キン肉アタルだ。今日の相談人は、……U世の人気ランキングだというのに新世代超人のことごとくを追い落として3位に入ったおまえか。 ―――いきなり匿名もなにも全部無駄にしないでください。 不幸なところがいいんだろうなぁ。正直、生い立ち考えたらおまえより不幸な超人はない。うちのスグルも、マリポーサもゼブラマンも真っ青だ。しかも現役時代後半は噛ませ犬として有名だったしな。つまり、さんざんな目に遭って負ける可哀想な役だから、諸人の同情をかいまくった仕組みだな。 ―――どうしてそういう、尋ねてもいない一番聞きたくないことをさらりと……。 どう考えても、その人気のせいで年をとらない設定にしてまた出てきたとしか思えんが、まあ、今日のところは不問に付しておこう。 ―――ひょっとしてアタルさん、俺のことが嫌いですか? 食指はそそられる。 ―――帰ります。 そう言わず話していきなさい。 ―――その、ダンディに構えたままさらっと有無を言わせないあたり、ロビンの上を行きますね。 伊達にこの世代の最年長者じゃないからな。
それで、いったいなにを悩んでいるんだ。 ―――なにって、ここはつまり、その手の悩みの……。 具体的に言いなさい。おまえの恋人なら、あの甘ったれたタトゥ小僧だろう。サイズが合わなくて苦労してるのか? にも関わらず無理やり突っ込まれるとか。 ―――あ、あの、もう少し言葉を選んでもらえませんか。 回りくどいのは無駄だ。年だけ言えばもう50は過ぎているだろうが。今更恥ずかしがってどうする。で、どうなんだ。入るのか、入らないのか。 ―――いや、それは悩みには関係ないので……。 つまり入るのは入るんだな。 ―――だからですね……。 むしろ私としては、おまえの体にそういう器官があるのかどうかのほうが気になるぞ。ちょっとここで脱いでみてくれんか? ―――ッだ――ッ!! 人形の服めくるみたいに人の服に手ェかけんでください! 気になっただけじゃないか。なにもベアクロー出さなくてもいいだろう。 ―――いつもその調子なんですか。 なにが? よく分からんが、特にいつもと違うことをしているつもりはない。 ―――悩み事さっさと言いますから、とっとと帰らせてください。 良かろう。さあ言ってみろ。
――― 一つには、30も年上の俺が、彼の青春を消費していいのかということです。 ……ここはあれだぞ。性に関する相談室で、人生相談じゃないはずだ。私が期待しているものとずいぶんかけ離れた内容だな。 ―――
一つめが解決すれば二つめがその系統なんで、仕方なくこんなところに来るしかなかったんじゃないですか。 婉曲に嫌味を言ってないか? ―――気のせいです。で、続けていいでしょうか? 良かろう。 ―――さすが王家嫡男、こんなに態度のでかいカウンセラー初めて見た……。 なにか言ったか? ―――いえ。で、俺なんかと付き合って時間を過ごすより、同世代の超人の中にいい人でも見つけて、末永く付き合ったほうがいいんじゃないかと思うわけです。……どう思いますか?
簡単なことだ。価値と歴史は比例も反比例もしない。 ―――あの……もう少し一般的に、分かりやすく言ってもらえませんか。 理解不能か? ―――少し曖昧すぎるかと。 つまり、おまえとすごすことでケビンくんが ―――あーっあーっあーっあーっ!! 黙らんか!! ―――すみません。ってなんで俺が謝らないといけないんですか!? なにをぎゃーぎゃーわめいている。 ―――思いっきり名前出したじゃないですか。 ……そうだったか? ―――メモリチップに記録しています。 便利だな。もしかして録音再生も可能なのか? ―――今はそういうことが問題じゃないでしょう!? 構うな。 ―――俺が構います! 我が儘だな。 ―――……もういいんで、とっとと次進めてください……。
それなら最初から黙って聞いていれば良かろうが、まったく。 ―――で、彼がなんですか? うむ。ケビンくんがだな、充分に満足して有意義な時を過ごせるなら、付き合う相手が新しいか古いかは関係ない、ということだ。 ―――……せめて「若いか若くないか」って言ってくれても……。 そこが微妙なところでな。おまえが肉体的に若いのが問題でこうなった。なにも物だと思って言っているわけじゃない。だから、マスク越しにも分かるほど傷ついた顔するのはやめてくれ。食いたくなる。 ―――あんたはケダモノですか!! 自覚はある。 ―――……最低だな、このオヤジ。 な・に・か・言・っ・た・か・ね〜? ―――分かりました分かりました分かりましたッ!! もう言いませんから食べないでッ!! 少しくらい物分りが悪くても私は気にせんぞ? ―――俺は全力で限界まで気にするんで、解説の続きをお願いします。 真面目一辺倒では出世できん世の中だ。 ―――解説の続きが聞けて、ここから無事に帰れれば、出世なんて全くできなくても構いません。 つまらん人生だな。 ―――つまらなくていいんで、解説してください。
やれやれ。 ―――こっちの台詞だ。 な・に・か…… ―――だから話続けろって言ってんだろ!? 痛いな。それが相談に来た者の態度か。 ―――それが相談を受ける人の態度ですか。 ああ言えばこう言う。 ―――混ぜっ返してるのはあんただよ!! はいはい。仕方ない。ここは折れておくか。 ―――やってられん……。 な・に…… ―――いい加減にしろ―――ッ!!
(しばらくお待ちください)
それで、二つめの悩みとはなんだ。 ―――………………。 どうした。恥ずかしがらなくてもいいんだぞ? やはりサイズの問題か? それとも体力差か? 邪魔者でもいるのか? ―――………………。 サイズの問題なら世の中には拡張器という便利なものがあるし、体力差なら正直に打ち明けてセーブさせるしかない。邪魔者は、消せ。それですっかり解決だ。 ―――あのなぁ……。 口が開いたところで、さっさと話してみろ。言っておくが、全部吐くまで帰さんからな。 ―――
一瞬で本気だと分かるあたり最悪だぞ、あんた。 そこがいいと言われる。 ―――俺が好きだなんてケビンも物好きだと思っていたが、世の中には想像を絶する物好きがいるんだな。 試してみるか? わけなどすぐに分かる。 ―――言うっ、言うから寄るな触るな脱がせるなッ!! キン肉王家には48の究極技があってだな。 ―――聞きたくない聞きたくない……。 カメハメ100殺手同様、パワーファイター型の技とテクニシャン型の技がある。ちなみに私はスグルと違って、今でも全て使えるぞ? ―――いいから、頼むから、さっさと相談事について話させてくれッ!
仕方ないな。で、なんだと。 ―――……さっきのあんたの疑問に答えることになるのが極めて不本意なんだが、俺には口がない。つまり食物はとらない。だから、いわゆる消化器官も人間や普通の超人とは違うわけで……。 つまり、排泄器官もない、と? ―――……いうこと。 それでいったいどうやって寝てるんだ? ―――だから、できないんじゃないか。 触るだけか? ―――そう。 撫でたりさすったりしてるだけ? ―――そう。 舐めたりつねったりいじったり? ―――そう。 しかもおまえ、口がないってことは(ピ――)もできないんだろう? ―――そうだっ。 では、せいぜいいやらしい格好して視覚刺激を与えているだけとか? ―――いい加減しつこいぞあんた!! そこが一番知りたいんだが。 ―――だからっ、なんにもしてやれないしっ、なんにもさせてやれないからっ、このままでいいのかとッ!!
分かった分かった。そう興奮するな。 ―――興奮させてるのはあんただろう! 大人の魅力か。罪だな。 ―――本気で脳天抉るぞ貴様。 まったく、ちょっとしたジョークだ。殺気立つんじゃない。 それはそれとして、そういう問題なら簡単な解決方法がある。 ―――……嘘だ。 疑うな。本当だ。 ―――臓器移植だのなんだのは無駄だぞ? そんな面倒なことはせん。 ―――いったいどうすると。 ドブ川を清流に替え、鋼鉄も飴のように曲げ、死人すら蘇生させる奇跡が、世の中にはある。 ―――あ。 死人というか存在自体の消えた者さえ復活させられるんだから、おまえの体を完全な超人にすることくらい造作もない。 ―――そうか。なるほど。それじゃあキン肉マンに頼めば……。 意図的に目の前の私を無視しようとしていないか? ―――キン肉マンに頼めば、牛丼一年分くらいで引き受けてくれそうだな。よし。 私なら一晩だけでいい。試してみないか? ん? ―――ギャ―――ッ!! はっ、はな、放せ……ッ!! ちょ、どこ触……っ!? じたばたするな。すぐに完全な超人にしてやる。それからじっくりと、本当に完全に変化したかどうか体の隅々まで検分してお墨付きも出してやるから、安心して身を任せなさい。 ―――真顔で言うなッ!! ケ、ケビ〜ンッ!!
(しばらくお待ちください)
……うーむ、まさかあの小僧が追いかけてきていたとは、この私としたことが不覚だった。しかも食い逃がしたし。マッハ・パルバライザーもだいぶ威力を上げたものだな。まだ血が止まらん。 ともあれ、無理難題から無茶無謀、どんな悩みもフェイス・フラッシュで即解決、キン肉アタルの悩み相談室、これからもよろしく頼もう。
(誰か止めて……) |