過去ログ


2004/10/16 (土)   冬→夏なんだってば!

 夏の陣が先だと思っている人がいるらしい……。
 冬の陣が先である。
 ちなみに、この時にはもう秀忠が二代将軍になっていて、家康は退いた後だ。

 関が原の戦いで天下饅頭をゲットした(寄越せと言う力を得て手に入れた)家康は、将軍に任命された。
 幕府・征夷大将軍っちゅーのは、政治&軍事機関と、その長である。朝廷(天皇)の所有物である日本という国の、最高権力者なのだね。
 大阪の陣は、この後に起こっている。「ヒトムレ見上げる徳川幕府」から十一年後の一六一四年のことである。
 つまりこの戦いは、家康の将軍就任を認めず、豊臣家こそが日本の最高権力者であるべきだ、と起こった戦いであり、また逆に、今も根強い影響力を持つ豊臣家は、つぶしておかないといつか大軍を作り出して攻撃してくるかもしれない、今のうちに徹底的に崩壊させねばならん、として起こった戦いである。
 天下饅頭は家康のものになったのだが、それを認めない豊臣チームとの戦いである。

 この冬の陣で家康は大阪城を攻めきれず、ずいぶん苦戦した。つか、ほとんど負け戦だった。寒さに凍え兵の食料も尽きて、家康は和睦を申し入れ、拒まれている。
 ところがである。
 大砲の弾が一発、淀殿(長政とお市の娘。浅井家が滅んだ後、お市が柴田勝家に嫁ぐと一緒に行った。勝家が秀吉に負けた時、お市と勝家は自害したが、娘たちは秀吉に保護された)と侍女のいる部屋に飛び込み、侍女が淀殿の目の前で何人か死んだ。
 で、淀殿がパニック起こして、秀頼に和睦しろと強く言い始めたのだ。
 このおかんに逆らえない若殿様は、それで仕方なく和睦する。
 真田丸が有効に機能したのは実はこの冬の陣で、夏の陣では役立たずになっていたことは、こっそり付け加えておこう。
(ちなみに、真田丸ってのはあんな大砲のことではない。砦である。守りの薄いところに築いたもので、徳川の軍勢に囲まれるような、ものすごく不利な位置の砦。この砦を利用して、挑発したりいろいろがんばって戦った場所なのだ。とにかく幸村は、不利な状況、少数での戦いばかり繰り返している)

 ところが家康は、この和睦で終わらせる気はなかった。
 ハナっから、態勢さえ整えたら、またすぐ戦を仕掛けるつもりだったのだ。
 難攻不落の大阪城も、何重にも巡らせた堀を埋められては丸裸。約束では一番外の堀だけだったのに、内側の堀も、家康は次々に埋めてしまう。
 こんなふうに、和睦の時にかわした約束を破り、従えるはずもない要求をして挑発し、またすぐ開戦に踏み切らせている。
 夏の陣の大阪城は堀がなく、しかも天候は夏。暑いのは暑いが、寒さに凍えるほど深刻ではないわけで。
 豊臣側で主だった武将が相次いで亡くなっていたのもあって、これはもう完璧に分が悪かった。

 このハナっからの負け戦で、真田幸村率いる一軍が、家康の首だけを狙った猛烈な攻撃をしたのは承知の通り。まさに鬼気迫る迫力で、少数なのに軍勢の中を突っ切る突撃をかましてくる。
 けんども、結局は多勢に無勢だった……。

 関が原の戦いは、家康が天下人になるための最後の一歩。この実績にものを言わせて、権力を手にするための戦いだった。
 対して大阪の陣は、天下をとった家康が、後難の憂いを断たんとして起こした戦。豊臣家がそのまま残っていては、秀頼をかつぎあげて、また一大決戦が起こるだろう、と。(この開戦の口実も有名だ。釣鐘に刻まれた言葉を、無理やり徳川をないがしろにし豊臣を尊ぶ意味だろう、と解釈したというヤツ)
 最大勢力たる豊臣家を下した徳川家は天下唯一の巨大な存在となった。
 以後の徳川幕府の軍事的な意味での政策は、全てが「他に強力な大名が出ないようにする」ことに集約される。大金を使わせる目的の参勤交代とか、妻子を江戸に置く(人質)とかね。
 そんでこれは、視野に入れていなかった外国からの脅威を受けるまで、二百年の間続くのであった。


2004/10/17 (日)   ところで戦国時代ってナニさ?

 という、ごく基本的なことのほうが、かえって難しい。

 んーと、ものすごく簡単に言うと、足利幕府が力をなくしたのが、戦国時代のはじまるキッカケ。
 既に書いてるとおり、幕府の「将軍」は政治・軍事のトップである。
 けどその将軍の座にいる奴が、どうも頼りないというか、いるんだかいないんだか、よく分からなくなってきた。
 っつーか、ホントなら一番強くないといけないはずの足利将軍が、他の人に「たしけて〜っ」とすがりつく有り様だから、まあ、ちょっと野心のある奴は、「だったら俺のが将軍に相応しいじゃん?」と思うでしょ。
 ものすごく軽く書けば、そんなもんである。うむ。

 幕府という中心部がこうなると、周囲のほうが強くなる。
 無能な幕府より、近隣の豪族とか大名のほうが、せっせと自分の領地に開発したり、新しい技術取り込んだりして、がんばってたわけよ。
 この頃丁度、外国からいろんな技術が輸入されてもきたしね。鉄の農具とかも普及した。今までは木製のスキとか使ってたから、固い土地は耕せなかったんだけど、これが鉄のクワで耕せるようになったり。
 こうなると、有能でやる気のある領主を持ったら、大変は大変だけど、苦労しただけの利益は出るようになる。
 有名な信玄堤(武田の信玄くんが幸村EDで指揮してるあれも、この史実から出ていると思われ)なんかもそうだね。この技術も、少し前に輸入されたもの。大変な工事だったけど、がんばって従事して完成させたら、水害がなくなって田畑にできるところも増えて、結果的に領地はものすごく良くなったのだ。

 ここに、「実質的には空白になったトップの座」と、「トップに相応しい有能な選手」が揃った。
 そんなわけで、輝け青春!目指せ栄冠!戦国トーナメントいよいよ開催決定!!となったのである(←ぉぃ

 ちょっと大雑把に「会社」にたとえてみよう。一口に戦国大名といっても、それぞれにカラーがあるのである。
 朝廷は「日ノ本商事」の「オーナー」な感じだ。
 足利将軍は「頼りない社長」。
 今川は、社長の近い部下(家臣)にあたる筋の人だから、「本社の常務」とかかな。北条さんとかとの派閥争いとかもうまく乗り切って、一定の権力を保ってきた立場。
 武田・織田は「支社長」。地方の支社をどんどん発展させた凄腕たちだ。そのノウハウをもって、いよいよ本社を切り回そうと社長の椅子を狙うのである。
 徳川は、今川派閥の中の一人で、「部長」くらい。これが、苦労しただけにセコいながらも堅実で利口な世渡り上手。名古屋支社から来た織田さんのほうが、しっかりした経営手法もってるし勢いもあるよな、と思ったら派閥を乗り換えた。そうしていく中で、着実に自分の地位を向上させていくのである。
 豊臣は「平社員」。それが、とうとう本社で重要なポストについた織田さんに気に入られ、いきなり課長就任、次は部長、と異例の出世街道まっしぐら。しかも、織田さんが明智さんのせいで失脚すると、織田派の連中をとりまとめて明智さんを失脚させてしまったツワモノだ。
 こういったメンバーが、「日ノ本商事」の社長の座を巡って争う中へ、変り種も首を突っ込んできた。それが長尾くん。……「長尾って誰?」と言われそうだ。長尾くんは、派閥になんか興味のない、「部長」くらいかな。別に社長になる気なんかもない。ただ、「元専務」の上杉さんが失脚した時、「俺の地位と名前とやるから、仕返ししてくれよぉ」と頼んできた。更には村上さんにも「秋田支社の武田のせいで路頭に迷っちゃって妻子を食わせることが……」と泣かれ、「私利私欲に走り社内を騒がすとは言語道断!」と……。
 いや、だからだいたいこんな感じなんだってば、マジに!

(念のため断っておくと、私の記憶違いや勘違いはあると思われます。ただ、人の名前や関係に多少のミスはあったとしても、こういう連中がなんかこんな感じに角付き合わせたってことだけは確かです)

 ともあれ、これが戦国時代のハイライト部分である。
 なんか一気に浪漫とかが薄れた気もするが。
 幕府の弱体化に乗じて、地方の実力者がいっせいにくわだてた下克上。その実力者の派閥内部でも下克上が相次いだ。
 正義は、「最も有能な人が社長になったほうがいいじゃん」。負けたのは能力が低いからで、そんな人に「日ノ本商事」任せていいわけ?ねえ、いいの?ってな具合。

 ちなみに、戦国時代というと戦ばかりクローズアップされるが、十五〜十六世紀は、先にちらりと書いたけど、海外からの技術や思想が流入し、日本が大きく動いた時代でもある。
 旧態依然とした体制や設備に固執する者は負け、柔軟に新しいものを取り入れ、活用した者が勝ち残り始めた。
 信長も、エキセントリックな反面、経済効果を考えた、あの有名な「楽市楽座」なんかも行っている。いや、楽市楽座も当時にしてみればものすごく革新的でドッカーンだったんだけど。
 十五世紀の終わりから十六世紀にかけて入ってきたもので、十六世紀半ばには日本の産業革命が起こったと言ってもいい。
 そして後半、無双で取り上げられたような、最後の大トーナメントが始まるのである。それは十七世紀がはじまって間もなく、徳川家康が正式に将軍になるまで続き、その残り火すらも、大阪の陣で消え去ったのであった。


2004/10/18 (月)   歴史の授業

 一五四三年、種子島に鉄砲伝来。
 宣教師フランシスコ=ザビエル。
 本能寺の変。信長が明智光秀の謀反で討たれた。これを下克上という。
 関が原の戦い。石田三成が負ける。
 一六○三年、徳川幕府が開かれる。
 一六一四年、大阪………………。
 ……こんなんのどこが面白いの? なにが分かるの? こんなもん暗記させてなんか意味あるの?

 違うの、違うんだよ。こんな暗記と歴史は違うのよ。
 伝来した鉄砲が長篠の戦いで火を拭くアクションスペクタクル。その鉄砲を大量生産できた背景には、必ず経済の発展と技術の躍進がある。当然、そこに楽市楽座というものも関わらせることができる。信長だけが大量に鉄砲を持ったのは、重要性に対する意識の違いもあったけど、そもそも、「大量に買う金があった」からなのだ。それは、楽市楽座などの経済政策ゆえのものなのだ。
 また、伝説の三段撃ちとだけ言うよりは、ホントはそんなに整然としたものじゃなかったって言われてる、とかいうちょっとしたウンチクがあれば、また深みが出る。
 下克上、なんて言葉一つ覚えさせるより、つか、ひどい奴は勘違いしてるぞ。下克上は明智が織田討ったことだ、って。戦国時代そのものが下克上だらけだったわけだし、何故それが起こったかのほうが重大だ。権力者の無能化・形骸化・怠惰に傲慢、それに対する地方の豪族や大名の実際的判断力、それゆえの台頭とかがある。織田や武田、徳川、今川、誰も彼も、有能だから天下取りに出馬したのだ。領地をおさめ、富ませるものすごい手腕があって、だから戦えるだけの力をつけることができた。だから戦うことができた。そういう、ものすごいリーダーたちだったのだよ。
 関が原の戦いが起こった理由。それでなにがどうなったかを知れば、「だから大阪冬の陣が起こったのさ」と言える。二つは明確になり、違うものとされつつ、ようやく本当に連結する。
 幸村の英雄ぶりについて、物語でいいから教えればいい。真田十勇士という架空の物語でもいいから、「面白いもの」に触れさせれば、俄然、歴史は暗記ではなく興味の対象になる可能性を秘める。

 くだらん授業で暗記させるより、映画・マンガ・小説・ゲームを問わず、面白いドラマを紹介して、そこに出てくる「人物」にでいいから興味を持たせ、一つの物語、時の流れ、人の生き方として理解させたほうが、絶対に肥しになると思う。
 ゲームなんてしない、というクソマジメくんが記号を暗記しているより、戦国無双プレイしてる子が、慶次が強いから好きになって、そこから「花の慶次」に行き、前田利家とかの名前を自然に覚え、あの時代の哀しさとか楽しさを知るほうがより豊かだと、私は思うのであった。


2004/10/19 (火)   豊臣と徳川の功罪(無双とはあまり関係ない歴史の話です)

 ちょいと質問があったので。

 秀吉のなした「悪事」、朝鮮出兵。これは今でも国際関係をギスギスさせる理由になっている。
 そもそも何故侵略戦争をしかけたから話そう。
 一言で片付ければ、「領地拡大」と「勢い」のためである。

 まずは「領地拡大」のほうから説明しよう。
 何故に領地拡大したかったのか。
 それは「戦功への恩賞」のためだった。

 江戸時代でも変わりないのだが、いいことをすると「百石加増」となったりする。この「石(コク)」というのは米のこと。更に言えば、その米がとれるだけの領地ということだ。
 江戸時代の公務員(武士)の給料は、お米だった。「三十俵二人扶持」とか言われている。要するにもうそのまんま「タワラ三十個分のお米」が年収なのである。バカ安だとかいうことは、今回の議題に関係ないので説明しないけどね。
 で、大名だと、米そのものではなくて、「毎年それだけのお米がとれる土地をもたせてあげるね」って形で支払っていたのである。領地=給料なのだ。

 これでお分かりでせう。
 「よっしゃすげーヤツの首とったぞ!!」という奴に、特別ボーナスをあげることになる。「よーし前田くん、君ものすごくがんばってくれたから、こことここの土地をあげるぞぅ」「おお、ここから毎年二十石の米がとれるなぁ。これで領民たちが食べていくのも楽になるから、年貢を少し増やしても負担にならないな。余ったお米は売って他の物を買おう」ということになる。
 ところがこの頃、あげる土地がなくなってきてしまったのであるよ。
 だからよその国の土地をとるしかなくなったのだ。
 もーぶっちゃけ、「あそこの土地、奪い取ってきた奴にやっちゃおっかな〜」なのである。

 そしてもう一つの「勢い」。
 説明するのはイヤになるくらい、そのまんまの意味である。
 今まで戦いつづけた勢い、どんどん成長してきた勢いを、殺したり、あるいは他の方向に転換できなかったのだ……。と、いう解釈をしている史家もいる。

 まあ、なんにせよ愚かだわな。
 アイディアマンだったはずの秀吉は、もうどこにもいなかったとしか思えない。
 秀吉の最大の罪、そして失敗は、朝鮮出兵という出来事に象徴される「戦国の継続」だったと私は思う。倫理的にとか道徳的にじゃなく、こんなことをしたから家康に天下とられたのだ、という意味での大失敗。

 この秀吉の失敗を、理解していたのかどうかは知らない。もしかすると、ハナっから「これ」が家康の描いていたビジョンなのかもしれない。だとしたら、家康は偉大だ。
 「これ」っていうのは、戦国の終焉である。戦をさせないような国の仕組み作りである。つまり、戦国と泰平を、きっぱりと切り分けたことである。
 「もう戦っちゃダメだよ。ボクとじゃなくても、他の人ともだよ。今ある土地を、より上手く開拓していくんだよ。悪いことしたら領地削るよ。そんで、いいことした人にあげるよ。それとも、国替え(Aくんの領地とBくんの領地を取り替えてしまう)しちゃうよ」。
 家康(徳川幕府)は、こうした。
 自分が一番大きな勢力になり、逆らう者がとりあえずいなくなった束の間の時間に、自分に歯向かう者が出ず、また、不満をなるべく持たせないか、持たせても武力決起につながらない仕組みを作るという、ものの見事な内政を行ったのである。
 徳川独裁、という形ではあるが、家康はきっちりと、戦国と泰平を切り分けた。これはこれで、一つのものすごい解決であり、成功だったと言っていいかもしれない。

 無双の台詞に出てくるような、ヒューマニズムに溢れた「泰平の世のため」ではなかったろうと思う。
 もっと現実的で実際的な判断で、「これ以上戦続けてどうすんのさ。もうやめようよ。あんまり意味ないでしょ。それともボクと戦うってーの?」と決めたのである。
 足利幕府が崩壊した後の、新体制を樹立させたのである。

 ただ、家康の作った国はとことん保守的だった。
 猜疑心と警戒心の塊だった。
 平穏を揺るがすようなものは全て排除したため、発想もごく限られてしまった。
 もちろん、鎖国という閉ざされた小さな島の中で、それゆえに生まれた美意識なんかもあったろう。江戸の芸術として評価されているものがいろいろあるが、もし海外と交流を続けていたら、もっと違ったものになっていて、生まれなかったり、消えていったりしたものもあっただろう。
 だから、まるでプラスを生まなかったわけではない、と思ってる。ただ、多くの発展の機会と可能性を失ったのも、事実だろう。
 ペリーさんが来るまで二百年続いた徳川幕府も、かつて足利幕府が無能化しその権威が形骸化していったように、やがて崩壊していくのであーる。


2004/10/20 (水)   柴田のかっちゃんと前田のとしちゃん、石田のみっちゃん

 ぜひにも、プレイキャラ化を希望。
 あと、黒官と竹半のどっちか。(黒田官兵衛・竹中半兵衛。「二兵衛」と呼ばれた秀吉の軍師)
 直江兼続もほしいなぁ。
 ともあれ、柴田・前田(利家)・石田はぜひほしい。
 と言いつつ、この三人がどういう人物かをちらりと解説いたしましょう。

 かっちゃんは一度、信長と戦っている。家督争いの時、信長の弟・信勝側についたのだ。その後に信長に仕えるようになり、生涯忠義を貫き通した男である。なんちゅーか、味方として見ているより敵として戦った時のほうが、その度量とか才能とかはよく分かるものらしいから、いざ争ってみたら「うつけ者なんて言われてきたがこの人はなんだかすげぇぞ」となったんだろう。
 かっちゃんには有名な逸話もある。篭城作戦中に水路を断たれ、飲み水がなくなってしまうというピンチの時。まずはみんなで思う存分水を飲み、その後に水がめを全て叩き割って鼓舞した、というヤツ。だから「瓶割り(カメワリ)柴田」といわれてもいる。要するに、これでこの城の水はもうない、だから死ぬ気で戦って打ち勝つしかない!という感じだったらしい。この時、「冗談じゃねぇ」と離反する人は誰もいなかったそうだ。そこからしてみると、無骨で武芸一筋の男ではあるけれど、面倒見も良くて頼れるおっつぁんだったに違いない。それに、常に陣頭に立って自分の命を張って戦っているから、口先だけの人じゃない、と信頼されていたんだろう。だから、「この人と共に戦うなら、よしんば討ち死にしても悔いはない」みたいな。
 性格的や外見的には張飛っぽいイメージなんだけど、そのあたりはもっと人当たりが良かったんだろうなぁ。
 かっちゃんと言えば、秀吉と対立したのも無双向け。信長の死後、成り上がりのくせに好き放題に振舞い始めた秀吉がとことん気に食わなかったんだと。そんで、シズガタケで合戦が起こる。勝家vs秀吉だ。これには前田のとしちゃんも深く関わってるから、ぜひにもぜひにも……。

 としちゃんは「決戦V」のあの男前が……。慶次よりもう少しスマートで気障めの傾奇者。後年は堅実な家庭人になったってとこが慶次とは全然違うから、別にキャラもかぶらないし。
 この人も信長の家臣だったんだけど、ある日、自分の笄(コウガイ。簡易クシみたいなもの)が盗まれた。その犯人はすぐに分かって、その時には「成敗しちゃる!」というとしちゃんを周りの人がなだめて誤魔化した。「あいつは信長さまの同朋衆(身辺の世話係)だから、勝手に殺しちゃまずいよ」と。そんでいったんはおさまったんだけど、この盗人野郎がとしちゃんをからかったもんだから、逆上して信長の目前でバッサリとやってしまったのである。もちろん信長は激怒したけれど、「おう、さあ好きにしやがれ」的にとしちゃんは潔いし、周囲の人も「もともとは盗みを働いた奴が悪いのだから」ととりなして、追い出されるだけで済んだのである。
 それからのとしちゃんは、帰参を願って、桶狭間とかにもこっそり参戦してるあたりがかわいい。戦場で功績を上げれば、また雇ってもらえるし、また雇ってもらいたい、とがんばったのだ。信長としても、一度は自分の面目を潰した相手だけど、手柄を立ててくれば面目をほどこしたことになる。役に立つ奴でもあるし、他の大名じゃなく自分に仕えたいと必死になっているのだから信頼もできる。何度目かの手柄で、「帰っといで」とOKを出した。
 無双は史実よりもドラマ重視なんだから、桶狭間に参戦して奮闘、それで帰参を許されるってシーンにすればいいよな〜。ここで分岐だよ。今川・織田が黄色と赤で、としちゃんが一人ぼっちの青。で、織田の武将を倒さずに、指定された今川の武将を倒して信長のところへ行くと、雇ってもらえるのだ。逆に織田を討って今がわに味方し、次々と主を変えていくというとしちゃんもいい。実際この人は、前田家が存続するために、目の前の利益や意地はぐっとこらえて、最終的に徳川から百万石もらってるわけだ。第五話は大阪夏の陣だよにゃー。
 秀吉がかっちゃんを攻めたシズガタケの合戦では、としちゃんは最初かっちゃんに味方し、最終的には秀吉についている。板ばさみだったのだ。どっちも昔からの友達で、娘を養女にしてるだかなんだかと、両方ともにそういう縁もあった。それこそ、「昔は俺たち仲良し三人組だったろ〜? なんでおまえらで戦うんだよぉう」な気分だったかもしれない。この時としちゃんは最初、かっちゃん側についていたけど戦わないまま引き上げてしまっている。それを詫びられたかっちゃんは、「オレは負けるだろうから、おまえは秀吉側につけよ。これからも達者でな」な感じで許してやったらしい。ああ切ないTへT

 みっちゃんは軍師です、参謀です。無双奥義が強い系の武将で。武器は……これが難しいところだ(汗
 OPはお茶出すシーンで決まりだ。で、秀吉配下で、シズガタケとか小牧とかで戦えばいい。第一、彼を入れれば関ヶ原の合戦をシナリオにできる。
 無双的に時間を少し無視すれば、参加させられる合戦も少なくは無い。
 関ヶ原でみっちゃん側に有名武将がいないと寂しい、ってんなら、ミッションの進行で、「上田にいる真田親子に遣いを出す」とかいうのあればいいじゃん。で、成功させると、しばらくすれば幸村推参よ。
 みっちゃんは生涯参謀、ナンバー1の地位は狙わずに、徹底して豊臣の補佐で生きる気だったと言われている。自分の能力を、「最高のナンバー2」と認識していたのかもしれない。つまり、自分はナンバー2とか参謀の座にあってこそ活躍できるのであって、ナンバー1としてやっていける才能とは違う、と。
 これを忠実に守って上ルート、欲を出して勘違いして下ルート、ってのが分岐かなぁ。上ルートだと秀吉の天下でバリバリ働いてるだろう。いろんな指示出して。私としては、平和になったら活躍する場がない武将たちに、「これから貴方たちにできること、してもらわなければならないこと」を丁寧にお願いするようなみっちゃんがいいなぁ。本当の智謀の人。だから、戦バカの新しい活かし方もちゃんと考え出せる人だ。
 下ルートは関ヶ原大敗か。どこで間違ったのか、何故理解してもらえなかったのか。敗戦の決まった戦場に佇んでいるみっちゃんのもとへ、家康軍の足軽が……みたいな。ああ虚しい。

 とかなんとかいいつつ、2を出してほしい、とはあんまり思ってない。
 ただ、もし出すならばということで、こんな戯言でございました。


2004/10/21 (木)   こんなんいかがでしょう

 以下は私のオススメ戦国もの。

・「妖説太閤記」山田風太郎
 秀吉が……。真っ当なファンには殺されそうだけど、お市の方をモノにするために戦を起こすような、女好きで強欲で醜怪で下劣で臆病な秀吉が、これでもか、これでもかと蠢き回る。だからこそ面白いんだけど。
 いくらかそういった要素はあったかもしれない、という程度のものをここまで誇張して、とんでもないキャラクターにしてあるせいで、堅苦しい歴史ものとは全然違う。

・「真田太平記」池波正太郎
 真っ当に、真田親子の活躍が細かいところまで読める。純粋に歴史ものっぽい面が強いので、いささか退屈かもしれないが。
 昌幸・幸村親子の関わる戦とか事件は網羅されているといってもいいので、幸村という歴史人物の人となりを知るにはうってつけかも。

・「関ヶ原」司馬遼太郎
 関ヶ原の戦いが、これでほとんど全て分かる。長いけど、少なくとも歴史の授業よりは面白いし分かりやすい。
 ただ、やはりある程度「小説」というもの自体を読みなれた人向け。

・「尻啖え孫市」司馬遼太郎
 無双の孫市は、この小説の孫市に現代的ダンディズムを足して作られていると思われる。女好きで快活で大らかでテケトーでいい加減で豪胆。かなり美味しいヒーロー孫市。最後まで飄々としてる感じで、生死すら定かでない終わり方がシビれる。
 シバリョウ作品の中では珍しく、キャラクター性が強いかなという気がしてる。短くはないものの、孫市好きなら、読まずに「ファン」は名乗っちゃいけないと思う。

・「花の慶次」コミック・原哲夫
 とりあえず、無双で戦国に興味持ったらここからかな、と。松風との出会いとか、利家の水風呂とか、名シーンをきっちりおさえているのがいいところ。物語としては、原作の「一夢庵風流記」(隆慶一郎)より面白いかと思ってる。
 幸い完全版が刊行されはじめたし、コミック文庫も出てるので、手軽にそろえられるのがいい。……つーか私、無双慶次の2P衣装でこの原版慶次が使えるくらいのことやってくれても良かったんじゃ、とひそかに……。版権問題かなぁ。

・「信長」コミック・池上遼一
 最近になってメディアファクトリーから復刊された。表情の乏しい、あの独特の画風さえ嫌いでないなら、面白く読めるんでないかと。
 あんまり派手なスペクタクルとかないれど、ラストの本能寺で光秀が涙を流すのがすごく印象的だった。

・「国盗り物語」コミック・本宮ひろし
 主人公は斉藤道三。濃姫のダデー、美濃のマムシと言われた男。
 秀吉と同じく、路傍の乞食同然の身から、次々とデカい獲物を食らって巨大化していく様が描かれている。なんかワルモノになりがちな道三だけど、これで読むとめちゃくちゃかっこいい。秀吉よりワルの魅力たっぷりで男くさくて、容赦ないまでのサクセスストーリー。こういうのもアリだろ、と思ってしまう。悪を悪に感じさせないのは、スケールというか、野望の大きさゆえかなぁ。

・「白兵武者」コミック・(作者忘却)
 これは、「足軽」くらいの一般兵の目から見た戦国時代。当時の時代というか、人間の背景がわかってけっこう面白い。ただ、線の濃い、雑然とした感じの「劇画」タッチなので、絵柄で好き嫌いは分かれるかも。

・「うつけ者は名探偵」若年層向け小説・楠木誠一郎
 ルビが振ってあるような、小中学生向けのお気楽ミステリー。タイムトリップした先で、歴史上の有名人と知り合って、そこで起こった事件を解決していく、という趣向で、四冊くらい出てる中の一冊。意外に侮れん……。この信長の巻は、頼りない信長に、歴史と同じことをさせるために奮闘する、という設定があって面白かった。


2004/10/22 (金)   ビジネス戦国占い

 戦国無双が出たことで、いくらか戦国武将と時代の簡単な紹介本みたいなのが出てたはず。
 と思って探してみたけど、注文するほどのこともないし、本屋の店頭にはないし。
 そのかわし、なんかビジネス版の戦国武将占いみたいのを見つけて、ついついやりました。
 あれです、西暦の生年月日の下2桁と生まれた日の数字足して、って形で算出するヤツ。
 日付でそんなもんころころ変わるかよ、と仮にも占星術をまともに学んだくせに冷淡なことを思いつつ試してみると、ワタシは前田利家でした……。
 なんか納得できないわけでもないにょ。
 詳しい内容はちょっと忘れたけど。


2004/10/23 (土)   今日は三国の私事

 アンソロコミックでねー。
 4コマじゃないのがあるじゃないですか。
 あんまり面白くないなー、と今までのは買わなかったんですけどね。
 赤壁。
 周泰&甘寧の話があったんで買っちゃいました(死
 アホ全開です。
 ユミさん、この二人並べてくだすってあーりーがーと―――ございます。
 な気分です。


2004/10/24 (日)   地味に姉川&金ヶ崎の戦いでも解説してみる

 お市、濃姫、秀吉でもプレイすることになるこのマップ。
 なんかお市と長政のラブっぷりが目立つせいで、いまいち意義とか起こった理由とかが曖昧な気がするので。
 これは、無双では信長サイドからばっかり見るせいで、なんだか勝ち戦っぽく感じられるのが誤解のもとである。プレイヤーが勝利するから、戦自体も勝ったような感覚に陥ってしまうのだな、きっと。うむ。
 負け戦なのだと、まず思ってほしい。
 その上で、あんまり詳しすぎる背景は省略して概略でもね。

 まず、ちょっとした無双ファン向けの簡易解説書になら必ず書いてあるのは、「お市の兄(信長)と夫(長政)が戦うハメになった」ということである。しかも、見ようによっては「長政が信長を裏切った」と読めることも多い。
 たしかに浅井家と織田家は同盟していた。そのためにお市を嫁がせたのだ。
 実はこの時、双方で一つ(だけではないが)約束がかわされている。「同盟すんだから、お互いの利益のため、こういうことはしないでおこうね」ということだ。
 その中の一つに、「浅井家に無断で朝倉を責めないでネ」というのがあった。

 足利将軍を支持する旧体制の朝倉家と信長は、モロ対立していた。
 しかし一方で、浅井家は朝倉家に恩があった。
 だから、同盟するのはいいけど、朝倉を攻められたら僕はどうすればいいのか、どっちにも援軍を頼まれてしまうハメになって困るから、なるべくやめてね。もしどうしても戦うなら、前もって相談してね。そうしたらどうするかしっかり考えて返答できるだろうからね。
 ……と、いう気分だったのだろう。もっといろんな政治的な事情もあるだろうが、まあこんなもんだと思っておけばいいのだ、たぶん。

 ところが信長は、その約束を破り、長政くんに相談なしで朝倉を攻めたのである。
 日の出の勢いで実力もある織田についたほうが、浅井の将来が安泰であることは分かりきっている。朝倉家は、三代くらいさかのぼると相当な凄腕で実力があるのだが、現当主の義景は京風好みの弱腰。
 お家の安泰とかを考えれば、本当は織田につきたかったに違いない、と思ってる。
 しかし「約束破った奴」と「恩のある相手」。
 長政くんは……というより浅井家臣団は、やはり旧体制派、信長の革新的すぎるやり方にはついていけなてと思ったんだろう。そんでまた、怖かったんだとも思う。こんなんじゃ、いつ自分らが攻められるがわになるかもしれない、同盟してたって信用できない、という意見もきっとあったろう。
 家の存続を考えれば織田につくべきだったのではないかと思うが、彼等は朝倉を選んだのだ。

 そんなわけで金ヶ崎。
 信長は朝倉と戦をしていた。
 浅井軍は、信長の援軍になってくれるはずだった。
 ところが、朝倉の援軍になってしまったのである。
 予想外のことに信長は敗走する。
 そして、稲姫の「金ヶ崎撤退戦」のようなことになるのだ。無双では信長はもう退却した後で、そこに長政が出てくるけどねー。
 この時、殿軍を引き受けて見事に成し遂げたのが、秀吉である。
 三国無双のほうでも出てくるんで、この「殿軍」という言葉については知ってるだろう。簡単にいえば、「退却する時、一番ケツにいて敵の追撃を食い止める軍」ということ。

 濃姫の「姉川の戦い」は、この「金ヶ崎撤退戦」の後のことと思ってほしい。
 金ヶ崎からなんとか無事に退却できた信長は、軍勢を整えるともう一度、今度ははっきりと浅井・朝倉連合軍に戦をしかけた。
 ゲーム中、砦の中にいる朝倉義景は、砦の前にいて奮闘している朝倉景健が討ち取られると、さっさと退却してしまう。このあたりに義景の弱腰が出ている。
 ともあれ、この戦では織田は浅井と、徳川は朝倉と戦うことになる。ゲームでもそうなってるでしょ。マップ左側のほうに家康がいて、朝倉の砦のほうへと攻めていくのだ。で、織田チームは中央の橋のあたりで浅井軍と攻防することになる。

 この、濃姫の「姉川」で注目してほしいモブ武将は!
 六武器攻略とからめて書いた記憶があるけど、浅井軍所属の磯野くんである。磯野員昌。
 彼は浅井軍の先鋒(一番はじめに突撃していく部隊)だった。
 織田はこの時、たしか十二だか十五だか、とにかく部隊をいくつも並べて防衛線を張っていた。秀吉とか、柴田のかっちゃんもその中にいたぞ。つまり、かなりのツワモノで編成された防衛戦だった。
 これをだ。
 なんと、もう少しで突破しきるところまで突っ込んだんである!!
 モブにしておくの惜しいくらいの大健闘である。

 ともあれ、「姉川の戦い」でミッションを着実にこなしていくと、戦況の逆転が起こる。
 特に、もともと兵力差が大きくて苦戦していた徳川軍は、朝倉軍にかなり押しまくられていた。
 しかしここへ徳川四天王の一人、榊原くんがやってくる。
 この榊原くんをゲーム中で見るのは稀だと思う。何故なら、それまでにプレイヤーが朝倉を撃退していたり、家康が敗走したりしていやすいからだ。しかしなんとか朝倉義景・徳川家康の双方がいるようにしておければ、榊原くんの護衛ミッションが起こる。
 実際の姉川の戦いでは、苦戦していたところへ榊原くんが横から攻撃に加わり、朝倉を退却させることに成功したのだ。

 なんとなく分かってもらえたろーか。
 少しややこしいけど、
・「金ヶ崎撤退戦」では、基本的に織田vs朝倉。
・この時、織田につくはずの浅井が裏切って(先に約束破ったのは織田だけど)朝倉についたため、織田は敗走した。
・ちなみのこの時お市は、あずきを入れた袋の両端を紐で縛ったものを信長に送り、「袋の鼠」と伝えようとしたという逸話がある。要するに、「浅井が後方からお兄ちゃんを攻めるよ」ということだ。これのおかげで信長はからくも脱出が間に合ったとも言われている。史実というより伝承だけど。
・後日、リベンジの「姉川の戦い」が起こった。
・これは、「裏切りやがって浅井め!」というなんか逆恨みもはなはだしいものがないでもない(いや、朝倉討つべし!がメインで、浅井がそっちにつくならもー知らんっ、くらいなんだろうけど)。
・これは織田・徳川連合軍vs浅井・朝倉連合軍の戦い。
・はじめはAAチームが優勢だったし、ものすごい活躍した磯野くんもいたけど、朝倉軍が崩れて敗走すると、みんなして浅井軍を攻撃、長政は負けてしまった。
 という流れである。

 無双というゲームは、強くしたキャラで短時間で、となりがちだが、「姉川」はじっくり腰を据えて、濃姫の六武器とるくらい丁寧に進めれば、かなり史実の雰囲気が出るマップ。
 プレイヤーは遊軍扱いで、苦戦している家康や織田軍を、ただ助けるだけにしているといい感じ。反撃の隙をうかがう、というふうに。本当はものすごい劣勢だったんだから。
 磯野くんは、濃姫の姉川、「光秀救援」ミッションで倒さなければならない相手。ハイパー化してるので、モブと侮れない。特に難易度「地獄」。もう一方の浅井政澄はハイパー化していなかったような記憶もあるんだよなぁ。

 ここからは些事(歴史的には些事じゃないけど)。
 ちなみに、織田の援軍で来る美濃三人衆。これは援軍として来るまではなにしてたかというと、姉川より南にある城(横山城)を攻略していたのである。
 この戦い、浅井軍はハナから不利だった。だから、篭城戦に持ち込みたかった。しかし信長としては、野戦で短期決戦にしたかったらしい。
 だから、大事な横山城(前線基地であり、他国との交易の連絡経路にもなっていたとか)にちょっかい出すことで、浅井軍を出撃させたのだ。ほっといたら横山城が落とされてしまう、と否応なく戦わざるをえなくしたのだな。
 勉強不足なもんで、この横山城を攻め落としたのかどうかまではちょっと分からない。浅井軍が動いたら、すぐに合流すべく北上したのかもしれない。
 ともかく、この美濃三人衆が加わり、更には朝倉が撤退してやることなくなった徳川軍までやってきたのでは……三方向から攻められて、長政くんに勝ち目なんか、ホントになかったのである。
 負けた彼は小谷城(ゲームでは長政のいる砦がそのつもりなんだろう)に入り、お市は織田に送り返して、自分は自害したのであった。


2004/10/25 (月)   信長の実像とは?

 なんてタイトルでも、別に難しい話じゃなくて。
 いや、ある意味では難しい話なのか。

 三国志が、一見は事実のようでありながら、その実、正史ですら時の朝廷の権力との関係で、「都合のいいこと」しか書かれていないと言われる。
 信長の記録についても、無論、他の武将、大名の記録についても、これとまったく同じことが言える。

 この間紹介した本の中で、小中学生向けのものがあった。
 内容は、合戦の実像とかに迫るものではないけれど、子供にウソを教えない、というモットー(信念)があればこそなのか、けっこうしっかりしていたりするのである。
 まさか触れられているとは思わなかった「信長公記」(ちなみに「シンチョウコウキ」と読む)。
 私は大学時代に教授から教えられたのだけど、信長の行動などについては、太田牛一という人の書いた「信長公記」から知られている部分も多い。
 つまり、もしこの太田さんが「ちょっとかっこよく書いておこう」とか考えていたら、もう一発アウトである。事実なんか分からないのだ。

 現実、現在、現代。
 今目の前にあるもの、いる人、その言動すら、しょせんは「私」の解釈で成り立っている。
 つまり、目の前にいるAさんが微笑んで顔を赤らめて走り去ったのを、「あ、オレが好きなのか?」と解釈するか、「え? オレなんか変な格好してる!?」と思うか。
 で、誰かに「どうやらAさん、オレのこと好きみたいでさぁ」とか言っちゃって、話されたその人が「AさんはBくんのことが好きなんだ」と思い込んでしまったら。
 実際にはズボンのチャック全開で笑い出しそうになったのをガマンしただけのことが、とんでもない解釈をされ、しかも「事実」として受け取られてしまわれかねないのである。

 太田さんが信長をどう解釈したか。
 太田さんが見ていなかった側面も必ずある。
 また、太田さんの書いたものを、現代にいたるまでの学者がどう解釈したか。
 更には、その研究書を読んだ人がどう解釈したか。

 まあ、言ってしまえば信長の実像なんて、分かるわけはない。
 実は人を殺すのが(というか戦争が)大好きで、人が「好き」というものをとにかく壊したくなり、それを見て裏でウケケケケと喜んでいるような奴だったかもしれない。それを誰かが「革新性からくる徹底殲滅のうんたらかんたら」と解釈しているだけなのかもしれない。
 ホントは名もない誰かが呟いた案を、信長が世間に公開し実行しただけ、ということもある。

 信長の見せる、一向一揆の徹底殲滅など、苛烈な行動。
 さて、これを「あなた」はどう解釈するでしょう。
 サディスティックにか、ロジカルにか、あるいはロマンティックにか。
 つまり、歴史も結局は、永遠に「つくりばなし」の域を出られないのだと私は思う。
 いくらかの事実(それは、「こう言った」という事実ではなく、「こう言ったと書かれている」という事実)をもとに、隙間を埋めた空想、推理。
 歴史もしょせん、現実のパロディなのだ。


2004/10/26 (火)   桶狭間の戦い in 無双

 信長の章の場合である。
 時間的にこれを第一話にするしかないのは分かるんだけど、そのせいでどうも、「不利」という感覚が乏しい。
 これ、スタート時のマップを見てもらえれば分かるんだけど、ほとんどの砦が今川軍におさえられていて、兵の数も圧倒的に織田軍が少ない。
 にも関わらず、雑魚にせよ敵武将にせよ、これが非常に弱いため、危機感や緊迫感がまるでないのだ。

 次々と砦を落とされ、リーチがかかった状態で、大軍を相手に電撃的突撃をかけ、一気呵成にまろの首をとった。
 このシチュで想像されるテンションが、無双のシナリオではあまり再現されていない。なにせほとんど苦戦することも申告されることもない。
 実際この桶狭間では、まろ本隊の人員をさらに薄くするため、少数で、決死の囮をつとめた武将などもいる。名前はちょっと出てこないが、ナントカ隼人といったような気がする。
 彼が、今川軍に落とされた砦に突っ込み、まろの軍勢をそちらにさかせ、本陣を手薄にさせたのである。

 と、ここでちょっと調べてきたが、突撃したのは佐々隼人ほか、となっている。場所は丸根砦。
 ちなみにこの丸根砦を織田から奪っていたのは松平元康。後の徳川家康である。無双でも、信長の章では家康はこの丸根砦にいる。
 なんと、一万の敵の中に、三百での突入らしい。
 まあ、本気で討ち死に覚悟だったろうな、これは(汗
 しかし、こんな少数の突入に対して、まろが援軍を差し向けたとも思えないあたりが謎のデータである……。普通ほっとかないか、これ? 「一万もいるし、もとやっちゃんがなんとかするだろー」くらいで。

 ともあれ、義元の首さえとれば、という戦いだった。
 博打だったとも思う。
 義元を倒したはいいが、そのまま壊走されることがなければ……もし、その場で即座に軍を立て直せる名将がいれば、織田はどうなったかも分からないはずだ。
 それだけの器の人物がいないことを事前に把握していなければ、とても打てない博打だったろう。
 これらのことを考えると、無双の信長第一話は、やはりあまりよろしくない。
 秀吉の小牧みたいに、史実ではその突撃で死んでしまう武将(秀吉の場合あれだ、池田くん。申し出てつっこんで井伊に殺される運命の。ゲームでもそうなってる)というのを出したほうが良かったんじゃないかなと思う。
 そんで、「佐々隼人を救援せよ」みたいなミッションがあるわけ。信長の章じゃないほうがいいな。お市か濃姫がいい。歴史ではそこにいなかった彼女らのシナリオだから、「お兄ちゃんが隼人さんを捨て駒にするしかないのは分かるけど、だったら私が助けてあげる」みたいなのもああじゃないかと。
 あと、士気は織田軍のが高かったろうけど、数の差がもっとほしかったなぁ。圧倒的不利そのものの正面を迂回して、山道から奇襲するもよし。また、実は桶狭間で奇襲は行われなかった、とも言われているから、正面攻撃にからんで駆け引きがあってもいい。
 もう少し、緊迫感のある展開がほしかったと思う。
 第一話でそれは無理なのは分かってるけどね……。


2004/10/28 (木)   浅井長政のプレイキャラ昇進は成るか!?

 あちこちで、プレイキャラにしてほしい、と言われているっぽい長政くん。
 私は微妙だと思ってる。
 何故なら、他のメイン武将も登場する戦で、かつ彼が参加しているものというのが少ないのが、マイナスの理由。
 金ヶ崎撤退戦と姉川で二話かせいでも、それっきりである。あとはお市の章の「IF」と同じような展開にしかならず、「大差ない」ものになりがちと思われる。
 ぶっちゃけ、歴史上にあった戦でもIFルートでも、そこに繰り広げられたドラマをよく表現しているものは、いささか少ない。その上に、さらに曖昧なシナリオを増やすのは、ゲームとしてのクォリティを考えた時にどうだろうと思うのだ。
 六角家との戦なんかは、他の家のメイン武将がいないんじゃちょっと無双の舞台にはしづらかろうという気もする。しかも北条ほど有名でもないし。

 家康にしても、「これ以上、大差ない展開のシナリオを増やしてどうする」という観点から、猛将伝でも削られたんじゃないかという気がしてならなかったり。
 あと、持たせる武器やモーションと、武将のイメージなんかの統合がとれなかつたとかいう理由もありそうだ。

 ただ、家康に比べれば長政のほうが、プレイキャラに取り立てられる確率は高いかなという気がする。
 家康のほうは、もう半蔵や忠勝でおおまかな戦を用い、IFの世界もやってしまった。
 だが長政のほうは、織田家に味方して朝倉家と戦う、というIFができる。
 旧体制に近い光秀が本能寺で裏切って朝倉支援につく、とかすれば、敵メイン武将の不在という問題の解決できる。
 無理やり五話態勢にするなら、vs六角家・金ヶ崎・姉川・小谷城篭城戦にもう一つ、なんとか戦を加えれば体裁は整う。最後の三つは一連の戦だけどさー。
 IFにするなら、金ヶ崎で分岐すればいいから、織田についての姉川でのvs朝倉、光秀こみでリベンジしてきたvs朝倉、お市に手ェだす秀吉撃退、とか(←最後でギャグにしてどうする

 あとまあ、三国無双でスタイルが変更されたように、五話形式にこだわらず、勢力ごとのシナリオにするとか、救済方法はある。
 そうすれば家康もプレイキャラ昇格は容易になるかなと。徳川勢のシナリオを誰で進めるか、という問題なら、家康でもいいわけで。
 こうした場合、使うキャラによって発生するミッションが異なる、という方法で個別化できるかのー。つか、そういう形で一つの戦を多面的に展開させたほうが潔い気がする。似たようなシナリオを、別個のものみたいにしてやらせるよりは。
 あとはつくづく言ってる三人と、本願寺の顕如和尚……。ピアスつけまくってるパンク和尚……。ああああ、背中のトゲつき車輪を投げ、独鈷で戦いてぇ。