一夜明け、さて、ただ薪を割っているだけでは旅に出た甲斐もないことです。 例の【金の爪】でも、探しに行くといたしましょう。幸いファエンダル様という、弱みをに……いえ、快くご助力くださるかたもいらっしゃることです。 ゆっくりと休んで朝7時半。ジャルデュル様の家を出ますと、今日は実に良い天気で、思わず感嘆の声が漏れてしまいました。 昨日撮影した宿の写真をご覧いただいてもお分かりかと存じますが、スカイリムはとにかく暗く、モノトーンの世界でございます。ヴァレンウッドからシロディールを経由して参りましたわたくしなどは、なんと物寂しい土地なのだろうと思うばかりでございました。 しかし、ただこうして晴れた日がありがたく感じられるなど、故郷では決して味わえなかった感動かもしれません。藁屋根の色、木々の色。遠くにそびえる峻険なる岩山。反乱軍に間違えられて逮捕されるなどという惨憺たる始まりであったわたくしの取材旅行ではございますが、このスカイリムの魅力を皆様にお伝えすることには、いっそうの使命を感じる次第でございます。
さて。 ファエンダル様を探しますと、どうやら早朝から薪割りでもなさったいたのでしょうか。アルヴォア様の鍛冶場近くに薪を置いているお姿をお見かけいたしました。 声をかけ、ついてきていただけるようにお願いいたします。 そしていよいよ、山の上の墓地を目指すことにいたしました。 道中、突然現れたオオカミを一射にて仕留めるところは、さすがファエンダル様。弓術のトレーニングを頼めるほどの腕前でございます。この分でございますと、わたくしはやはり戦わなくても良さそうで……。 とも言っておれませんので、通りすがりの古びた監視塔では、山賊たちからいくばくかの戦利品を頂戴いたしました。 戦利品取得のコツは、重量に比して売価の高いもの、でございます。売価が「重量×7」以上か、その前後であることが、わたくしの基準でございましょうか。これが帰途であれば、持てるだけのものを持てば良いのですが、これより探索に向かう以上は、ぎりぎりまで選別するべきでございます。
それから、忘れてはならないのが、コンパニオン(仲間。この場合ファエンダル様でございますね)への武器・防具の受け渡しでございます。 ついてきてくださるかたに話しかけることで、荷物を持っていただくことができます。ファエンダル様の場合、なんと普段着、防具は一つとして装備しておられません。いくらアーチャーでもこれではあまりにも心もとなく、ことにわたくしが決して前衛に出ないつもりであります以上は、もう少しマシな装備をしていただかないことには困ります。 こういった場合も、防具を渡せば自動的に身につけてくださいます。選ばれるのは「中で最も売価の高いもの」と耳にしたことがございますが、定かではございません。もっとも、そのあたりの山賊から頂戴したものではどれも似たり寄ったりでございますね。それでも、ないよりは格段にマシでございましょう。
それにしても今朝はあれほど美しく晴れておりましたのに、軽く山を登る間にこれでございます。空は曇り、雪が舞い散り、積もった粉雪は風にあおられて舞い上がります。 南の生まれのわたくしにはかなり厳しい環境でございますが、思えばファエンダル様は、このリバーウッドにしばらくお住まいのご様子。こういった厳寒の中で狩りをして生計を立てていらっしゃったのでしょうか。女性関係に関しましてはさておき、いささかの尊敬の念も覚えます。
ブリークフォール墓地には、どうやら、【金の爪】を盗んだ盗賊たちがたむろしているようでございいます。敵が潜んでいるのであれば、遠めの距離で隠密するのが得策。なにせこちらは弓使いが二人。いかに先制するかは重要でございます。 墓地の入り口前にいた山賊を一掃し、いよいよ墓地の中へ。かつて獲物を追ったヴァレンウッドの森の中と、この石造りの迷宮は、似ても似つかぬ場所でございますが、なにやら心が踊るのは狩人のさがでございましょうか……。
中に入りますと、男女二人の盗賊がなにやら話している様子でございます。幸いこちらにはまったく気づいておりませんので、隠密でそっと間合いを詰め、会話が聞こえる場所、そして弓が十分に効果を発揮する距離まで近づきました。 アーヴェル、というのが山賊の首領の名でございましょうか。【金の爪】という言葉も聞き取れます。 彼等とは別に、山賊の死体が一つ転がっておりましたところから見て、悪党にはよくある仲間割れも発生している様子。 ともあれ、気付かれない間合いから一射。呆気無いものでございます。
それにしても、ずいぶんと蜘蛛の巣が目立つ墓所でございますね。通路いっぱいに広がった蜘蛛の巣は、この程度の密度であれば進路を塞ぐことこそございませんが、あまり気持ちのいいものではございません。 ところどころにスキーヴァー(巨大なドブネズミでございます)の死体があるのは、山賊たちが始末したものでしょうか。それとも……スカイリムには巨大な毒蜘蛛が生息していると聞いたこともございます。その巨大蜘蛛の仕業ということも、考えに入れておかなくてはなりますまい。 どちらにせよ、用心して進むに越したことはございません。 道中、見つけました埋葬壺からはしっかりと小銭をいただいてまいります。洞窟や、遺棄された神殿などにある壺、埋葬壺には副葬品としてお金や宝石が仕舞われているものです。これを頂戴することは、決して咎められる行為ではなく、タムリエルの冒険者にとっては日常のことでございます。 それにしても、こうして獲物を追い、気付かれぬように隠密行動を心がけておりますと、故郷にて兄とともに狩りに励んでいた頃を思い出してしまいます。ファエンダル様のような軟弱も……いえいえ、女性とよろしくやることに対して積極的ではない兄でしたが、二人で獲物を追うという行為は、なにやら懐かしい心地もいたします。
幸いにして盗賊一味は、それほど大所帯ではない様子。入り口付近の二人以外には、途中で一人
見かけただけでございました。 墓所の外にも数人、たむろしていたのがおりましたが、これだけ大きな墓所の盗掘を行うにしては、いささか人員が少なすぎるようにも思えます。少人数で無理をして、全滅ということにならなければ良いのですが……その全滅に加担するであろうわたくしの申し上げることではございませんでしたね。
ほとんど無人の墓地内部を進んでいきますと、このような場所に辿り着きました。 ふむ……狩りとは、観察眼の勝負でもあります。 レバーをただ引いても柵が開かないのであれば、怪しいのはこのレリーフ。脇を見れば、同じような彫刻の掘られた柱が3つ。これは回転させることができるようです。 ……賢明なる皆様は、もうお気づきでございますね? 3対3。ですが壁の一部は崩れ落ち……。 下に崩れ落ちている一つに気付かないと、片っ端から試すことになるのやもしれません。ですが、それにしたところで最大でも3度だけのこと。この壁に掘られているレリーフにも気付かいなのでなければ、そう大した手間ではございますまい。 こういった仕掛けは、おそらくスカイリムの遺跡を探索するかぎり、幾度となくお目にかかることでございましょう。この墓所のものは、その中ではずいぶんと簡単なものに違いありません。 わたくしはあくまで記者でございますし、冒険などに血道を上げるつもりは毛頭ございませんが、いざというときのため、心しておいたほうが良さそうでございます。
柵を上げて進んだ場所にて、「盗賊」という書籍を発見いたしました。 読むだけでスリの技能が上昇するスキル書でございますが、スリなどと。わたくしは決して行うことはございません。 しかし、書物には大変興味がございます。少し読んでみると、この書籍は二巻目にあたるもので、一巻目の「物乞い」があるとか。「物乞い」を先に読むべしと書かれておりますので、気まぐれではございますが、そのとおりにすることにいたしましょう。 なにより今は墓所の中。盗賊もまだ残っているとすれば、読書の時間ではございますまい。
更に奥へと進み、狭い螺旋階段を降りたところで、壁越しに男の声がいたしました。 どうやら彼も盗賊一人のようでございますが、切羽詰まった声でございます。わたくしたちの足音でも聞いたのか(不覚でございます)、誰かが近づいてきていることには気付いたものの、しかしそれが誰かは分からず、わたくしたちを仲間の中の誰かだと思い込んでいるようでございます。 しかし、宝を独り占めしようとして【金の爪】を持ち逃げし、その挙げ句、「助けてくれ」と言うということは、何事か起こったのでございましょう。この蜘蛛の巣だらけの墓地を見れば、大方の予想はつきますが。 切り払わなければ進めないほどみっしりと張られた蜘蛛の糸でも分かるとおり、フロスト・スパイダーがアーヴェルを絡めとってしまったようです。 それにしても、人の背丈を越えるほど巨大な蜘蛛とは……。 わたくしたちにも襲いかかってきます以上、蜘蛛退治に来たわけではないなどと申してもおられません。 巨大蜘蛛を片付けてアーヴェルという名らしき男に近づいてみますと……えー、この干からびた死体、ロックピック(鍵開けの道具でございますね)を持っているところからして、仲間の盗賊のなれの果てでございましょうか。 とすると、やけに山賊(盗賊)の数が少なかったのは、幾人かは既にこうなってしまったから……? 自業自得とはいえ、憐れな末路でございます。 アーヴェルは、蜘蛛の糸を切り払って助けてやりますと、案の定、何故宝を分け合わねばならないと逃げ出しました。 これがわたくしの道楽による探索であれば、面倒くさいので放っておいても構いませんが、【金の爪】を持ち逃げされてしまっても困ります。今回は【金の爪】を取り返しに来た以上、追うしかありません。 しかし、行く手を阻むは魅惑の魂石(※1)や壺……いえいえ。ドラウグルたち。古代ノルドの墓にいるという、一種のゾンビでございます。 で、天罰覿面、わたくしたちが必死に追わずとも、ドラウグルに殺されてしまったようでございますね。おとなしくわたくしたちと来れば、こうはならなかったものを……。 遠慮なく、死体から【金の爪】を取り戻し、日記? マメな盗賊だと感心しつつ、……人様の日記を拝見するなど、たとえ相手が死者であれ趣味のいいものと思えませんが、この【金の爪】について、なんらかの情報が得られるかもしれません。リバーウッド・トレーダーの兄妹も、他にも価値があるものはあるのに何故これを、と訝っていらっしゃいました。 読んでみますと、「これで古代のノルドの力が手に入る」、「これがブリーク・フォール墓地の鍵」、「物語の広間へ行き扉を開ける」、「試練がある」と書かれております。 ………………。この奥に、その「物語の広間」があるということでございますね……。 とすると彼等盗賊は、この【金の爪】と「古代ノルドの力」についてなにがしかの情報を得、リバーウッド・トレーダーより【金の爪】を盗み出し、このブリーク・フォール墓地へとやって来たということでしょうか。
ともあれ、ここまで来てただで引き返すのも、まことに芸がないと申せましょう。試練とやらが気にはなりますが、進んでみることにいたしました。 なお、こういった遺跡にはトラップが仕掛けられていることも少なくございません。これは、床にある、模様の丸石を踏むと、壁につけられた棘つきの柵がこちらに向かって動く仕掛けでございます。 更に、狭い通路で揺れる斧。向こう側に鎖が見えましたので、迂回路がないかと少し探したのでございますが、いっこうに見当たらず。仕方なくダッシュで走りぬけ、……はいはい、ファエンダル様が死なないように、きちんと斧のトラップは解除いたしましょう。うっかりしておりました。わたくしがトラップを止めるまで、その場で待っていただくようお願いすれば良かったと、後になって気付いた次第です。(※2) ここからは、壁の棚に眠るドラウグルたちが相手のようでございます。 そして、これは油のトラップでございますね。無論、炎を放てば燃え上がる仕組みになっております。時には天井から油壷が吊り下げられていたりもするのですが、今回はそのような仕掛けはないようでございます。 奥に動き出しそうなドラウグルもおりますことですし、ここは、手習いで覚えた火炎の魔法でも使って、楽をすることにいたしましょう。近づいて起こした後は、いったん退避して燃やすだけでございます。ただ、ファエンダル様が巻き込まれては困りますので、今度こそ、少し待機してくださるようにお願いすることを忘れてはなりません。 油のために燃える通路と、ファエンダル様の援護射撃で、3体ほどやってきたドラウグルはあっさりと片付けることがかないました。
まだ先があるようでございます。 途中からは天然の洞窟につながり、壁には【光るキノコ】も見つかります。 これはスキーヴァー(タムリエルに馴染みのないかたは既にお忘れかもしれませんが、巨大ドブネズミです)の尻尾などとともに、錬金術の素材になりますので、しっかりいただいていくといたしましょう。 【光るキノコ】があるあたりは、洞窟が緑色に明るいのですぐにわかります。このキノコはたしか、水気の多い場所によく生えるのでしたか……。 更に先に進みますと、いよいよ「ブリーク・フォール聖域」と呼ばれる場所に到達いたしました。ここが例の、「物語の間」などがある場所でございましょうか。
そうして辿り着いた場所が、ここでございます。
なにやらいわくありげな扉……。先刻のレリーフと同じような仕掛けでございますが、どこにもヒントらしきものは見当たりません。 しかし、そういえば……アーヴェルの死体から拝借したおり、チラリと見た覚えがございました。 【金の爪】が鍵になっていることは、アーヴェルの日記より分かっておりましたし、その【金の爪】をよく観察してみますと……。 どうやら鍵を手に入れることが、開けるための暗号を手に入れることにもなるようでございます。簡単で結構とはいえ、いささか不用心な仕掛けであることも否めません。わたくしにとっては、あっさりと先に進むことができて何一つ文句はござんませんが。
更に進みました先にて発見いたしましたのが、左にある場所にございます。 明らかに人の手が入った石組みの橋がかかり、その奥に、祭壇のようなものと石棺がしつらえられておりました。 祭壇とおぼしき場所にほど近い壁には、謎の文字が彫り込まれたておりました。 その壁、でございましょうか。近づくにつれ、なにやら勇ましい声のようなものが聞こえます。ファエンダル様にはなにも聞こえていないご様子。いったいなにかと思い、ぼんやりと光る壁の文字に近づきますと、―――壁より、「揺るぎなき力」という「力の言葉」を習得……? さて、なんのことでございましょうか……? などとのんきに考えておりましたら、石棺から「ドラウグル・オーバーロード」が蘇ってまいりました。なにかありそうだ、という直観は、いつのときも役に立つものです。あらかじめ警戒しておりましたので、難なく倒すことがかないました。 しかもこのドラウグルは、【ドラゴン・ストーン】なるものを所持しておりました。 さて、これはいったいなんでございましょうか。よく分かりませんが、とりあえずいただいてまいりましょう。 傍にございました大きな宝箱より戦利品も獲得し、重くて持ち切れないものはファエンダル様に持っていただき、では、そろそろ帰るといたしましょう。 帰りは幸い、裏口とでも言うべき抜け道がございましたので、それを利用して外に出ることができました。 しかし……どう見ても断崖絶壁、歩いて降りる道が見えないのは……否応なく高速移動(※3)せよということなのでございますか?
仕方なくリバーウッドに戻り、『リバーウッド・トレーダー』にて、店主のルーカン様へ【金の爪】をお返しいたしました。すると、おお、よろしいのですか、400ゴールドもいただいてしまいまして!? なかなかの大金でございます。一瞬なりとも、「この爪を売れば50ゴールドか」と考えた我が身を恥じる次第でございます。 しかも、この手助けによって、店内のいくつかのものさえ、わたくしがいただいても構わなくなったようです。ありがたいことでございます。
そうこうしている内に、気がつけばもう深夜、12時を回ってしまいました。 ジャルデュル様の家で一晩休み、さて、明日は……そろそろホワイトランへと向かうといたしましょうか。 ファエンダル様にはこのままついて来ていただくのもよさそうでございますねぇ。
※1:魂石というのは、魔力を溜めておける不思議な石です。そこに生物の魂を封じることで、魔法の武器に魔力を充填したり、エンチャント(付呪。魔法効果などを武具につける)に利用します。 ※2:コンパニオンにはそういった指示も出せます。ものを拾うといったこと以外に、鍵を開けるなども、技能の持ち主であれば実行してくれます。 ※3:マップ上で使える瞬間移動。ただし時間は相応に経過します。一度訪れたことのある場所、という制限はありますが、便利です。ただし、旅の雰囲気は味わえないので、そこはお好みで。 |