やあ、全宇宙のみんな、元気にしているかな? ロビンマスクだ。 今日も迷える子羊の悩みを、この私がロビンスペシャルで一挙に解決してみせよう。
今日の子羊は、匿名希望、悪魔超人のSくんだ。 さあSくん、普段胸にしまっている性の悩みを、思い切って打ち明けてくれたまえ。 ―――は、はあ。 といきなり言っても恥ずかしいかな? ええと、Sくんには現在、極めて親しくお付き合いしている人がいるんだね? ―――はい。 それじゃあまずは、彼の素敵なところから話してもらおうかな。惚気てくれて大いに結構だよ。 ―――はあ。
そうだな。彼はどんなタイプ? 優しくて気立てのいい癒し系? ―――優しいといえば優しいこともあるけど、もっぱら我が儘で自己中心的です。 へえ。それでもSくんは彼のことが好きなんだね。 ―――ええ。どうしてだか。 なに、それが恋と愛の不思議だよ。我が儘も身勝手も、甘えてくれているからだと思えば、特別な愛情表現だものね。 ―――いえ、みんなに我が儘です……。 そ、そうなのかい? でも、それでも好きなんだよね? ―――はい。 たまにしか優しくしてはもらえなくて、普段は引っ張り回されている、といったところかな。 ―――そのとおりです。 それでも好きだということは、時々でも、強くそう実感することがあるんじゃないかな? ―――えぇと……そうです。その、たまにでも優しいところを見せてもらえるのは、俺だけかなと。 なるほどなるほど。
それじゃあ、ちょっと不躾だけど、付き合って何年くらいたつのかな? ―――もう二年……くらいです。 じゃあもちろん、Hはした? ―――は、はあ、ああ、まあ、一応、はい。 してないほうが問題なんだから、そんなに恥ずかしがらなくてもいいんだよ。週に一度くらいは、そういう時間はとれているかな? ―――そこまでは……。 月イチくらい? ―――まちまち、です。 都合が合わなくてなかなか会えないとか? ―――ほとんどいつも一緒にいるんですけど、その、気まぐれというか……プライドが高くて、なにせ王子様なもんだから、「させてやってもいいぞ」って気になかなかなってくれなくて。 ははあ。でも、君とはいつも一緒にいるし、君にだけは時々でも優しくしてくれるわけだね。それで、家柄が良くてプライドも高い……。 ―――はい。 つまり、なかなか素直になれない、といったところじゃないかな? ―――た、たぶん、そうじゃないかなとは思ってます。
それじゃあ、Hしてる時はちゃんと甘えてくれるんじゃないのかな? ―――い、いや、その……。 おや? そう言いつつも嬉しそうな顔だね。つまり、素直じゃないところもかわいい。違うかな? ―――ええ、まあ、そんな感じで……。 つまり、なかなかうまくいっているということだ。にも関わらず相談に来たということは、問題はどういうことなのかな。 ―――それが……その、あの……。 恥ずかしがらないで。ここはそういう悩みを相談する場なんだから。 ―――は、はい。えっと……まずはその、してる時に……。 ふむふむ? ―――その、なんて言うか……ノッてくるっていうか……その気になってくるっていうか……、その、つまり……。 ふむ。つまり、感じてくると、ということかな? ―――あ、は、はあ。その、それです。 世の中には我慢できなくて小水をもらしてしまう人もいるっていうけど、そういうことではない? ―――ぶるぶるぶる。そうじゃなくてですね、その、俺にしがみついてくるんですけど……。 まさか立てる爪が痛いなんて言わないよね。 ―――それっくらいどうでもいいんです。たまに体が削れて砂落ちることもありますけど、それくらいなんでも。ただその、六本腕でしがみついてくるものだから、身動きが全然とれなくなって困ってるんです。
つまり……せっかく興に乗ってきて、いい感じになって、プライドも高い王子様が、そういうものも脇へ置いてしがみついてくれるようになった途端……動けなくなる、と。 ―――はい。それで時々、怒り出されて……。 なるほどねぇ。せっかく気持ちよくなってきたら、止められるんじゃお互いにたまらないね。 ―――それで、どうすればいいのかと。 要するに、六本腕でバインドされるからいけないわけだから……。ライトSM風に、邪魔な腕を二本でも四本でも、縛っておくのはどう? ―――そっ、そんなことしたら殺されます! いやいや。プライドが高くて傲慢なタイプっていうのは、そんな自分が誰かに征服されることに、マゾヒスティックな快感を覚えることも少なくないんだよ。この際だから、正直にわけを話して、だから腕が勝手に動かないように固定しておきたいんだ、って言ってみたらどうかな? ―――聞いてくれるでしょうか。 君が無理やり押さえつけるよりは受け入れてくれると思うね。 ―――それじゃあ、言うだけでも言ってみます……。
で、悩みはそれだけ? なんとなくもう一つくらいある気がするんだけど。 ―――よく分かりますね。 ハッハッハッ、伊達に超人界一のお悩み請負人とは呼ばれていないよ。 ―――初耳ですけど? だから呼ばれていないって言っている。 ―――………………。 ………………。 ―――そのネタ……。 おーっと、元ネタについては、思い当たった人もヒ・ミ・ツ、だ! ロビン先生との約束だよ! で、この人に相談して大丈夫なんだろうか、なんて顔してないで、思い切って告白してみたまえ。他に相談できる相手がいないから私のところへ来たんだろう? ここはもう崖っぷち、掴める最後のワラなんだから。 ―――自分で言うことじゃないと思いますが。 気にしない気にしない★ それで?
―――はあ。それじゃあ。もう一つの悩みっていうのは、その後にうまく持ち込めた時のことです。 というと、オルガスムス前後かな。 ―――オル……? あ、ああ、はい。 声が大きすぎて困るとか? ―――それはないんですけど、その……前後不覚になってくると、顔が三つとも泣き顔になって、それはもうかわいいんです。超人界一かわいいと思ってます。 うん、まあたしかにかわ……じゃなかった。うんうん、いいことじゃないか。誰だか知らないけれどそんなかわいい恋人がいるなんて。で、なにが問題なのかな? ―――なのにですね、照れ隠しなのかなんなのか、イッた途端に怒りの面に変わるんです……っ。
そ、それは……。 ―――もう怖くって怖くって……。 つまり、気持ちよく達した途端に、あの顔に睨まれる、と……。 ―――しかも俺が先にイくと怒るし、終わるとつっけんどんに追い払われるし、おかげで俺、ここ何ヶ月も、最終的にはいっつも一人になってから自分で抜いてて……。 そ、それはつらいなぁ。でもあれ、仮面だったんじゃなかったか? 外してもらったらどうだ? ―――外させてくれると思うか? 納得。うーん……。こうなったら、タイミングを合わせて目をつぶるしかないんじゃないかな。顔が変わりそうだぞ、と思ったら目を閉じて、あとはそれまでの顔だけ想像しながら。 ―――そうしようと思うんですけど、一度見たインパクトが強すぎて、目をつぶると怒りの面しか浮かんでこないんです。 な、難儀な……。となると残された手段は、さらに泣き顔の仮面でも上にかぶせておくしかないんじゃないかな? ―――かぶってくれると思います? ……無理。 ―――でしょう。だから、どうしたらいいか……。
それじゃあ、これはロビン先生の宿題にしておこう。きっとSくんもAくん……じゃなかった、Sくんのかわいい恋人も満足できるような解決方法を考えてくるからね! ―――はい、お願いします。それじゃあ、今日はお世話になりました。
さあ、これは難題だ。先生はこれから、Sくんの悩みを解決できるようにしっかりと考えなくてはならなくなった。だから、今日はこれまでだ。 匿名希望のSくん、君たちの恋がより一層濃密なものになるよう、ロビン先生もがんばるからね!
(がんばらなくてよろしい) |