誰かが死んだのもエネルギーが足りないのもおまえが間違ったからだと言われる。意見をくれと言えば難癖だけつけられる。協力が得られず一人で決めれば何様だと言われる。おまえがそれに耐えられるのか』、ってな。聞いて、はっとしたよ。そういえばおまえが全部、責任とか結果を背負ってるんだよな」
「それは、……まあ、仕方ないだろう。それが俺の役目だ。それにしても、あいつがそんなことを? 信じられんな」
 改まって畏まられても居心地が悪い。スタースクリームが話をバリケードに戻すと、ブラックアウトは真面目くさった顔で頷いた。
「嘘じゃない。おかげで、あの場に残ってた連中はおとなしくなった。だから、な。悪い人選じゃないはずだ」
「―――分かった。連れて行く。未だに信じられんが、それは別として、変な厄介事を増やすことはないだろうってのには同意できる」
「ああ、そうしてくれ。そのほうが俺も安心できる」
 スタースクリームはインターコムでバリケードを呼び出す。言語を利用しない電子通信なので、通信は一瞬である。もっとも、実際に会話したとしても「おまえも来い」「分かった」だけなのだが。
「じゃあ、ブラックアウト、すまんが後のことは頼む。それから、もし誰かネメシス号を離れるという奴がいたら、確認してやってくれ。それが最善だと本当に自分で信じられるのかどうか、これからどうするかのプランはあるのか。聞いておまえが納得できるなら、あるいは止められないと思うなら、そのときは行かせればいい。自分の未来を選ぶ権利は誰にでもあるし、それで望んだ未来を得られるなら、止めるほうが馬鹿だ」
「ああ、分かった。そっちはとにかく、気をつけてな。もしマテリアルが見つからなくても」
「ストップ。ネガティブなIFは、言わないほうがいい。五日探して、見つけられなかったときに初めて、見つからなかった、さてじゃあ次はと言うだけだ」
「スタースクリーム」
 こんなものは空元気、それとも虚勢だろう。手に入ったものを大事にしろ、手に入らなかったもののことを思い煩うな、そんな師の教えも、言い訳と言われればそれまでだ。だが、悲嘆や後悔が未来を切り開くことはない。そんな無益な感情におぼれないためには、言い訳も空元気も必要なものなのだ。
(……それで本当に周りを大丈夫な気にさせるには、俺はまだまだってわけか)
「無理があるのは分かってる。だから、もう先のことを考えるのはよそう。いいな」
「ああ」
 ブラックアウトが答えたのに前後して、バリケードがドックに入ってきた。足も止めずにスタースクリームとブラックアウトの脇を抜け、後部ハッチへ近付く。
「行くぞ」
「了解。って、だからどっちが上官なのか少しは考えて語尾を選べって言ってるだろうが」
「ふん」
 ブラックアウトが小さく笑って、スタースクリームは彼を睨む。
 その隙にバリケードはハッチの開閉パネルに触れ、スライドしはじめたシャッターの前で、惑星突入用にプロテクトフォームへと変形しはじめる。
 放っておくとこのまま出ていきそうなので、スタースクリームは急いで自分もトランスフォームすることにした。短距離ながら宇宙航行ができるスタースクリームの場合、宇宙空間に適したジェット形態がある。
「この馬鹿。俺が運んでやる。勝手に飛び降りるんじゃないぞ」
「それならさっさとしろ」
「機能点検はしたのか。携行武器は。通信ユニットは予備も持つんだぞ。それから」
「うるさい」
「だから一人で行くなって言ってるだろう!? ブラックアウト、後は頼んだぞ!」
 やはり勝手に離艦してしまったバリケードを追って、スタースクリームはバーナーに点火、宇宙空間に飛び出して小柄な仲間をハンガーフックに捕まえた。これでは先が思いやられるが、不思議と、探索の途中ではこんな勝手な真似はしないだろうという確信もある。
『悪くない、いや、いいコンビじゃないか、スタースクリーム』
 遠ざかるネメシス号から、苦笑気味にブラックアウトからの通信が入った。
 そう、仲がいいわけではないが、後ろ向きになりかねない今は、バリケードという冷徹な相棒は悪くない。
 ドックに入ったときの重く憂鬱な気分を抜け出して、スタースクリームは赤い惑星へと機首を下げ、突入していった。

 

 

(続く)


 

 書きたかったシーンsです。
 責任を感じながら、後ろ向きになるわけにはいかなくて自分を鼓舞しつつ、本当はかなり疲れてるスタースクリームと、そういう仲間がいるときに精神的に支えてくれるブラックアウト。それから、感情的な好悪感に関係なく動くバリケード。
 まとめて突っ込んでいるので、かなり説明的なSSになってますが、もういつものことだし! こんなのいちいち物語として表現してたら全何十話ですか。
 物語として書こうとしたら、スタスクの判断に間違いがあって犠牲が出た話が必要ですし、そこで彼がどう行動したかを、「こう思った」とは書かずに、仕草とか台詞だけで書くべきです。それこそが本物の小説。
 そういうものの積み重ねの後なら、このSSの長さは半分以下になることでしょう。
 解説的で面白いかどうかは微妙ですが、そこは皆さまの空想力とイメージ力と読解力によって、なんとか乗り越えていただければと……(←書き手としてどうよその発想

 ここからはいつものごとく余談です。
 指揮官って立場はものすごくつらいと思うのですよ。メガトロンやオプティマスのようなカリスマを備え、かつ実力もあるひとならともかく、ただ有能なだけでは部下はまとまりません。
 逆に言えば、ナンバー1はバカでも務まります。ひとを惹きつけ従わせる引力、磁力のようなものさえあれば。その際には有能なナンバー2は必須ですけど。
 メガトロンのようなカリスマも実力も、そして実績も備えたナンバー1の後を受け持つのは、相当しんどいことでしょう。しかもそれが、メガトロンでさえ経験したことのないようなあてのない探索行では。
 そういう中で最後まで行動を共にした映画出演組は、思うよりはるかに強い絆があるのかもしれません。このあたり、IF話では誰がいつ地球に来ているかとか書いていないので、映画本編とごっちゃになるかもしれませんが、あまり気にしないでください。いずれ書くかもしれません。

 ブラックアウトはいつも、こんなふうに仲間の間を取り持ってると思われます。いい加減にしろ、とか声を荒げることもできないけど、まあ待てよ、と。
 彼が自分たちみんなを心配しているのをよく知っているので、そう言われると全員、なかなか反抗的な態度はとりにくくて、きちんと話を聞くことに。
 バリケードにスタスクを弁護する気があったかどうかは不明です。彼は思ったことを言うだけだし。弁護する気なんてさらさらないけど、好き勝手に言うだけ言う連中にムカついたから言っただけでしょう。重荷を背負ってることは知っていても助けてもやらないし特に協力的でもないあたりがバリケードです。おまえにはおまえの役目、俺には俺の役目ってタイプですので。
 サンダークラッカーたちにはちょっとワルい役を振ってしまいましたが、アニメ版でも出番の多い名前を使うのが妥当かなと。さすがに、ここで敵意をあらわにして突っかかる役を映画組に振るのはちょっと。もしかするとこのまま離反して行方知れずになるかもしれないし……。ジェットロンファンの人ごめんなさいね。

 さて、この後は惑星上での物語です。
 あまり細かな冒険の過程は書けませんが、バリケードの生まれについてと、それに絡んだ彼の存在原理、それに対するスタースクリームといったものでも書いてみます。ぶっちゃけ、冒険譚というより、この二人のキャラ背景みたいなものがメインです。
 あとは、エネルギーが手に入るのかどうかのシーンくらいは、ちゃんと。……手に入らなければ終わりなので結果は明らかなのですが。