ララバイ ケビン '04

 ちょっとしたキャンペーンで日本に行った時、キッドと万太郎がおかしなクイズをして遊んでいた。
 父親たちが現役だった頃に流行ったものらしく、
「食べるならどっちだ? う○こ味のカレーとカレー味のう○こ!」
 とかいう下品で下劣で頭の悪そうなものだ。
 どちらも選びたくない二択で、あえて選ぶならばどちらにするか、という遊びらしい。
 たまたまその場に居合わせて、たまたまそんな会話を聞くことになってしまったケビンは、こんなバカな話で盛り上がれるなんて、こいつらはアホかと思いながらげんなりしていた。

 だがその翌週、キャンペーンを終えて帰ってきたケビンは、ウォーズマンを相手に同じゲームを持ちかけていた。
 仕方ないな、と子供を宥める調子で付き合ってくれるウォーズマンに、前振りとして無難なクイズを出す。
 こういうものはなかなか自分で創作できるものではないので、万太郎たちから聞いたものをそのまま真似するだけだ。無論、口にするのも憚られるような言葉が必要なものはカットである。
 そうして
「そんなものまで選ばないとならないのか? 勘弁してくれよ」
 と少しばかり盛り上がった頃を見計らって、思い切って尋ねた。

 

「それじゃあ、一晩寝るしかないとしたらどっちだ? お、俺か、俺の親父……」

「うん、ロビンだな」

 「か」を言うより早い即答だった―――。

 

 泣きながら自分の寝室に走りこんでいったケビンを見送って、ウォーズマンは首を傾げた。
(あいつ、自分の体格分かってるのか?)
 同じベッドにいたら、狭くて寝られそうもないじゃないか。
 溜め込んできたストレスのせいかあまり寝相は良くないのだから、壁側で押しつぶされるか、空間側で蹴り落とされるか、どちらかだろうと想像したウォーズマンは、無論、オカシナ意味でなど考えてはいないのだった。

 

(負けるなケビン!)