フェルグロウ砦に、大学の本を取り返しに行くことにした。 ウラッグによれば、オーソーンという学生が、魔術師のサークルに参加するための献上物として盗んでいった本が3冊あるらしい。この本を取り戻すことが、あの謎の遺物とどう関わるのかは分からないが、読む者が読めばきっと謎の一端が解明されるのだろう。禁書ではないようであるし、見つけたら私も一通り目を通してみるとしよう。
砦にいたのは魔術師たちだが、吸血鬼を捕らえて実験台にしていたり、あまり真っ当な者ではないらしい。檻に閉じ込められていた吸血鬼たちを出してやると、礼は言わなかったし、私への恩返しというつもりもないのだろうが、砦の魔術師たちと戦い、彼等を退けてくれた。一人は犠牲になってしまったが、二人は逃げ出すことができたようだ。吸血鬼を外に出すことには賛否あるかもしれないが、すべての吸血鬼が人を殺すわけではない。現に、襲おうと思えば私を襲うこともできたはずだった。彼女たちに平穏があるように祈る。 それにしても、この砦には魔術師たちばかりいるせいか、そこかしこに錬金素材が仕舞い込まれている。ありがたい。
オーソーンを助け、一人でも頭数は多いほうがいいと同行を頼んだものの、彼もまた、砦の探索中に命を落としてしまった。守りきれなかったことが悔やまれる。カルジョも私も、だいぶ危ない目にあった。 ことに、なにやら大掛かりな召喚を試みているらしい砦の主には苦戦した。本を返してくれるように頼んだが交渉は決裂し、力ずくになってしまった。自身も破壊魔法を使う上に、強力な炎の精霊まで召喚しきた。かろうじてしのぐことはできたものの、幾度ももう駄目かと思った。 カルジョが無事であったことがなによりも嬉しい。 お互いの無事を喜び、大学への帰途についた。
しばらくはあんな大変な思いはしたくないと意見が一致し、ウィンターホールドでしばらく骨休めすることにした。 カルジョは町の宿でのんびりするらしい。 ウラッグに届ける前に、本を読んでしまおう。
■涙の夜 この本は、サールザル、私がウィンターホールド大学に入って最初に探索したあの遺跡、元はノルドの街でもあったあの場所が、何故滅んだのかについての考察だ。 ノルドとアルトマーの間に、大規模かつ相当激しい戦いがあったらしい。アルトマーがノルドを襲い、虐殺したその出来事のことを「涙の夜」というようだ。 アルトマーである私としては、読んでいて複雑な気分になる。こういった書籍の常として、書かれていることは"事実"ではなく書き手の主観であることもある。ノルドの書いたものであれば、当然ノルドを善、正しい者とするだろう。私は種族だけで善悪や正義を判断したくはないけれど、自分の種族をできるだけ善良であると思いたい、という気持ちは持っている。けれど、だとしてもノルドを悪とは言いたくない。書かれているとおりなのかもしれないし、そうでないかもしれない。事実は、過去のそのときその場にいないかぎり分かるものではない。 ともあれこの本では、ノルドとアルトマーの争いは領土といったものが理由ではなく、私とトルフディル先生が見つけたあの遺物が原因なのではないかと考察されている。アルトマーはそれを自分たちのものにしようとし、ノルドはそれを誰にも知られず使わせないように封印しようとしたらしい。
■アルテウムについて なんとなく聞いた覚えがある気がしていたのは、ここがサイジック会の本拠地たからだ。 突然島ごと消えたり、場所を変えたりする島らしいが……。なんにせよ、この島に住む者たちは、かつて、タムリエルに助言を与えたりしていたようである。
■アイレイド最後の王 アイレイドとは、アルトマーの祖のことだが、今よりもはるかに強く力を持っていたと言われている。 この本はアイレイドの概略について至極簡単に触れたものだ。文献としては興味深いが、遺物にはあまり関係がないように思える。もし関係があるとすれば、あの遺物がアイレイドの技術によるものだ、ということになる? ところで、ジェイ・ザルゴは何故私の部屋に来て、椅子を占拠するのだろうか? 気安く接してくれるのは嬉しいが、ベッドで読んでいたらうっかり寝てしまった。
種族が違うからと対立したり、時には争いになり殺しあう世の中で、この大学では誰も私をアルトマーだからどうとは言わない。もちろん、カジートだからとか、ダンマーだから、あるいはノルドだからといったことも一度も耳にしていない。素敵なことだ。
ウラッグに本を届けたら、三冊の本は私が持っていればいいと言ってくれた。大学を出て行くつもりになったら、そのときには返してくれと言われた。もちろんそうしよう。これでゆっくりと読み返すことができる。そのうえ、本を取り戻した礼にと、魔法の学習に役立つ本を何冊も譲ってくれた。どれも非常に興味深く面白い本ばかりだ。読むだけで理解が深まる。実際に少し、魔法術の腕前も上がった気がする。 特に興味を覚えたのは「武器付呪の目録」だ。私自身は武器をとることはないが、手に入れた武具を売るのにも、力を貸してくれる仲間に身につけてもらうのにも、付呪はとても役に立つ。 ついその場で読み耽ってしまった。図書館は居心地がいい。まだ読んでいない本がたくさんある。
ウラッグから、トルフディル先生と「涙の夜」について話すように言われた。やはりあの本が、謎の遺物を調べるのには最も役立つようだ。 先生と遺物について意見を交換していると、アンカノ殿が割り込んできた。"楽しい時間"を邪魔されて、珍しくトルフディル先生が憤慨していた。 アンカノ殿によると、サイジック会から来た者が、私を探しているらしい。 思いがけない理由で、アークメイジの居住区に入ることになってしまった。
アークメイジの居室で待っていたのは、あのときのサイジック会の男だろうか? 幻影と実物とではなかなか一致しない。 彼は、自分が来たことについては心配する必要はないとサボス殿と話していたが、私が近づくと、たぶんこれも魔法なのだろう。急に世界が奇妙な光の中に閉じ込められ、また私と彼だけの世界に切り離されてしまった。 彼はあの遺物―――"マグナスの目"というらしい―――あれの取り扱いについてひどく心配していた。懸念しているのはサイジック会全体もそうなのだが、その中でクアラニルという彼は、私たちに特別友好的にしてくれるようだ。たぶん、彼がいなければかなり強硬な手段をとって、なにかが行われるのではないだろうか。 話は不透明で、なにが起こりつつあるのかは分からなかったが、彼が私の味方であり、自分の身や立場を危うくしてでも手助けをしようとしてくれていることと、なにか重大なことが起こりかけていることは感じ取れた。
ダンレインの予言者に会え、とクアラニルは言った。ダンレインというのは、かつては大学の学徒だった人物のようだが、今はなにか"違うもの"になっているらしい。 サールザルのときと同じく、彼との会話が終わると、元に戻った世界では、サボス殿とアンカノ殿がなにやら落ち着かない様子だった。アンカノ殿は敵意を剥き出しにしていた。サボス殿は、クアラニルが来た理由がさっぱり分からず、彼がなにもせず帰っていった理由も不明なので、サイジック会に失礼なことをしたのでなければいいがと案じていた。アークメイジともあろう人を不安にさせるとは、サイジック会というのはそれほどに権威のある組織なのだろうか。名前くらいは知っていても、詳しくはなにも知らない。サボス殿は知識がある分、私よりも正確に重みが分かるのだろう。 ともあれ、たぶん大丈夫だ、優しそうな人だったではありませんかと話しかけたついでに、ダンレインの予言者というのをご存知か尋ねてみた。サボス殿の口から出たのは、トルフディル先生の名だ。気軽に話題にするにはふさわしくない予言者のことを、トルフディル先生は時々話したがるらしい。先生に聞けば、もう少し詳しいことが分かるだろう。
それにしても、クアラニルはどこへ行ったのだろう。歩いて出て行ったが、人目につかないところで消えてしまったのではないかという気がする。サイジック会には、なにかそういう、私たちよりもはるかに優れた魔法の力が伝わっているのではないだろうか。 興味はあるが、きっと私の手には負えないだろう。
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アークメイジの居室はさすがだ。錬金台、付呪器。小さな庭。灯火の魔法で生み出すような明かりがずっと漂っていて、様々な草花、菌類が育っている。綺麗だった
アンカノ殿と話していると、父と話しているような居心地の悪さを感じる。父は確かに優秀な魔術師だと思うが、私はやはり、好きになれない。
ダンレインの予言者は、ミッデンという場所にいるとのことだった。 トルフディル先生が生まれるよりもはるか前の学生であり、優秀なウィザードでもあったが、強大な力を得ようとした挙げ句、なんらかの事故に遭ったらしい。 なんにせよ、ミッデンは大学の地下にあるという。 探してみると、中庭の片隅に小さな地下への入り口があった。中は凍てついた、牢獄のような石造りの迷路だ。なにかはよく分からないが、大掛かりな仕掛けがあった。これはいったいなんなのだろう。 氷の生霊にドラウグルまで住み着いているが、数が少ないのが幸いだ。壁には人骨を使った作った不気味なオブジェまである。ろくな場所ではないらしいし、こんなところにいるとなると、予言者というのも一種の危険人物だったに違いない。 その奥の鍵のかかった扉に触れると、たしかに男の声がした。だが中に入ってみると、そこにいたのは、青白い光、だった。 "彼"はなにやら、もう手遅れだとばかり言う。それに、アンカノ殿もここに来たと? 彼はミッデンのことも予言者のことも知らないと言っていたはずだが。どうも彼は信用できない。そう決めつけたくはないのだが。 予言者の言うことはよく分からないが、クアラニルが心配しているなにかを避けるためには、"マグナスの杖"とやらを探さねばならないらしい。予言者はその場所を教えてくれなかったが、アークメイジに話せと言っていた。 それきり予言者の光は消えてしまった。
来た道とは別の道をたどったところ、妙な手の像のある場所に出た。これもまたよく分からないシロモノだ。傍にある手記によると、サボス殿より前のアークメイジの時代の話のことのようだ。なにかを召喚しようとして、生徒たちが死亡したという。オブリビオンの紋章が刻まれたものなどろくなものではないに違いない。少なくとも私は、自分の魔術の技量に自信がつくまでは……十分以上の自信を得る日が来るのでなければ、二度とここには来ないだろう。 むしろ私にとっては、垂れ苔が手に入ったことのほうが喜ばしい。これはたしか、クマの爪と調合すると非常に良い値で売れたはずだ。もっと他に、垂れ苔の手に入るところはないだろうか。
元素の間にいたサボス殿と話すと、今度はマスター・ミラベルと話すように言われた。彼女が杖について言及していたから、と。しかし、彼はマグナスの杖について、自身もなにか知っているように見えたが……? ともあれ、褒美にとサークレットをいただいた。素人魔術師用のフードよりは、集中力を上げる効果がありそうだ。ありがたく使わせてもらうとしよう。
マスター・ミラベルに話を聞いた。 最近サイノッドの者がマグナスの杖について話を聞きに来たらしい。サイノッドとは懐かしい響きだ。シロディールの魔術師たちだが、権威主義で、私は誰と話しても好きになれなかった。ということはつまり彼等も私のことは好きでないということで、何度か気の滅入るような口論になったことがある。 ムズルフトという遺跡に向かったらしい。仕方ない。気は進まないが、私もそこへ行くとしよう。しかし、ムズルフトという名前からすると、ドゥーマーの遺跡ではないか? 行く前にカルジョに声をかけよう。私一人で探索できる気はしない。 ムズルフトはウィンドヘルムから南西にあるらしい。正確な所在地は誰も知らないから、近辺まで自力で行くしかないようだ。
ウィンドヘルムで準備を整えて出発し、カイネスグローブという小さな村についた。この近くにはリュウノシタの黄色い花がよく見られる。珍しいことに、街道沿いにはクリープクラスターも見つかった。 例によってその調子で寄り道していたら、いつの間にかオークの集落に来てしまった。日も落ちたし、泊めてもらえないかと思ったが、親族でないかぎり入れてはもらえないらしい。仕方ない。しかし、オークの集落とは興味があるので、入る方法はないのかと訪ねると、「巨匠の指」という魔法の篭手を見つけてくればいいと言われた。急ぐことでもないが、時間ができたらぜひ探してみよう。
※ ウィンドヘルムの町中に垂れ苔。 ※ そういえば、ソリチュードの町中には青い花が咲いていた。
なんとかムズルフトに辿り着いた。 途中では、倉庫のようなところもあった。ドワーフのインゴットが大量に保管されていたのには驚いた。 ドワーフの遺跡など、初めて訪れる。いったいどんなものが見られるのだろうか。危険もあるに違いないが、楽しみでたまらない。
と思っていたが、中に入った途端、まさか人が死ぬ場に立ち会うなどとは思っていなかった。サイノッドの一員のようだ。彼は一言二言うめくと息絶えてしまったため、なにがあったのかは分からない。なんにせよ、ここが危険であるということは、まったく間違いがないということだ。
中には、太いパイプが蒸気を吹き出し、金属でできたクモのようなものが徘徊していた。どうやら魂石と、油で動いているようだが……。 内部はまさに迷路のようだ。だがサイノッドの遺体が正しい道を教えてくれた。 月長石の鉱床があったのは幸いだ。お誂え向きにつるはしまで付近に落ちていた。 危険ではあるが、素材集めにはなんと素晴らしい場所だろう。魂石は豊富に手に入るし、このオイルも素材になりそうだ。ドワーフのインゴットや、インゴットに加工できそうな金属塊も見つかるし、時々はドワーフの武具も手に入る。資金を作るのにも丁度いい。 奥のほうではファルメルの死体まで見つけた。 いくつもの意味で言うが、こんな場所を一度で探索するなんてとても無理だ!
大学に戻った際、精鋭クラスの破壊魔法を買った。エクスプロージョンとチェインライトニングだが、私では使いこなすのは難しい。しかしここぞというときに身を守るためには、これくらい強力な魔法があってもいいだろう。ただ、一度に半分ものマジカを消費してしまう。もっと熟達すれば、消費マジカもだいぶ抑えられるのだろう。私はまだまだ見習い程度だということだ。だが、いつかそうなる日を迎えられるよう、もっと研鑽せねば。
ムズルフト、二日目。 ピックを何本も駄目にして、どうにか達人クラスの鍵を開けたドアの先で、この遺跡の合鍵を見つけた。これでずいぶん楽になる。 また、素人レベルの基本的な魔法も、場合によっては精鋭クラスの魔法に劣らない効果があることを痛感している。近づかれてしまったなら、ファイアボルトなど使っていても仕方ない。火炎の魔法で継続的に攻撃したほうがはるかに効果的だ。 それに、広範囲の魔法は仲間も巻き込んでしまう。カルジョの毛皮を焼いてしまうのは可哀想。
ここはドワーフの居住区、巨大な建物の中に作った町だったようで、あちこちに石のベッドも見つかる。だがこんなところではさすがに眠れない。野宿には慣れているものの、寝場所はまず柔らかな槌の上や、落ち葉を集めた上に作る。石の上というのは……。 十分な休息が取れない以上は、無駄に疲労しないよう、ゆっくり進むことにする。
最奥で、パラトゥスというサイノッドの男と、奇妙な装置を見つけた。道中のファルメルが持っていた球体を使って、ドゥーマーの残した壮大な装置を動かすことができるらしい。 パラトゥスは大学に協力を仰ぎに来た者のようだが、正直なところ私には、なにを言っているのかがよく分からなかった。大学に"マグナスの目"があることを、こちらのなにか企んだことのように決めつけてしまっている。あれが大学にあるのはたまたまで、なんの意図もない。むしろ使い方もなんなのかも分からないから私が調べまわっているだけだ。 パラトゥスはなにかにひどく固執し、魔法の力を解き明かそうとしているようだが……。シロディールに戻って議会に報告し、私の"企みを暴いてみせる"などと言っていた。困った人だ。 装置は、天蓋から取り込んだ光をうまく屈折させ組み合わせることで、地図を投影するものだった。それにより、"マグナスの杖"はラビリンシアンという場所にあると分かった。サイノッドの邪魔が入らない内に、さっさと行動する必要はありそうだ。
遺跡から出ようとしたところで、クアラニルの(たぶん)幻影が再び現れた。私の道は間違っていないと彼は言う。サイノッドの動きも気になるが、その対応はサボス殿に任せてもいいように思う。なんにせよ、早く大学に戻って報告しなければ。 |