別れの言葉 〜ある女の場合〜

 貴方の夢を応援するわ、なんて、よく歌にあったりするけど、あんなの大嘘だよね。
 それとも、大して好きでもないか。
 ……うん。
 私は、我慢できない。
 できるつもりで付き合ってきたけどさ。
 やっぱ駄目だわ。

 あんた結局、いつだって自分のこと優先だもん。
 いや、分かってるって。
 一番最初にそう言われたしさ。
 でもさ、もう少しくらい……ああ、やだやだ。こんなの愚痴だ(笑

 はっきり言ってさ、あんたのこと今でも好きだけど、彼女やってるのは、もう無理ね。
 うん。
 あんたがノッてる時って、マジ応援するよ。うわ、やってんねー、ってさ。私だってなんか楽しくなる。
 けど、……だから、「彼女」やってるとさ、ダメなんだわ。
 なんで私のことほっとくの、とか思っちゃうから。
 どっちも嘘じゃないんだ。
 どっちもホントのこと。

 ……正直言って、今ちょっとさすがにショック。
 こんな話したら、少しくらいあんたも驚くかと思ったのに。
 ……なによ、「ふん……、そう」って。
 私のことなんかなんとも思ってなかったわけ!?
 バカみたいじゃん、それじゃ私!?
 あんたの慰安婦やってただけってわけ!?

 ……う……。
 そう……だった。ごめん。
 あんた、そんなんで私呼んだこと、なかったもんね。
 ってか……ハハハ。あんたから誘ってきたこと、あったっけ?

 ……なんだ。
 私、……あんたのなんだったわけ?
 私がさ、誘わなかったら、あんた、私に触りもしなかったわけだ?

 ハハ……。こういう話、嫌いだよね。
 顔で「帰れ」って言ってるわ。
 言わないのは、面倒だから?
 ……え?
 そっか。
 考えてくれてんだ。
 べつに、怒ってないんだ?
 そう言やそうだ。あんたの考えてる顔って、怒ってるのと見分けつかなかったっけ。
 でもさ……うん、いいよ、それで。

 だってさ、あんたって、こういうこと言われたら、真っ先に「こいつうぜェ」って思い出すじゃん?
 それが、ちゃんと考えてくれてるってことは、それっくらいは私のこと、気にかけてくれてるってことだ?
 …………バカだ、私。
 ごめん……鬱陶しいね。
 でもさ……私、それだけでも嬉しいんだもん。
 バカ。撫でるのやめてよ。止まんないじゃない。
 ……バカ………………。



 私さ、やっぱあんたのこと、好きなんだ、うん。
 だから、彼女はもうやめ。
 彼女やってると、イライラすること多いから。
 その代わりさ、たまには遊びに誘ってよね。今までどおり。暇な時でいいよ。他にすることないからっていうんで。
 まあ……たまにはね。私と遊びたいなって気分になって、暇作ってくれたら、いいけどさ。
 でもこんなこと、けっこうみんな思ってんの、知ってる?
 あんたってどうしようもないくらい我が儘なのにね。
 変な人徳(笑

 あ、そろそろいい時間だ。
 あんた、今からテレビ見るんでしょ?
 この間言ってたじゃん。最近毎週見てるって。そろそろ始まるよ。
 ……忘れてた、って……。
 言わなきゃ良かった。
 え?
 そりゃ私はいいけど……いいの?
 見ないの?
 ……そういう気分、って……それってさ、つまり、テレビより私のほうが価値あるってことなわけだ?
 あんた、……分かってて言ってんの?
 せっかく私がさ、彼女やめるって言ってるのに、人の決心思いっきりグラつかせてるじゃん。
 無神経だよね、ホント。
 ……ってか、分かってて言ってんだろ、この我が儘(笑

 いいよ。
 あんたが優しいのなんて、めったにないしね。
 その代わり、私が泣いても、怒んなよ?
 ……そだね。酒にせいにするか(笑
 何処行く?
 んー、そだね。私も懐寂しいし(笑
 じゃ、決まり。
 さ、行こ〜!


(end)