葬儀は、スカイフォージの巨大な猛禽の足元にて厳かに執り行われました。 祭壇に安置されたコドラク様を送るため、アエラ様が火を灯されます。 わたくしはあまりお話する機会もございませんでしたが、コドラク様にはなにか父や祖父のような大きく、強く、あたたかなものを感じておりました。ノルドの苛烈さと、ノルドの深い情愛。それを持たれたかただったと思います。 同胞団の一員になることには、諸手を上げて賛成したわけではございませんが、ジャーナリズムを離れて、様々な教えを乞えたであろう先人を喪ったことが悲しまれます。 葬儀が一段落しますと、サークルのお三方はアンダーフォージへと向かわれました。他のメンバーはまだ深く黙祷を捧げ、話しかけられる雰囲気ではございません。 その中、エオルンド様がわたくしの傍にいらっしゃると、回収してきた【ウースラドの破片】を渡してほしいとおっしゃいました。そして、コドラク様の手元に残った最後の破片をとってきてほしい、と。 わたくしはコドラク様のお部屋に行き、エンドテーブルの中を探してみました。 すると中には、【ウースラドの破片】の他に、コドラク様の日記もおさめられておりました。
……死者の日記を読むなど、決して褒められたものではございません。ですが、わたくしはうっかりと日記を取り落としてしまい、その際に開いたページの中に、わたくしの名前を見つけてしまったのでございます。それでもなお読まずにおけるほど、わたくしは出来た者ではございませんでした。 そしてコドラク様が、ウェアウルフの血についていかに悩まれていたか、サークルの面々をどのように見守っておられたのか、そしてわたくしがコドラク様にとってどのような存在であったのかを、知ることとなったのでございます。
感慨を振り切り、ともあれ今はエオルンド様のもとへ、【ウースラドの破片】を届けねばなりません。 かつて同胞団を設立した英雄イスグラモルが使っていたという斧でございますから、エオルンド様はこれを再び鍛造しようと思われたのではございますまいか? ともあれ、わたくしがついコドラク様の日記など拝見している間に、参列者の皆様もジョルバスクルに戻って来られたようでございました。 エオルンド様に破片を届けると、サークルのメンバーの待つアンダーフォージへ行くようにと言われました。 アンダーフォージでは、ヴィルカス様がコドラク様の晩年の望みについてお話ししている最中でございました。 アエラ様のように、獣の血を自ら望まれるかたもいらっしゃいますが、コドラク様はそうではございません。そして、ウェアウルフであるということについての見解は異なっていても、アエラ様にとってコドラク様は、同胞団の良き導き手であったのも事実でございます。 コドラク様の望みを、たとえ死後であれ叶えることはできまいか。ヴィルカス様は、かつてコドラク様より聞かされたという、魂を清める方法をご存知でした。しかし、そのためにはイスグラモルの墓に行く必要がございました。しかし、墓の入口はウースラドがないと開かないらしいのです。 ウースラドは破壊され、もう何千年もの間破片のまま……。 落胆する彼等とは別に、わたくしはエオルンド様のお考えについて閃いておりました。そして思ったとおり、エオルンド様がアンダーフォージに入って来られると、「武器は道具だ。道具は壊れるものだ。壊れたら、修復すればいい」と頼もしいお言葉とともに、元の姿に戻った両手斧を翳されました。 ウースラドは、破片を集めたという理由で、わたくしに預けられました。そしてわたくしたちサークルの者は、コドラク様のため、「イスグラモルの墓」へ向かうことになったのでございます。 なお、街を出たとき、守衛の兵が「コドラク・ホワイトメインは埋葬された。彼の魂は、ソブンガルデの広間にて」、と話されるのを聞いたわたくしは、今はまだそうでないことを思うと、一刻も早くイスグラモルの墓へ行き、コドラク様の念願を叶えて差し上げなければなるまいと思うのでございました。
……あの、ところで皆様? 2つだけ、質問してもよろしいでしょうか? 何故、武器を構えて走って行かれるのでございますか? しかも街中からずっと。 そして、二番目の質問のほうがより肝心なのでございますが、スカイリムで最も北に位置するウインターホールドの、更に北へある「イスグラモルの墓」まで、まさか皆様、そうやって武器を構えたまま走って行かれるおつもりなのでございますか……? 申し訳ございませんが、わたくしは馬車でウインターホールドに向かわせていただきますよ?
<中・略・☆>
さて、わたくしとリディアはウインターホールドで一泊。5時間ほど眠り、10時頃に出発いたしました。 北の大地の更に北。流氷の海にある巨大な岩山の麓に、「イスグラモルの墓」はありました。 わたくしが辿り着いた頃には、走って来たらしい皆様も既にご到着でいらっしゃいました。スカイリムの馬は、シロディールの馬ほど足が速くはないようでございますが、それにしても皆様、大変な健脚でいらっしゃいますねぇ……。 ヴィルカス様は、共に行けないとおっしゃいます。復讐の念と悲嘆に暮れた心のままでは進めない、と。しかしアエラ様とファルカス様はついてきてくださるようでございますね。 入り口の正面に立つ雄々しき男性の像、これがイスグラモルの姿のようでございます。その手はたしかに、自然とは言えない仕草で止まっておりました。扉を開けるためには、この手にウースラドを収めれば良いようでございます。 おそらくは、斧の重量と、その重心などが鍵になっているのではないかと思います。イスグラモルの像にウースラドを返しますと、重い地響きとともに像の背後にあった扉が開きました。 アエラ様、ファルカス様、そしてリディアとともに先に進むと、腕試しのため、同胞団の幽霊たちが現れます。しかしさすがに、四人も戦い手がいると楽でございますね。 ……と思ったら、ファルカス様? あの……「ダストマンの石塚以来、あの這いまわるデカいのだけは苦手なんだ。ヴィルカスとともに戻るよ」って……たかが蜘蛛ごときに……ッ! こうなったら頼れるのはアエラ様だけでございますが、このかたもなんとか言って、途中離脱しそうな予感がするのはわたくしだけでございますか? ともあれ、男二人が先に帰り、進むのは女三人でございます。……まったくあの坊やたちは……。
かつての同胞団の戦士たちを退けながら進んだ先、それほど意地の悪い仕掛けなどはございませんでした。そもそもが墓であり、ウースラドが鍵になっていたこともあって、盗賊を撃退するようなトラップや、複雑な仕掛けは必要なかったのでございましょう。 途中で一度だけ、ハンドルのある台座がございました。巨大な顔面をかたどった正面が、扉のように開くのかと期待してハンドルを回しましたが、……金属の柵が動いたような音がしただけで、顔像はなにも……。いったいどこでなにが起こったのかと探してみれば、左手の壁に一ヶ所、元は柵が降りていたらしい通路がございました。なんですか、この虚仮威しは。 そして、アエラ様。アエラ様は、最後の最後までついてきてくださいました! やはり頼りになるかたでございます。 奥の広間に待ち受けていたのは、コドラク様の魂でございました。 ハーシーンのハンティング・グラウンドに引っ張り込まれないように、この青い炎、「導き手の火炎」で体をあたためているんだよとおっしゃいます。今ならまだ、コドラク様をソブンガルデへと送って差し上げることができるに違いありません。 わたくしは、魔女の首を持参したことをコドラク様にお伝えいたました。そして、青い炎に魔女の頭を一つ投げ入れると、コドラク様に重なるようにして、赤く巨大な狼の霊が現れました。これがウェアウルフの源のようでございます。 アエラ様、リディアと力を合わせ狼を倒すと、コドラク様の魂は獣より解放され、そしてようやく、ずっと望んでいらっしゃったソブンガルデへと旅立たれたのでございます。 そして最後にコドラク様は、わたくしに、同胞団を導くようにとおっしゃいました。
そうでございます。コドラク様の日記には、そのことが記されておりました。 アエラ様は孤独すぎ、ファルカス様は情にもろく、ヴィルカス様は激情家。それゆえに、優れた戦士であったとしても、導き手には向かない、と。 わたくしのことは、同胞団に参加するより前に、コドラク様は夢で見て知っていたようでございます。夢で共に戦った者が、わたくしであったと。そのこともあったためでございましょう。コドラク様はわたくしを高く評価し、次の導き手はわたくしにしたいと、数年かけてゆっくりと教えていこうと考えていらっしゃった、その矢先に、あの悲劇だったのでございます。
わたくしは、記者としてスカイリムに参りました。 しかし、今やアエラ様もファルカス様、ヴィルカス様も、たしかに「盾の兄弟姉妹」であると思っております。 取材は継続いたしますが、コドラク様の信に答えるためにも、同胞団にはこのままとどまりたく考えております。 なお、この「導き手の火炎」なる青い炎に、魔女の頭を捧げることで、わたくしの狼憑きも治療できるようでしたので、ついでに使用させていただきました。これでようやく、ぐっすりと休むことができそうでございます。
なお、これはイスグラモルの墓へ向かう途次、北の海に出たところで撮影したものでございます。 ウインターホールドの町から、魔術師大学の脇を抜けると、そこには極寒の海が広がっております。 おりしも天気は雪。 このスカイリム地方も、南のほうであれば街道には草花が茂り、蝶も飛び交っておりますが、北の果てはこのように寒く、ホーカー(トドのようなものでございますね)が生きる程度。 しかし、これより更に北、流氷の海の上に隠れ家を持つ隠者がいるという噂もございます。スカイリムの民は、なんとたくましいのでしょうか。
そうして(高速移動にて)戻ってきたホワイトランは、一転して明るく、なごやかであたたかな雰囲気の町でございました。 シロディールの鮮やかな景色と比べれば、たしかにスカイリムは寒々しく、色味に乏しい地かもしれません。ですが、だからこそ灯る火のあたたかさ、ありがたみがつくづくと身にしみます。 スカイリムには、タムリエル最古の都市であると言われるウィンドヘルムもございます。そこは今、ウルフリック・ストームクロークが首長を務めているはず。この歴史のある地方のレポートは、まだ少し続きます。どうか今しばらくお付き合いくださいませ。肝心の内乱がどうなっているのか、さっぱりレポートしておりませんしね! |