「あのぅ……」 「いらっしゃいませ。本日はなにをお探しですか」 「あの、……アーマーを……探してるんです」 「かしこまりました。―――失礼ですがお客様。ご自分で使われるものではございませんよね?」 「はい。あの、ちょっと……人にあげたくて……」 「かしこまりました。お客様。アーマリーシステムについては、どれくらいご存知ですか?」 「ぜ、全然……知らないんです」 「さようでございますか。大丈夫ですよ。私が一緒にお選びいたしましょう」 「ありがとうございます。私、なにも知らないのに買いに来て、迷惑だったらどうしようって」 「ご心配なく。では、1つずつおうかがいしますね。まず……そうですね。そのかたは、貴方と同じヒューマンですか?」 「いいえ。サラリアンなんです」 「ふむ。体格は平均的ですか? もし目立って大柄、小柄であれば、特殊な調整が必要になりますので」 「たぶん、普通だと思います。友達と一緒にいても、みんなだいたい同じくらいに見えますから」 「かしこまりました。では次に、……もしかするとご存知ないかもしれませんが、そのかたのバトルスタイルについてはどうでしょう」 「バトルスタイル、ですか?」 「サラリアンですと後方支援、戦術支援につくことが多いのですが、そのご友人は?」 「ええと……ごめんなさい。よく分からないんです。でもたぶん、そういうんじゃないと思います。ただ……」 「ただ?」 「この間、大きな怪我をして……。彼の友達に聞いたら、戦ってるときに爆発があって、壁が崩れてきて、破片で頭を打ったんだって。その友達が、もっといいヘビーアーマーがあれば平気だったかもしれないのにって」 「ふむ……」 「だから、その"ヘビーアーマー"のいいのがあれば、それをお願いしたいんです」 「しかし、その、貴方の"お友達"のご友人ですが、冗談でヘビーアーマーがあればいいと口にした可能性もありますよ。支援でも、それくらい重装備していれば万一のこともないだろうという意味ですね」 「そうかもしれません。でも、頑丈なアーマーを着ていてまずいことって、ありませんよね」 「かしこまりました。しかし、サラリアンとなると単純な重武装では満足に動けなくなる可能性もありますし……おすすめは、最新のシールドコンデンサーを搭載したこちらです。防御力に比して軽量で、関節の動きを妨げることがなく……」 「え? あの、すみません。しーるど、こん……?」 「………………」 「ごめんなさい。なんにも知らなくて」 「いえ。そうではなくて……。余計なお世話かもしれませんが、いつも、その"お友達"たちと話していても、彼の話していることがよく分からないんじゃないかと思いまして。そういった話はしないのであればいいのですが」 「あ、そうなんです。いろいろ話してくれるんですけど、分からない単語がいっぱい出てきて。しかもサラリアンってものすごく早口で……私に合わせて少しゆっくりと喋ってくれるんですけど、話してるとすごく楽しそうで、なかなか待ってって言えなくて……」 「もし良かったら、基本的なことをお教えしましょうか? そうすれば、その"お友達"の話していることも少し分かるようになるでしょうし、アーマーを選んでいただくのにも役に立つでしょう」 「でも、いいんですか? ご迷惑じゃ?」 「いいえ。買うものが決まっているお客様は販売機で購入していかれます。私がここにいるのは、こういったサービスのためです。それに……こんなご時勢ですからね。種族に関わらず、大切な友人のためになにかをしたいと思うかたの手助けをするのは、私にとっても大きな喜びになります。では、少しさかのぼるようですが、アーマーの種類からお話ししましょうか」 「ぜひお願いします!」
「では、これでよろしいですか?」 「はい。あの、ローンって今、組めないんですよね? 支払いができなくなる可能性が高いからって」 「残念ながら、そのとおりです。……ここまでお話ししておいて言うのもなんですが、これはかなり高価なものになりますので……」 「いいんです。これくらいなら、今乗ってる車を手放せば足りますから」 「それはまた、ずいぶんと高価な車ですね。それこそ、好きだからこそ、苦労して買われた車ではないのですか?」 「いいんです。だって、売れるものなら、またお金があれば買えますから。でも……、……買えないものは、なくしたらそれで終わりだから……」 「―――かしこまりました。それでは、せめて、これくらいはさせてください」 「え!? でも!」 「ほんの5%です。私の独断で行える割引は、これがせいぜいですので」 「でも、それだって、他のアーマーが買えるじゃないですか」 「構いません。当店には年間のお支払い額に応じたリピーター割引があります。それをほんの少し、先行でつけるだけだと思ってください。その代わり、またなにかあったときにはぜひ当店へどうぞ。いつでもご相談に乗りますよ。彼が、いつも無事に戻ってきてくれるといいですね」 「はい! ありがとうございます!」
The End |