「鴉の詩」
 

オレは夕暮れ時になると
いつもここへやってくる
雲ひとつない空に
ゆっくりと太陽が沈んでいくのがいい
ちぎれた雲の中に
オレンジの円がとけて消えていくのがいい

オレは自由気侭な鴉だ
仲間とつるんでエサを探しに行ったり
巣に帰れば子供が待っていたりする
そんなオレでも
独りになりたいこともある
そんな時、夕日を見にいくのさ

雨が降る日は
西の空を見つめながら雨に打たれる
外へ出られず巣の中にいる時は
まぶたの裏に圧倒的なグラデーションが蘇る

夕焼けには、鴉の声は似合わない
オレの声よりも
遠くに聞こえる鐘の音の方が心に染みる
紅い空を見上げて「キレイだ」と鳴く奴もいるが
時々、目をつぶりながら黙って見ているのがいい
毎日この時刻になると
心がもう一度組み立てられるような気がする
忘れかけていた本能が目覚める気がする

夕焼けよ、もっと紅くあれ
オレの黒い翼を燃やすほどに、紅くあれ

 

 なんとなくハードボイルドに思えるのは私だけデスカ?