カードの覚え方

 これまたやっぱり私見ですが、カードの意味を身につけるために、良さげな方法でも。


【絵をストーリーにする】

魔術師 たぶんこれが一番スタンダードです。
 ここではとりあえずウェイト版を例に使って説明しますね。
 魔術師のカードを例にして、「ストーリー」を描いてみましょうか。我流ですので、他のかたの解釈とかと違っててもそこはご勘弁を。

 まず、この青年が「魔術師」と呼ばれるのは間違いないのですが、それ以外の情報って、なにもありませんね。物語を作るなら、この青年の「キャラクター」も固めないといけません。
 私の場合、まず、「彼は今、初めて大いなる魔術を執り行おうとしている。これは今まさにそうする緊張のシーンだ」と設定します。 さて、この一大イベントに辿り着くまで、彼はどんな修行をしてきたのでしょうか。そして、今の心境は?
 まず、大魔術をやろうというのですから、才能や素質には恵まれていたでしょう。この青年の今の顔に、不安や恐れがないのは分かりますか? ここはあえて、堂々たる自信を持ってこの魔術に挑もうとしている、と見てください。さて、その自信って、ただ天性の才能から来るだけのものなのでしょうか?
 私は、違うと思います。彼はここまでの間、しっかりと勉強してきました。知識を身につけ、技術を磨き、日々熱心に学んできたのです。彼は才能に恵まれていたかもしれませんが、魔術に情熱を感じて、一心にこの道を歩いて来ました。やるだけのことはやってきた、という確かな裏付けがある自信です。
 ところで、彼が行おうとしているのは、未だかつて誰も成功した人がない大魔術です。これまでの皆はことごとく失敗したか、未完でした。それを成功に導くためには、既存の知識をただなぞるだけではなりません。それでは「今までと同じ結果」にしかなりませんから。直観や閃き、インスピレーションがあり、それが正しければこそ、成功する魔術なのです。
 彼は今、どんな気持ちでいるのでしょう。ワクワクしてるでしょうか。ドキドキもしてるでしょうけど、恐れはありません。必ず成功させるという強い信念があります。
 もちろん、失敗するかもしれません。それでもきっと彼は、次に成功すればいいと、この失敗からも学んで進み続けるでしょう。その強いエネルギー尽きることのない好奇心や情熱が、彼を絶えず前進させ、向上させるのです。

 ―――さて、シンボルがどんな意味を表しているのか、とかは全部ほったらかして、単なるキャラクターの説明をしてみました。このシーンに臨む魔術師の青年が、どんな過去を経たどんな人物か、そして今はどんな気持ちか。
 強調した部分が、このカードの意味として出てきやすいものです。もっとこまかくなると「情報」だのなんだのといった意味も加わりますけど、そういったものも、物語の一部として組み込んでいけば覚えやすいはずです。


【なんでもかんでもイメージを付け加えない】

 イメージでストーリーやキャラクターを作っていくのが、カードを覚えるのには一番いいと思いますが、注意点がこれ。
 他のカードに強く割り振られている意味は、勝手に入れないように気をつけましょう。(私もしょせん趣味での研究レベル、浅いものなので、厳密に体系化、調整はしていませんのであしからず)
 魔術師のカードは「知識」は意味するかもしれませんが、「知恵」までは到達していません。「知恵」は法皇、隠者といったあたりのほうがふさわしいキーワードです。
 女教皇が持っているものも、「知恵」というよりは「知識」ですね。魔術師のそれは明白で体系化され、学べる知識です。しかし女教皇のものは秘められた知識。隠されたもの。
 法皇の知恵は人に伝え人をそれに従って動かすようなものですが、隠者の知恵はまず自らの内にあるものではないかと思っています。

 私のこういった考え方は、特になにで読んだというより、自分で「似ているけど、違う。違うとしたら、どっちがどうなんだろう?」と自分なりに考えて、こうかなと思っているものです。
 そんなふうに自分であれこれ推察することで、自分にとってのカードの確かな意味が生まれてくると思います。それが人と多少ズレていても、問題はないかと思います。


【ヌーメラルカード(数札)はストーリー仕立てで覚える】

 さて、40枚もある数札。これはどうやって覚えるのか?
 エースは、それぞれのスートの「原理」みたいなもの。エネルギーとか、思考とかいった観念的なものなので、四元素などと絡めて記憶するしかないかも。
 しかし2〜10のカードに描かれているのは「シーン」です。
 「意味を覚えること」に縛られず、まずは絵をしっかりと見てみましょう
 「タロット教科書 第1巻」に載っていて、心底「これはいいな」と思ったエクササイズがありました。それは、カードの意味についてなにも解説していない段階で、「ワンドのスートの中で、"勝利"を表すカードはどれですか?」といった問い掛けをし、それに答えさせること。
 ワンドのカードを見て、当たり外れはともかく、これかなと思うカードを抜き出してみる。たぶん、たいがい当たると思います。
 カードの絵をちゃんとよく見れば、実はイメージ、意味はそこに表れているってことです。中に分かりづらいものもあるので、それには補足説明が必要なだけ。
 魔術師のところでストーリーを作ったのと同じように、絵を見て、そこから「どんなシーンなんだろうか?」と想像し、空想を広げてみればいいのです。それを、脇道に外れすぎないように調整すればOK。

 更に言えば、2から10までつなげて、物語っぽくしてみるのもオススメですしよくとられている手法です。
 たとえばワンド。
 2は裕福な身なりの男性が、地球儀を片手に海を見ています。彼は、そうですね、たとえばマルコ・ポーロのような冒険家&商人。大きな旅で財をなして、立派な砦を作るほどになってます。でも、海を見てると冒険したくなるんですよね。でも、築いた地位や財産は、おしいというか、それもやはり大切なもの。どっちをとろうか。でも彼はもう、自由なほうの棒を握ってます。砦に固定されたものではなく。
 3は旅姿。保身や安定ではなく冒険をとって旅立ってきたのです。カードには描かれていませんが、一人でない、背後に自分の商隊を率いていると想像してください。旅に出て、いよいよ海に辿り着きました。黄金の空は希望に満ちて、海は穏やかです。仲間と力を合わせれば、困難も乗り越えることができるでしょう。彼には責任がありますが、心強い仲間もいます。
 4は、旅の途中。海をわたってだいぶ来た内陸で、通りかかったお城の敷地で収穫祭をしていました。そこの娘さんたちが商隊に気付いて、「貴方方も一緒に祝いませんか? 一休みしていかれてはどうですか?」と招いていくれています。ちょっと疲れていた一行は、ほっとしてここで一休みすることにしました。
 5では棒を手に若い男たちが争っていますね。ところで、この後のカードには、実はワンドの2にいたような、落ち着いた男性が出て来ません。そこで私は勝手に、大変可哀想ですが、彼はここまでの間に亡くなってしまったとストーリー設定しています。カードの意味には関係ありませんけど。で、ここから先に出てくるのは、偉大な商人・冒険家の息子なのです。というわけで、5は同じような力を持った仲間の間での競争です。リーダーを決めようとしているのか、これからどうするのかでモメているのか。命がけの闘争ではありません。嫌悪や憎悪があるわけでは、とりあえずないのですが、彼等は自分の情熱と主張を持って(=棒)一歩も譲らず争っています。
 6は凱旋の姿みたいですね。ちょっと飛びますが、無事に成果を上げて帰って来たのでしょう。人々は彼がもたらす富を喜び、功労者を讃えています。達成感と誇らしさに浸りながら、青年は馬をゆっくりと進めています。
 しかし7ではまた争いが。彼を妬み、その財産を奪おうとする者だっているのです。しかし彼は優位に立っています。小高い位置という有利な場所で、多数を相手に互角に戦っています。大切なもの、それがなにかは分かりませんが、それを守るためには一人でだって戦わないとなりません。
 8は空に棒が描かれているだけなので、ちょっと面食らいますが、これは「そして時は流れ」くらいのモノローグだと思ってください(笑) 事態は急展開し、目まぐるしく状況は変化します。
 9では彼は傷つき、自分の持つ一本の棒をしっかりと掴み、ともするとそれに寄りかかるようにして、他の棒で柵のようなものを作ったところにいます。あたりを警戒する目付き。どうやら有利さは失われ、彼は今必死に自分を守ろうとしています。無事ではありませんが、深手でもなく、まだ戦う意志はあります。しかし、そろそろおつかれなのではないでしょうか。
 そして10では、彼は10本の棒を重そうに運んでいます。見るからに重そうですね。結末はいろいと考えることができますが、確かなのは、一人で抱えるには重すぎるものを、それでも彼は一人で運ぼうとしているし、誰も助けてはくれないという姿です。彼は今も領主のような立場なのでしょうか。それとも財産を奪われ、使用人に身を落とし、薪を館へと運ばされている? 私はなんとなく、彼は今も領主なのですが、誰も信じられなくなって、自分一人で生きていこうとしているように見えたりします。

 こんなふうに、基本の意味を外さないようにしながら、2〜10でストーリーを作ってみるのも面白いですし、カードを覚えるいい方法だと思います。


【まとめ】

 つまり、必要なのは記憶力よりも、イメージする力です。タロット占いはその力がなにより重要。
 それと同時に、イメージを好き勝手に拡大したり暴走させないようにすることです。(このあたりのことは、また別項目ででも語らせてください)
 ともあれ、占い結果をリーディングするときだけでなく、カードを覚えるのにも想像力を活かしましょう。一枚の絵と、そこに割り当てられた基本的な意味から物語を作り、しっくり来るまで推敲しましょう。
 そうすれば、意味の丸暗記などせずとも、カードからたくさんの意味を拾い上げられるようになります。