魔ヶ魂放浪記

 

「Demon's Souls」とは

 SCEとフロムソフトウェアが共同開発した、アクションRPGです。
 いわゆる「RPG」なので、敵と戦って経験値を得、その経験値でキャラクターを強化しつつ、ストーリーを先へと進めるゲームなのは確かです。
 しかし「アクション」がつくので、その戦闘はコマンド式ではなく、ボタンを押すことで剣を振ったり魔法を放ったり、あるいは盾でガードをしたり、回避行動をとったりします。
 つまり、ある程度はアクションさせられないと、経験値かせぎができないRPGというわけです。

 「Demon's Souls」の場合、経験値とお金が、「ソウル」という同じもので表現されます。
 ソウルを支払って買い物をし、ソウルを消費してパラメーター(レベル)を上げるのです。
 これがもし並大抵の、ありきたりのA・RPGなら、序盤の敵は簡単に倒せて、少ないながらもソウルが手に入り、キャラクターも強くなり、プレイヤーは特になにも考えずとも、ある程度ガチバトルで先に進めるようになるのでしょう。
 が。
 「Demon's Souls」は違います。
 DQでいえばスライム、FFでいえばゴブリンに値する最も弱い敵、「奴隷兵士」というのだそうですが、この最弱の敵にすらキャラクターは殺されます。初期防具にもよりますが、無防備に3〜6回ほど攻撃を受けたら、死にます。全身鎧の一番頑丈そうなキャラクターでさえ、殺されます。
 ちょっと強い敵だと、三度ほど連続で斬られたら重装備の騎士ですら死にます。
 油断も隙もありません。
 相手の攻撃をガードする、あるいは見切ってかわす、あるいは弾くといった行動の後に反撃するのが、「Demon's Souls」の基本なのです。

 あちこちのプレイ記を拝見しますと、ある程度進んで防具や武器が良くなり、魔法もたくさん覚えられるようになると、けっこうガチで行けるようになるようです。
 どうやら、序盤が最も厳しいという世にも珍しいゲームのようです。なにせ、チュートリアル後の最初のエリアをクリアするまで、キャラクターの強化ができないのですから。
 しかも、死ぬとその場に、持っていたソウルを落としてしまいます。お金も経験値も落としてしまうのです。もう一度そこまでいけば回収できますが、その道中でまた死んだりしたら、パアです。パア。消えてしまいます。残るのは、また死んだそのときに持っていた最新のソウルのみ。

 これでは救いがなさそうですね。
 まあ、そもそもアクションが苦手な人には遊べないゲームなのは否定しません。そういうゲームもあっていいと思いますが、それはともかく。
 アクションがあまり得意でない人にも救いはあります
 それは、落とすのはソウルだけ、ということです。
 そして、スタート地点になる「楔の神殿」に戻れば体力はフル回復するということです。
 つまり、回復アイテムを使わずに進める範囲を繰り返し、アイテムを拾い集める、神殿ではソウルで回復アイテムを買う。こうすれば、「三日月草」という一番基本的な回復アイテムならたくさん持てるようになります。
 それなら、なんとか一戦をしのいで安全になれば、体力を回復させられます。

 がんばって最初のデーモン(中ボス)に辿り着き、倒すことができれば、キャラクターの強化ができるようになるのでガラリと変わります。
 最初のデーモン「ファランクス」は、道中で手に入る「火炎壺」というアイテムさえあればかなり楽に倒せるので、ここまで辿り着いておきながらこれが越せない人というのはいないと思います。
 あとは、腕に自信のある人はどんどん先に進み、自信のない人は弱い敵を相手にソウルをちまちまと集め、キャラクターを強化してから進めばOK。

 超絶難易度、というウワサがかなり先走っていますが、高難易度なのは最初も最初だけじゃないか、というのが私の感想です。

 

キャラクタークリエイションと生まれ

 最近のRPGのお約束として、職業―――クラスと表現されたりもしますが、キャラクターの傾向が存在します。「Demon's Souls」では「生まれ」と言います。

 ゲームをスタートすると、かなり細かいキャラクターメイキングに入ります。顔の骨格などから細かくいじるタイプで、最近の国内RPGだと「白騎士」みたいな感じです。
 男女の性別を選び、顔を作り、「生まれ」を選びます。
 「生まれ」は10種類あります。
 重装型の「騎士」、重層型かつささやかな回復魔法を使える「神殿騎士」、装備はやや薄くなるものの物理型で回復魔法が使える「神職」。
 装備が少し薄くなると、バランス型の「兵士」、弓を持った「狩人」、MP回復の指輪を所持している魔法剣士型の「貴族」。
 さらに軽装になると、運が高くアイテムドロップ率のいい「盗賊」、マッパで防具を装備していないが肉体能力の高い「蛮族」、器用でいろんな武器を扱いやすい「放浪者」、魔法が得意な「魔術師」。

 アクションが苦手なら、防御に恵まれた「騎士」がイチオシです。
 どんなに地味だろうと序盤の雑魚を繰り返し倒してソウルをかせぎ、回復アイテムを購入しつつ、ドロップアイテムを拾い集めれば体力のケアはなんとでもなります。
 防御力が低い「生まれ」だと、奴隷兵士の攻撃にすら数度耐えるのがせいぜいになってしまいますし、どんなにアイテムドロップ率が高くても、攻撃を受けてはそのたびに回復するのでは、アイテム消費が上がってしまいます。
 それくらいなら、頑丈なキャラクターにしたほうがはるかにマシなのです。

 

極上の緊張感

 初めて「バイオハザード」をやったときのことは、今でも鮮明に覚えています。
 ナイフのみでクリアとかいうバカなことをやったのも忘れがたい思い出ですが、なにより鮮烈だったのは、開始して間もない廊下の出来事。
 いきなり窓をぶち割って飛び込んできたゾンビ犬にどれだけ驚いたか!!

 ゲームにはパターンが存在します。
 ゲーマーはどんどんそれに慣れていく結果、「あ、この辺になんかありそうだな」とか「こういう場合は遠回りに見えるほうへ行くとアイテムがあるんだよな」とか、読めてしまうことが多々あります。
 バイオの時代はまだそれほどゲームが溢れていませんでしたが、それでも、心のどこかで「変哲もない廊下では何事も起こらない」という固定観念があったのです。
 それを破って、なんの前触れもなく乱入してきたゾンビ犬には本気で驚き、ビビり、めちゃくちゃドキドキして面白かった、それが私の大切な思い出です。

 「Demon's Souls」には、その、いつの間にか植えつけられたお約束を意図的に破る、意地悪な仕掛けが満載です。
 それが難易度にもつながっています。
 逆に言えば、どれほど最近のゲームが「お約束」を守ってきたのかに呆れました。
 建物に入った、入口の脇の暗がりにひそむ敵。
 いきなり背後から当たる矢。
 「初見の敵がいる〜」とのこのこ近づいたら今までの敵よりあからさまに強力な敵に惨殺。
 何度か味わうと、新しい場所を探索する緊張感がハンパなくなります。
 マップ表示がないのも、このゲームの場合は妥当です。

 そういったところはとことんリアルです。
 SFなら、衛星からのマップ情報を携帯端末に映し出す、といったこともできるでしょうが、中世的な、あるいは現代の平凡な世界では、周辺マップや自分の位置を見る方法はありません。
 だから、楽しいのです。
 見知らぬ場所を、右も左も分からないまま、ここがどのあたりになるのか、どこになにがあるのか見当がつかないまま、ひそむ敵を警戒しながら探索する。
 一本道からちょっとはずれたら、もうそこがどこか分からないし、どうすれば元のルートに戻れるのかも判然としない。強い敵いないよね、いないよね、と心配しながらじりじりと、迷子風味のまま探索して回る。
 イヤな人はイヤでしょうが、これがどうしようもなくドキドキしてハラハラして楽しい!!
 死んでもほとんどペナルティがないゲームならともかく、死んだら、せっかく集めたソウルを落としてしまいます。しかも、そこがどこかよく分からないような場所とか、なんとか強敵(と言っても雑魚)を倒して進んだ先だったら? 回収に来れるかどうかも確信できないのです。だから極力死なないように進むしかなくて、油断ができません。

 では、そんなドキドキハラハラの一幕を、ある日々のプレイ記からどうぞ。

 

2009.2.20 ボーレタリア城クリアまでの道のり

 「騎士」でスタートし、数日にわたって城門前から中盤をうろうろした私。
 怖いのは、「青い目の剣士」でした。
 雑魚中の雑魚である奴隷兵士、それに毛が生えた程度の弓兵や剣士、火炎壺を投げてくる兵士、たいまつで殴りかかってくる兵士。このへんは問題ないのですが、その中にあって抜きん出た強さを持つのが、青く光る目の剣士です。
 大きな盾を持っているのでこっちの迂闊な攻撃はガードするし、長大な剣からは高威力の一撃。盾を使った攻撃はこちらのガードを大きく崩すので、その隙に突きを入れられたりもします。
 これが……こいつが……。
 最初の壁でした。

 二度ほどはこいつをスルーして先に進んだのですが、こいつもいわば雑魚なのです。いつまでも怖がってはいられません。
 でも戦うとなると、そこまでに集めたソウルを落としてしまうし……。
 でも戦わなかったらいつまでもビクビクしてなきゃいけないし……。
 そしてある日覚悟を決めて、リベンジを挑むことにしました。
 奴隷兵士や剣士と戦って、バックステップでかわすことや、普通に歩いて移動してかわすこと、ローリング、パリィ(タイミングを合わせて相手の攻撃を弾く)を練習し、いよいよ青目の剣士のところへ。
 そうしてじっくり向き合ってみると、攻撃が大振りなので、普通に歩いて下がることで充分に回避できることに気付きました。
 相手の攻撃が終わったら近づいて斬れば、あまり効率はよくないもののダメージは与えられます。
 ただ、きゃつめ、回復薬を使うから厄介です。
 だから、押しては引いては湯隅なく攻防をつづけるか、あるいは、相手が攻撃を空ぶりしてる間に素早く背後に回り込み、「致命の一撃」で大ダメージを与え、そこから一気にトドメをさすか。

 ふむ、戦える。
 そう確信した後、じりじりと、まだ行ったことのない場所へ進んでみました。
 青目の剣士がいるところから、さらにまっすぐ進んだ先。ここを抜けて行くことで、スタート地点近くのドアを開けることができるようになる、と聞いたのです。
 入った先にあるのは、下へと続く螺旋階段(といっても四角い壁に沿ってますが)。
 下を見ると……ああああ、いる。たいまつ持ったヤツが何匹かまとまってる。こんなところに突っ込んだらガードしきれないだろうし、足を踏み外して落ちたり死ぬに決まってるし。
 じりじりと階段を降りることにしました。
 そうして一匹ずつおびき寄せ……あれ? ………………。えー、奴隷兵士に思考能力はないのか、得意のジャンプ斬りでこっちに飛びかかってこようとするのはいいのですが、私は上、ヤツは下。そして、そこは曲がり角、二人の間には真っ暗な穴。そんなわけで、飛びかかるものの階段の高さが壁になってこちらにはとどかず、勝手に落ちて行ってくれます。
 しかも。
 階段のところどころに火薬を満載したタルがあって、奴等、ここでたいまつを振り回してしまうのか、勝手に自爆。
 なんか、ほとんど戦わずに下まで辿り着きました。

 そうしてショートカットを一つ完成させ、ふと迷います。
 ソウルは2000ほど溜まっているので、一度これで回復アイテムを買いに戻ろうか。
 でも、神殿に戻ると敵が復活してしまうという問題があります。ショートカットの道は開いているものの、また戦いながら戻るのは大変そう。
 どうしようかと迷った挙げ句、このまま行くことにしました。
 道を引き返して青目の剣士のいたところに戻り、今度は先へ進みます。
 その道中、オストラヴァというNPCを助けるイベントが起こる(?)場所へ行けるというのでよくよく見てみると、たしかに、松明兵士に囲まれて戦ってる騎士がいました。
 え? でもなに、敵兵士6匹ほどいるよね?(汗
 こんなところに飛び込んでもナマスにされかねないので、ここは、さっき拾ってきたライトボウガンの出番です。矢は少ないのですが、使い惜しんで死ぬくらいなら使いきったほうがマシ。ちょっと高いところからチクリチクリと撃ちこんで数を減らし、無事にオストラヴァを救出。
 お礼にと望遠鏡をもらいました。遠くがよく見えるそうです。このゲームに限っては便利そうですが、変なところで使うと背後から攻撃されそうで怖くも……。安全を充分確認してからなら、役立ちそうです。
 ところで、ここで問題が一つ。
 オストラヴァを何度か助けてやると、「楔の神殿」に現れてそこにとどまるようになるそうです。が、あの、すみません。あなたの体力、もうミリしか残ってませんよね?(汗
 なのにのこのこと進んでいって、「キャーッ! 青目剣士と戦ってる―――ッ!?」
 おまえなに考えとんねん回復してから戦うか逃げるかせぇよボケ!! と思いながらあわてて加勢し、オストラヴァのほうを向いている背後へ回ってざっくり。はー、やれやれ。アンちゃん、もうええ子やから変なことしとらんでじっとしとき。心底そう思いましたが、またこいつのこのこと……ッ!!
 ある程度離れてしまえば、動きまわらなくなるそうです。
 なので遠ざかろうとしたところへ、なんか、今、悲鳴聞こえたような……?
 そーっと見に行ってみると、―――「霊廟の鍵」というアイテムが落ちていました。
 これ、オストラヴァを守りきれば、あとは神殿で彼と話していくことで手に入るアイテムだそうです。つまり彼は帰らぬ人に…… orz

 オートセーブが充実しまくっているこのゲームでは、リセットしても、こういう大きな出来事の前に戻ることは考えられません。
 仕方なく諦めて先に進むことにしました。
 ……先?
 先って、どっち?(汗
 えっと、どこ行けばいいの?
 ここどこ?
 ウワサじゃ、この城には赤い目の剣士がいるところもあって、そいつの強さははるか先に出てくる敵と同じレベルで、つまり今の段階じゃまず勝てない相手で……。
 寄り道した途端に自分の居場所を見失い、どこへどう進めばいいのか分からなくなったのです。
 仕方ないのでこわごわと、なにか聞いた覚えのある場所、見た覚えのある場所に出ないかと徘徊しました。
 赤い目の子と出会わないことを祈りながら……。

 幸いにして見た覚えのある場所に出たので、やっと安心して先に進むと、ドラゴンです。
 うっかり進むとブレスでこんがり焼きあげられます。
 ルート上に雑魚がいて邪魔なので、少しは減らさないと、引っ掛かってしまって通り抜けられなくなりそうです。
 前へ出て、こちらに反応させてからバックして安全なところで戦います。
 これを何度か繰り返したら、今度はドラゴンを召喚(違います)するためにまた前に出て、ドラゴンがきたら引き返します。
 これで橋の上の雑魚が何匹か巻き込まれて死んでくれるので、あとはドラゴンの飛び去ったのを確認してから、×ボタンを押しっぱなしにしてのダッシュで一気に対岸へと走りぬけました。
 まあなんていうかここのドラゴン、モンハン的にたとえると、「火耐性−20の上位装備で、怒ったG級リオレウスの火炎ブレス食らった」くらいのダメージです。つまり、攻撃くらったらほぼ即死。ぶるぶる。
 でもかっこいいんスよ!!

 それはさておき、えっちらおっちら進んでいくと再びショートカットが誕生し、同時に、ついに、デーモンへの扉が開きました。
 ここのデーモンは弱いと聞いていましたし、有効なアイテムの火炎壺も10個以上。金属武器に炎をまとわせる松脂も3つ手に入れたので、大丈夫だとは思います。
 でも、一度神殿に帰ることにしました。
 体力を回復し、武具を修理し、気を引き締めて再び王城へ。
 そして、無傷でとはいきませんが、特に危なげなく撃破です。

 これでやっとキャラクターを強化できるようになったので、まずは防御力です。
 体力、頑強をメインに上げ、筋力も少しアップ。
 これでHPとスタミナ、物理防御力に攻撃力が上がりました。
 武器も愛用のロングソードとカイトシールドを少し強化しました。
 これで、まだしばらく王城をうろつこうと思います。
 少なくともこのエリアくらいは楽に歩き回れるようにならないと、安心して先に進めません。