緑溢れる光の中で

 

 林の中の遊歩道を貴方と歩く。
 まだ明けきらない朝の光が、柔らかく木の間から降り注いで、歩く貴方の頬にかかる。
 グレーの影が斑を描き、少し眩しそうに、目を細める貴方。
 思わずじっと見つめてしまった私の視線に気付いて、歩みを止める。
「なんなんだよ」
「……なんでもないよ」
 見惚れていた、なんて言えない。
 そんなことを言えば、貴方は怒ったふりで照れ隠し。
 見なくても、分かるから。
「ほら、行くぞ」
「うん」
 歩き出す貴方を追う。
 ゆっくり歩いてくれるけれど、それでも私は一生懸命追いかける。
 半歩下がった、この場所が好き。
 貴方の横顔と肩と、背の見えるここが好き。
 貴方が、好き。
 好き。
「………」
 ふと、足を止める貴方。
「言わなくても、分かってるからな。言うなよ」
 そして小さく笑う、貴方を照らす朝の木漏れ日。
 私はただ頷いて、そっと貴方の腕に、腕を絡めた。

 

「肖像画」にある伊達のカラーイラストにつけたもの。
原画をさしあげると同時に、メールにてこの文をプレゼント。
ここの「私」は女性読者のつもりで書いてる。