わたくし、睡眠は8時間と決めております。8時間ほど眠ることで、翌日の活動効率も上昇いたします。(※1) 宿屋のある市場を出て更に丘を登っていくと、ギルダーグリーンの大樹がございます。 キナレス聖堂のダニカ様にうかがうと、この木は枯れかけているとか。親木の樹液があれば蘇らせることもできるだろうとおっしゃいますが……そのために必要な道具は、ハグレイブンのいる場所にあるとか。いや……それはわたくしではなく、同胞団のかたに頼むなりされたほうがよろしいのではないかと。 さすがにこれは、わたくしの本道、内乱の取材に関係することはございませんし、なにより、わたくしごときの手には余るというものです。大変申し訳ございませんが、もののついで、もしなんらかの弾みで手に入るようなことがあれば、という程度でご勘弁願います。 ギルダーグリーンの広場のすぐ傍には、タロスの像がございます。背後に首長の館を背負う光景は実に壮観でございますが、その前で延々と演説していらっしゃるかたがお一人。 彼の演説や、いくつかお聞きしたお話から総合し、ようやくスカイリムの内乱の、大枠のようなものが見えてまいりました。
そもそもは、帝国がハイエルフを中心としたエルフの連合、アルドメリ自治領との戦争に負けたことが原因のようです。 その休戦協定の際に、アルドメリは帝国に対して、タロス信仰を禁じるよう申し付けました。 タロスは、元はタイバー・セプティムという人間の、ノルド族の男性でございます。彼が大陸の統一、英雄的な行為を成し遂げた結果、人間たちは彼を神格化し、タロスと呼び、大神の一人に加えて信仰するようになりました。 それによって、もとは八大神であった神々が、九大神となりました。 わたくしもウッドエルフ、エルフではございますが、記者とは極力、政治・宗教的には中立であるべきものでございますし、もともと宗教にはあまり関心がございませんので、人間の英雄が神になろうと、どうとも思いはいたしません。 しかしアルドメリのエルフたちにとっては、そうでございますね、「たかが人間ごときの男が神を名乗るなどおこがましい」といったところなのでございましょう。タロスを神と認めるつもりはないようでございます。 帝国は、アルドメリと友好的に休戦するためにその条件を飲みました。 しかし、自分たちの祖先、誇らしい英雄を否定されたに等しいスカイリムのノルドの中には、それを絶対に許せないと思う者が少なくないのでしょう。 ストームクロークの反乱は、ノルドがノルドらしく生きるため、という題目で決行されていると見受けられます。 しかし―――こういった政治的、宗教的な闘争は、表向きの理由と、権力者の真の理由とが裏腹であるのが常。権力を掴むために、純朴な人々の愛国心を利用していることもあるでしょうし、タムリエル全土の平安のためと言いつつ己が身の利ばかりを考えていることもあります。 さて、そのあたりの真意に近づくことは、はたしてできるのでございましょうか……。
ともあれ、同胞団の本拠である『ジョルバスクル』という名の建物は、わたくしにはとりあえず用もございません。 そろそろ首長・大バルグルーフ様のところへ向かうといたしましょう。そのついでに、執政であるエイドリアン様のお父上に剣を届けることも忘れてはなりますまい。 首長の館『ドラゴンズリーチ』に入りますと、ダークエルフの女性戦士が剣を抜きこちらに向かってまいりました。ここはおとなしく待ち受けて、ヘルゲンにドラゴンが現れた件での報告に来た旨を伝えます。 彼女の許可を得てついにお目にかかれましたのが、首長バルグルーフ様と、執政のプロヴェンタス様でいらっしゃいます。 プロヴェンタス様は、リバーウッドへ援軍を送ることで、ファルクリースという地を刺激することを懸念されましたが、バルグリーフ様は、自分の民が危機にさらされているのを黙って見ているつもりはないと一喝。イリレス様とおっしゃる先ほどの女性戦士に、援軍を手配するよう申し付けられました。 わたくしはと申しますと、ついでに頼みたいことがあるから、王宮魔術師のファレンガー様と話してほしいと告げられました。 なにやら、なしくずしに巻き込まれている気もいたしますが、とりあえずお話くらいはうかがってみるといたしましょう。 なお、そのままプロヴェンタス様にホワイトランについてお話をおうかがいしたところ、ホワイトランの街は、同胞団の本拠であるジョルバスクルを中心に作られていったとのこと。同胞団というのは、相当に長い歴史のあるもののようでございますね。 また、ドラゴンズリーチというこの砦は、古代ノルドの英雄オラフが、ドラゴンのヌーミネックスを倒した後、そのドラゴンを閉じ込めておくために作ったものであるとか。 ホワイトランの街は、なかなかに面白い歴史を持っているようでございます。
さて、こちらは王宮魔術師のファレンガー様でございます。 ドラゴン研究をしていらっしゃるそうで、ドラゴン対策の手助けとして、古代の石版をとってきてくれないかと頼まれてしまいました。 あの、わたくしは記者でございまして、冒険家でも傭兵でもないので……って、その石版というのは、ブリーク・フォール墓地にある? ……ひょっともすると、これのことでございますか? 【金の爪】を取り返す過程でたまたま手にいれてしまった、よく分からない石版……。 なんと、これがたまたま、ドラゴンの埋葬地を記したその石版だそうです! これでわざわざ取りに行く手間が省けましたね。 では、これでわたくしは失礼を―――。 と、思ったのでございますが、突然そこに、イリレス様がファレンガー様を呼ぶ鋭い声が割って入ってまいりました。
何事かと思えば、「近くにドラゴンが現れたから来て」と。で? 何故わたくしまで「来るべき」なのですか!? それはもちろん、戦いに赴くイリレス様のお命にも関わることでございますから、手助け程度であれば考えもいたしますが、ヘルゲンで襲わて逃げ惑っただけのことで、「誰よりもドラゴンについて経験がある」とおっしゃられても……。 ファレンガー様は好奇心満々で、この目で見に行きたいとおっしゃっておられます。バルグルーフ様は、イリレス様とファレンガー様と、両方を危険にさらすことはできない、街を守る方法を共に考えてくれ、と引き止めるご様子。 ……はあ。仕方ございません。バルグルーフ様からは、エンチャントのついた兜もいただき、ホワイトランに土地を買う許可までいただいてしまいましたし、ここは手をお貸しするのが正しき行いでございましょう。
それにしても、バルグルーフ首長はずいぶんと面白いおかたのようでございますね。 人々の噂では、弱虫に見られたくないといった見栄で兵士を動かすような人物、といった酷評もございましたが、民を守ることを第一と考えすぐさま行動に移す実行力もさることながら、イリレス様に「これは栄光か死かという戦いではない」と、生還するよう忠告するところなど、義侠心と強い思いやりのあるおかたのようでございます。 そのような首長をお助けするためと思えば、ここは潔く、記者だからなどと言い訳がましいことはやめにして、以前の狩人であるわたくしに立ち返るといたしましょうか。 幸いこちらにはファエンダル様という戦力もあることでございます。 街の中、門の前でイリレス様が、衛兵たちに檄を飛ばします。……興奮のあまり、ということでございましょうか。おっしゃっていることが支離滅裂な気もいたしますが、これはきっと、"外の世界"で発生している間違いなのでございましょうね。(※2)
いよいよ街の外に出ると、ドラゴンが目撃されたという西の監視塔へ向かいます。 いつの間にか、雨が降ってまいりました。まだ正午を少し回ったところだというのに、当たりは一転して灰色に代わり、暗く陰ります。 それに、一泊している間に、イソルダ様がおっしゃっていたカジートのキャラバンが、街の外に到着していたようでございます。……こんなタイミングでキャラバンのかたのお話をうかがうわたくしもどうかとは思いますが……。
左は店の窓口をしていらっしゃるリサード様。様々なものを取り扱っていらっしゃいます。 右の鎧姿の女性カイラ様は、キャラバンの護衛をなさっていらっしゃるのでしょう。隠密のトレーニングを受けることもできるようでございます。それにしてもお美しいかたでいらっしゃいますね。りりしくもしなやかな、カジート族ならではの美貌ではございませんか? 真ん中はキャラバンのリーダー・マランドゥル様でいらっしゃいます。上唇(?)から垂れる髭がなかなか貫禄のある風貌でいらっしゃいます。 他、アタバーという女性もいらっしゃるのですが、このかたはムーンシュガーの一種中毒なのでしょうか。かなり危うい感じがいたします。お客の前で変なことを言うなと、マランドゥル様にたしなめられていらっしゃいました。マランドゥル様の奥様でいらっしゃいますか? ちなみに、別の機会にお二人のお話をうかがうと、「帝国とストームクローク両方に武器を売れ。そうすればどっちが勝っても取り入ることができる」と言うマランドゥル様に対して、「そんなことをすれば、負けた方に武器を売ったと、勝った側から咎められるに決まっている」と指摘していらっしゃいましたね。
さて、ずいぶんのんきなことをしてしまいましたが、そろそろイリレス様を追いかけなければなりますまい。 西の監視塔は、たしかになにものかの襲撃を受けたような有り様になっておりました。 散開して生存者を探せ、という号令のもと、塔に近づきますと、かろうじて一人だけ生き残った衛兵がいる様子。 そして間もなく、空に朗々とした鳴き声が響き渡ったかと思うと、ドラゴンが……おや? ヘルゲンで見かけたドラゴンに比べると、色が淡いような……? ヘルゲンのドラゴンはもっと黒く、体表のトゲも際立っておりましたし、頭部の角もかなり特徴的でございました。 それに比べるとこのドラゴンは、いくぶんか小型にも見えます。 とはいえドラゴンはドラゴン。 わたくしは監視塔に上り、その屋上から弓を射ることにいたしました。 幸いドラゴンはわたくしを狙うことはなく、むしろ半ばまではわたくしの存在に気付いていたのかどうか。ともあれ何事もなく討伐することがかないました。 それにしても、時々聞こえる言葉のようなものはいったいなんなのでございましょうか。それに、「ドヴァーキン、やめろ」という声が……。イリレス様のものでも、衛兵のかたのものでもなく。そもそもわたくしは監視塔の上におりましたのですから、彼等、地上で戦う者の声など、張り上げる雄叫びくらいのものしか聞こえないはずでございます。
お二人、衛兵のかたに犠牲者は出てしまいましたが、ファエンダル様は……ああ、良かった、ご無事でいらっしゃいますね! しばしお姿が見当たりませんでしたので、万一のことでもあったのではないかと心配いたしました。 それにしても、ドラゴンとは……しかもそれを、わたくしたちで撃退することが可能だとは驚きでございます。 物珍しさに、ドラゴンの屍に近づいてみますと―――急にドラゴンの体が燃え上がり、しかし熱はなく、そこからなにか強い風のようなものが吹きつけてまいりました。 そして……おや、なにか、……なにかを、わたくしが得たような……? ドラゴンの、魂、でございますか? 近くにいらっしゃいました衛兵が、「おまえはドラゴンボーンだったのか」とおっしゃいます。 ドラゴンボーン? ドラゴンを倒し、その力を得ることができる存在? シャウト? 鍛錬せずにドラゴンのように叫べる? そういえば……ブリーク・フォール墓地にて、「力の言葉」とやらを習得いたしましたか。 試しにやってみますと、たしかに、なにやら強い風のようなものを吐き出すことができたようです。 ―――いや、わたくし、こんなことができても生活の役立つわけでもなく……。まったくもって、ありがた迷惑としか申しようがございません。 ともかく、バルグルーフ首長には報告に行かなければなりませんね。イリレス様はしばらくここで指揮を執るとのことですので、連絡係はお引き受けいたします。
ホワイトランへ向かう道すがら、突然地面が……いえ、空が揺れるような妙な衝撃がございました。 そして空の中に、なにやら響き渡る声。年経た男性の声で、ドゥ・ヴァ・キーン? と言ったように聞こえましたが……。 ドラゴンズリーチのバルグルーフ首長のところへ報告に上がりますと、帰途に聞いた声がグレイビヤードがわたくしを呼ぶ声であり、ハイ・フロスガーという場所でこのシャウトの使い方を学んでこいと申し付けられました。更に、ホワイトランの従士に任命されてしまいました。首長が与えられる権限の中で最高のものだそうです。 大変ありがたく、名誉なことかとは存じますが、本来の職務からどんどん離れていっているような気がいたします。 ……とりあえず。 せっかく土地、家を買う権利をいただいたことですし、ホワイトランにはバトル・ボーンとグレイ・メーンという、帝国、そしてストームクロークそれぞれに肩入れする名家もあるのでございますから、まずはこの地に、自宅を持つことを第一の目標といたしましょう。 その過程で取材を続け、落ち着いたところで、他の大きな都市にも出向いて政情を探ってみるのが良いかもしれません。 ハイ・フロスガーなる場所や、その他、住民のかたから頼まれているお仕事も、その中で果たせるものは果たし、報酬をいただいていくとして、いささか今日は疲れました。『バナード・メア』にて早く休みたいものでございます……。
※1:自宅のベッドで眠る場合と、宿などで一定時間きちんと休む場合、ステータスにボーナスがつきます。宿だとスキルの上昇率UP効果です。ちなみにこういった「付加効果」は、メニューの「魔法」の中にある「有効な効果」から確認できます。 ※2:「ドラゴンに殺されろっていうの?」「そのとおり」とか、よく分からない台詞になっています。「この戦いから逃げてノルドと名乗りなさい」というのもおかしな翻訳です。意味としては、「この戦いから逃げてノルドと名乗るつもりなの?」な感じでしょうが……。 |