烏の足跡



2014年6月5日(木)

 コーヒー、あまり好きではありません。
 ブラックで飲んで美味しいと思ったことはありません。
 このあたりは好みの問題なので、「そんなことない」とコーヒー党から力説されても困ります。
 あと、ブラックで一日に2杯も飲むと胃にクる私……。

 しかし今手元にはドリップバック型……とでも言うのかな? そういうコーヒーがあります。前にも書いていると思うのですが、粉末で溶かすのよりは、こういうもののほうが美味しいとは思います。たぶん、本当に豆から挽いて淹れたりするともっと美味しいのかもなと、思います。
 けどもちろんブラックでは飲まないので、砂糖の瓶と、牛乳が必須!! 猫舌気味なのもあって、飲もうというときには冷蔵庫から牛乳出してくるのです。
 こうして、少し甘くして(砂糖2はーい)牛乳入れて(コーヒーと5:1くらい?)飲んでいると、美味しいと思います。はい。
 そういえば電王で、愛理さんが、「世界的にはブラックで飲む人のほうが少ない」とか言ってたような記憶。その真偽はさておき、飲食物なんですから、自分が好きなように調味して飲めばいい、とは思ってます。
 ブラックでないとコーヒーを飲んでいる意味がない、なんて言った人が身近にいますが、一方でこいつはマヨラーでした(笑)。マヨはいいですけど、それで素材の味ほとんどわからなくして食ってるものもあるのに、コーヒーにだけそんなこと言われてもなぁと、一緒にいた連中といじめてやった記憶があります。素材の味そのものを美味と思って味わえるのは幸福、贅沢なことだけれど、調味してあるほうが好きだというのが間違いだ、というのは、傲慢ってものです。はい。

 そんなふうに、「粉よりはバッグのほうがいい」と思って、ミルク&砂糖inでなら好んで飲んでもいるコーヒー。(ちなみにフレッシュ、加工乳は×)
 しかし、お湯を注いでいる途中の匂いだけはどうしてもダメ orz
 というか、コーヒーの匂いって、タバコの臭いに似てません?
 私はタバコも吸わない、吸いたいと思ったこともないし、ヘビースモーカーの人とは近くで話すのもできれば遠慮したい―――口臭がもうどうしたってタバコ臭いんですよ。そこまでいかない、普通に吸うだけの人なら構いません。父がタバコ普通に吸う人だったので、目の前で吸われるくらいは別に。ただ、密室で数人となったら出ていきますけど。
 というわけで、タバコの"におい"は、"匂い"でなくて"臭い"と書くわけですが、この点でも、私はブラックコーヒーを美味しいと思うことは生涯あるまいなと、改めて思う次第です。

 コーヒーとタバコの関係。
 私が身近で知っている人で、コーヒーをブラックで、しかも毎日何杯も飲む人って、必ずタバコ吸うんですよね。しかも、ちょっした時間でもすぐに。
 もちろん、一方だけの人もいるでしょうが、なんとなく、因果がないわけでもない気がしてしまいます。嗜好の味・匂いに共通するものがあるから、両方好きになることが多い、かもしれない?くらいですけど。

 ともあれ、味の違いなんてよく分かってないので、いつも適当にブレンドを買ってる私。
 今度、モカとかいろいろ試してみようかなとは思ってます。できれば、小分けにしていろんなのが入ってるセットがあるといいんだけどなぁ。



2014年6月16日(月)

 ずいぶんこっちのザレゴト放置してますね。
 ここんとこはずっとKindle読書です。買うだけ買ってまだ読んでなかった捕物帳系のものとか(半数は再読だという……)、発売に気付かずショックだった「敵は海賊」シリーズの新刊とかっ。
 そして今は都筑道夫のなめくじ長屋シリーズを……何度目かは知りませんが、また読んでます。
 Kindleの不便なところは、「刊行順」というソートができないこと。そのため、タイトルに巻数が入ってないと順番がさっぱり。「なめくじ」シリーズはどこから読んでも別に構いやしないからいいけどさ。
 せめてこっちでサブタイトルみたいなのつけて、それでソートできたりすれば便利なんだけどなぁ。



2014年6月18日(水)

 ……あれ? Kindleで出てる「なめくじ」シリーズ、……足りないぞ……?
 「小梅富士」がない、と気付いたのです。それに、棺桶の中から生き返って屋根で見つかる、とかいう切支丹の葬式話もない。「天狗起こし」だったっけ? イブクロが出てくる話もない。
 そう思って確認してみると、案の定3冊まるっと抜けてやがる……!!
 ちょっと待てやー……orz
 これからちゃんと刊行してくれるとは思えない、巻抜け。最終巻がないだけなら、これからなのかなとも思えますが、2冊めがないんだから決定的。
 まあ、実家に全巻ありますから、別にいいんですよ? いいんですけど、電子書籍でも全部そろえたいわけじゃん?
 それにしてもなんでこんな抜け方してるんでしょう。後の巻がないなら、電子化してもほとんど売れないからやめた、とか考えられますが。「差別的な表現がどうの、発行当時のどうの」という注釈つきで出してあるものだし、普通に紙の本では出回ってるものなんだから、抜けている巻が発禁なんてわけでもあるまいし。
 なんだかなー。

 ついでに、風野真知雄の「勝小吉事件帖」も買って読んでました。こちらは紙。レンタルしに出掛けてふらっと文庫棚見て気になったので。
 風野真知雄という作家の作品はいくつか読んでいますが、「この人女嫌いじゃないかな。少なくとも女を良いとは見てないな」と思ったのだったりします。それは、作中での女性の扱い方がテキトーだから。魅力的に描かれていることがまずないのです。だから、別に嫌いではないとしても、魅力的だと思って書いてはいないだろうし、自分でそう感じてないから、いい女もなんだか薄っぺらく、男の登場人物ほど生き生きとしてないんだろう、と。
 それは余談。
 「勝小吉〜」はさくっとあっさり読めました。短編集なので尚更さくさくと。新装版ってことは、もともとの発行はもっと昔なのか。
 勝海舟の父親、無頼漢・勝小吉をアームチェア・ディテクティヴにした話です。座敷牢に閉じ込められたままで、子分格の又四郎を動かしてちょっと調べさせ謎を解く、という。
 耳袋秘帖シリーズとか、大江戸定年組とか、何冊か読んだことのあるシリーズもあるけれど、途中でやめているあたり、何冊も読めるほど好みではないらしいので……。
 私にとってこの作家は、一冊きりで終わってくれる話ほうがいいですね。「水の城」も面白かったし。



2014年6月19日(木)

 唐突に、「プレデター」が見たくなりました。
 どっちもけっこう面白かった覚えはあるのですが、見たのがだいぶ昔でさすがに記憶にありません。それにAVPは見てません。なんかこう……イロモノっぽいというか、ゲテモノっぽいというか。いや、登場するプレデターやエイリアンがイロモノであったりゲテモノであったりするのは最初っからですけど、それでもしっかりB級ド真ん中であれだけやればきちんとA級、みたいなことされつつ、エイリアンのほうは続編微妙だったりしつつ、でもそれを一緒にしたからっていい話になるかなぁ?と、前評判で感じて、それっきり。
 もうだいぶ過ぎましたが、今更AVPを見たくなったので、どうせならプレデターを最初から見てみようかなと借りてきました。
 ちなみに「エイリアン」は、アクションっつーよりパニックものなのであんま好みじゃなかったり。



2014年6月20日(金)

 ………………。
 「小説書く時間が満足なだけ取れないなら、死んだほうがマシ」。
 とまではさすがに言えないけれど……案外とことんまで突き詰めたら言っちゃうのかもしれないけれど、そこまで追い詰められたことがないので分かりません。
 しかし、私にとってこれが、相当な優先事項であるのは確かです。

 むかーしのザレゴトに書いたんじゃないかな。夢の話。
 地震に遭う夢です。たしか。それで家が大きく傾いて、「逃げなきゃやべぇ!!」っていう状況になるのですが、そのとき私は、その部屋にあるフロッピーディスク―――これまた時代を感じさせるけれど、私はパソコンが当たり前になる前の時代からそれなりに長いこと書いてるので、パソコンを手に入れるまではずっとワープロにFDだったのですよ。
 ともかく、今まであれこれと書いた話の入ってるFDを、取に行くかどうかで迷うのです。夢の中で。
 たしか「即座に取りに行く!とならないところがかえってリアルだった」とか、感想を書いたんじゃないかと思うけど……。そのザレゴトが残ってるかどうかは不明です。相当前ですのでね。

 私は、夢の中で追い詰められると、たいていチキンで卑怯な振る舞いをします(笑
 助かりたい一心で仲間をモンスターのほうへ突き飛ばして逃げるとか、そんな夢見たこともあります。
 実際危機に陥ったら、そうなんだろうなと思ってます。そういうときに落ち着いて冷静に行動して切り抜けるとか、仲間を優先するとか、そんなカッコいいことできないんだろうなぁと。
 分かりませんけどね。案外逆に、リアルで追い詰められたら開き直って平気になるってことも、ないことはないのかもしれません。が、一番いいのはそんな危険なことにならないことです!!(←当たり前だ
 えーと、だからなんだというかというと、「夢の中の自分って、あれこれと理想の自分を思い描いてしまうよりずっと卑小で、等身大なんじゃないかな」ってことです。
 だから、家が傾くような地震でマジ命かかってるのに、「あぁっ、あの中にはいっぱい話が……」と思うのもまた、等身大なのかもしれないのです。

 そんなもんどうでもいい、と飛び出せないくらいには大事なもの。
 他のものを持ち出すことはちらりとも考えなかったのに、唯一取りに行こうか迷わずにいられなかったもの。

 それは日常のちょっとした中にも時々現れます。
 たとえば、昨日書いてますけど「プレデター」。このザレゴトは時々、話題が違うからと先の日付のところへと分けて書いていることもある上に、私の生活が昼夜逆転してるため書くタイミングがおかしく、実はレンタルしてきたのは17日です。
 見たくて借りてきたくせに、まだ見てません。
 なんでかというと、やっぱり、書いてるからなんです。
 そっちが優先。
 映画なんていつでも見れる。見ずに返すことになって数百円損するとしても、そんなことより「今書きたい」という気持ちが優先。
 ……まあ、Kindleで金田一の「八つ墓村」再読し一気読みきってたりもするので、プレデターの優先順位ってかなり低いんですけど(笑

 もう少しオオゴトになると、私には必殺、「ま、食わなきゃいいか」があります。
 大学時代が実際にそうでした。CDほしいとかゲームほしいとか、そういうもののほうがお金の使い道として優先で、「食わなきゃいい」のです。
 そして実際に半年くらい、一日の食事が食パン一枚にキットカットの分包のヤツ1個、なんて生活してました。しかもそれで病気にもならず疲労も感じず平然と学校行ってバイトしてたんだからすげぇな自分。
 若かったからかなぁ、という感慨はさておき、実は今も全然変わってません。
 今は、仕事やめてふらふらと貯金切り崩して生活してます。ふぅ。仕事やめて一年半。途中一年間バイトしてましたけど、月に3〜5万くらい分しか働きに行ってません。そして今は再びまったくまっさらフリーダム!
 しかし当然、「仕事辞めたときの貯金がいくらで……残額がいくらだから……」と計算し、「このままいくとあとこれくらいでゼロか……。使いきってから動くんじゃ間に合わないから、遊んでられるのもせいぜいあと半年、そこからはバイトでもいいから、元のように週5、一日実働で8時間、普通に働かんとやばいな」といった理性は働いています。
 働いてるんですが、同時に、「いや、待てよ。切り詰めればもう少し……」と。
 言うまでもありませんが、真っ先に切り詰めるのはケータイの使用料でもなければゲームだの本だのではなく、食費です食わなきゃいいんですよ。一日100円か200円くらいでいいんじゃない?みたいな。しかも賢くお買い物して節約するとかじゃなく、コンビニとか使いながらその発想。昨日500円使ってるから今日は家にあるもの。(だから最低限、米くらいは置いておく)
 それで平気な限りにはGO。つまり「あかん」と思ったときには生活改善少しはするわけですが、そういう発想です。

 そして、私の優先度の最上位は常に「書くこと」です。
 だから、書きたいものがあってノリまくってると、ゲームしません。本読みません。人と遊びません。バイト程度はすみませんテキトーなこと言って休みました。(さすがに正社員の間に仕事はサボらなかったが) 丸一日食べてなくても空腹を感じません。寝ません……とはいかないけれど、何時間寝てないとか、何時間寝たとか消し飛びます。睡魔に負けるまで書き、考え続け、たとえ1時間だろうと寝て起きてしまったらもっと寝ようなどとは微塵にも思わずすぐパソコンの前。そうなるのです。
 つまり、「書く>>>>>>>>>その他娯楽>日常生活」くらい(笑
 それでいて小説家やライターを目指したりはせず、書いて食ってるわけじゃない無為。
 金になるから書くわけじゃなく書きたいから書く、書きたいものを書く、書かずにいられないから書くだけで、単なる馬鹿。
 でも「馬鹿になれなくなったらそこから先は余生」、ふと思いついて以来、座右の銘……いやまあ、馬鹿やってる言い訳にしてる言葉です(笑

 書けないくらいなら死ぬ、とまでは言わないかもしれないけれど、書きたいのに書けないなら生きていたとしても「余生」程度の惰性。
 そしてそんなお馬鹿さんの片鱗が、この3日私の横にほったらかされて触られてもいないTSU○YAの青い袋にも表れているのでありましたとさ(笑

 ……あ。
 ところで、言わんでください。
 そこまでしてこの程度か、とは(笑
 いいんですよ。人の評価がほしくて書いてるんじゃなく、書きたいから書いてるだけなので。



2014年6月22日(日)

 やっと「プレデター」鑑賞。
 やっぱ面白いわー。

 まずは1から。
 プレデターが自分の傷に応急処置を施す=医療という文明のある相手と分かるシーンがこの映画のミソだと勝手に思ってます。
 映画通というわけではないので、いろんな映画を知ってて言うことじゃないのですが、少なくとも私がそのとき知ってた範囲では、こういう映画のモンスターって、食欲とかで襲ってくる巨大生物とか化け物だったのが、プレデターでは人類と大差ない文明を感じさせる相手。しかも、武器を持った相手しか襲わない、あるいはそれを優先して襲う、というあたりが新鮮でした。
 改めて見ると、相手が赤外線探知っぽいもので獲物を見ていると知れるあたりも秀逸。映画見ている側にはとうに分かってることでも、それを映画の中のダッチ(シュワちゃん)がどうやって知るかの流れが自然だなーと。川に落ちて這い上がったところで冷たい泥まみれになる、そのせいで見つからなくなり、戦う土俵が出来上がるわけで。
 最後の決戦も納得感あって格好良くていい! あのシュワが、トラップとか仕掛けてその策略で戦うのがいいのです。雄叫びあげて相手に自分の存在知らせるとこ、今回見ててぞくっと来ました。ええわ〜。
 ただ、赤外線を見ているというだけなら、泥を塗ることそのものは無意味なんじゃ……というツッコミが。川に浸かって体温が下がる、冷たい泥にまみれる。だから見えなくなるのであって、泥に体温が移ったら無効になるんじゃ……?

 2はロサンゼルスのど真ん中にプレデターが現れる、という思い切った設定。
 今度のプレデターはますます、「戦闘能力のある者以外は襲わない、殺さない」というところが強調されてます。それこそ徹底的に。見てる人は知ってることですが、「武器を持っている人」を、にも関わらず殺さなかった理由、ですね。武器を持たない相手は殺さない、というよりもっと厳しく、殺してはならない、という戒めがふるように感じます。あくまでも強いものを狩るハンター。
 主役が交代し、刑事になったのも結果的に良かったんじゃないかな。
 見ながら思い出しましたけど、全体的に面白いしテンポもいいこの映画で唯一「おいおい」なのは、主人公の刑事が単独でプレデターを追いかけること。化け物相手に応援も呼ばずに行動するのが違和感なんですよね。もう自分一人しか残ってない、という1のような状況ならともかく。その点では、シュワほどのタフネスでもないおっさんが戦いぬくのはちょっと変な気も。
 で、最後に泥まみれになるのは1へのオマージュか(笑

 そして初鑑賞のAVP。
 ちょ、まさかの展開なんですけど!?
 この設定でいくとプレデターは大昔から地球に来てたし、そこて意思疎通もあったわけだから、現代でもそれが可能なのは分かりますけど、「ぼんっ」をジェスチャーして見せるのはさすがに違和感(笑
 前評判で食わず嫌いしなくても良かったかなと思う程度には面白かったけれど、ツッコミどころも一番大きいかも。
 プレデターたちの成人の儀式として、エイリアンと戦わせる、そのエイリアンの繁殖場が南極の地下にある、というのはいいけれど、あれだけの数のちびエイリアンとなると否応なく爆破処理とかしなければならないわけで。
 とすると、「奥にある武器を取って、それを用いて脱出すればOK」という儀式内容でないと無理があります。しかもその場合も、逃げ切ったら毎回爆破して終わり? なんかシマりません。
 戦士として一人前であると認めてもらうための儀式で戦うことが必須なら、戦って倒すための少数精鋭が相手でいいはず。あんなうじゃうじゃ出さず、生贄の間に用意される生贄と同数でいいと思うんですよね。
 それともあれですか? 今回は母体にあたるエイリアンが逃げ出してて、これがイレギュラーだから、ついでにうじゃうじゃいるのもイレギュラー? でも回想というか解説シーンでもうじゃうじゃしてたよね??
 それはそれとして、シリーズ通して出てくる、戦う相手に顔を見せるシーンは、「強いと認めた相手」に対する礼儀みたいなものなんでしょうかね。

 3作品続けて見て、一番良かったのはやっぱ2かな。
 1もAVPも及第点で、「続編はクソになる」なんてことのないシリーズの一つだったと思います。
 ……そういや、「プレデターズ」も見てないや。あれって続編的なものだったっけ? と思ってレビュー見てみると……うーむ、別物として見ればそれなりに楽しめるのかな。でも、人間同士でいざこざ起こしてだらだらやられるのって大嫌いなんだよなぁ。
 私がアクションとかSFばっかり見てるのって、ヒューマンドラマとか恋愛ものの、そういうまだるっこしさに耐えられないからで……。
 ヒーローはヒーロー、ヴィランはヴィラン。もちろんその中に、いくらかの葛藤とか衝突とかはあっていいけど、あんまうだうだやられるとイラッと来てしまう……。
 それに、プレデターが罠仕掛けたり猟犬使ったりするのか……。
 ……はっ!? そういえばAVPって2もあったっけ!?
 でも……これこそ駄作くさいなぁ。
 やっぱプレデターものは、1・2・AVPでやめとこっかな。



2014年6月26日(木)

 金田一シリーズ、「八つ墓村」「夜歩く」「本陣殺人事件」「車井戸」「黒猫」と読んできました。「夜歩く」以外はすべて再読。
 そして「獄門島」にとりかかり、「やっぱりこれが金田一のマイ・ベストかな」と思いました。
 「八つ墓村」とか、二度は読んでるのによく覚えてないんですよね。けど「獄門島」は、最初のほうを読むだけで"一番の悲劇"がさっと蘇ります。三人の娘の凄惨な殺され方、見立て殺人という部分だけでなく、何故その殺人が起こったかという犯人の動機と、最後に明らかになってひっくり返されるときのインパクト。読み始めるまでは朧気だった記憶がぱっと蘇るのはこの作品だけです。
 「八つ墓村」は辰弥の洞窟冒険が混じってしまうし、犯人の動機が今一つ薄ぼんやりしてるのが難。典子ちゃんとのロマンスはいいんですけどね。春代さんも好きです。癒されます。
 「夜歩く」は映像化しにくいせいもあってあまり知名度がないものの、評価は高いので今回やっと手を出してみました。面白くないわけではないけど、微妙かなぁ。読み終わるなり、印象もトリックも事件もぼんやりしてしまう感じ。「で、だからなんだったん?」みたいな。
 「本陣」は好きです。なんといっても景色が見事。動機にも違和感はないし。仕掛けが大掛かりで「本当にそううまくいくのかよ」みたいな疑問が残るくらい。
 「車井戸」は陰険でどろどろしているのがなんとも。「黒猫」はダブルトリック……でもそれだけかなぁ。トリックに凝りすぎていて、そのために他のすべてがある感じ。

 その流れで映画も借りてきましたが……寅さん(違)が金田一やった「八つ墓村」はアレンジされすぎていてなんだかな。「祟りなんて関係ない、それを利用しただけ」という今を生きる人の業みたいなものが、本来のあり方なのに、落ち武者の子孫だなんだに結び付けられて完膚なきまでおじゃんになった感。動機もなにもかも変えられてるし、個人的には一番の駄作「八つ墓村」映画。
 どうせなら市川崑監督のものが見たいのですが(トヨエツ版)、レンタル中なのか事故品で下げられているのか店頭になくてしょぼん。
 もう一本は石坂浩二版の「獄門島」。これはかなり好きな作品です。さすが市川監督! 冒頭からさすがだなと思います。ストーリー知らなければ分からない、きっちり伏線。けどピーター鵜飼は怖い(笑)。小説としてもですが、金田一の映像作品としてもこれが一番好きですね。

 その後、「悪魔の手毬唄」「悪魔が来たりて笛を吹く」「迷路館」と読みつつ、映画と、「本陣」のドラマ版も。
 うまい映像化は、原作の持つ人間関係をキモは残して簡略化していることが分かります。
 また、「手毬唄」では、犯人に対するスタンスが原作と大きく違うのも特徴。原作では犯人=身勝手で冷酷、同情すべき点などないという感じですが、映画では悲劇性が強められています。しかし、だからこそ「そこまでするかな?」という違和感が残るのも事実。
 あと、「手毬唄」では「見立てる必然性があったのか?」とよく言われますね。「獄門島」ではそうしなければならなかった(映画版ではそこの描写弱いのですが)、でも「手毬唄」では、そんなに苦労して現場を作る必要はなくて、キーアイテムを置いておくだけで良かったものを、映画版ではかなりの労力費やさないといけないことをしています。特に二番目の殺人。原作じゃあそこまでやってないんだけどな。
 あと、「手毬唄」の最大のツッコミどころは、「そんなに早く犯人の予想ついてたのに、なんの対策も立てない金田一」ですよね、やっぱ。"一連の犯行が終わるので凶行を防げない名探偵"として有名な金田一ですけど、翻弄されて分からないとかならともかく、分かってるのにみすみす見過ごした要素が非常に強いのが「手毬唄」のように思います。第一の殺人で見当ついてたなら、たとえ確信まではないとしても誰かに見張らせておくとかしろよ!!
 ということを考えると、「金田一は常に犯人に協力し、完遂させる手助けをしていた!」とかいう設定でのパスティーシュみたいなものがあったっていい気がするんですけど……。世の中にあるとは思いますが、それが出版されているかどうかを私は寡聞にして知りません。

 なお、「迷路館」は初めて読みましたが……うーむ、ネタはいいけど物語としてのダイナミズムがない……。
 なんか、会話だけで無理やり進めてる感じ。物語がなくて、説明のための記述と会話があるだけというか。無駄にこまかい間取りの説明も、推理に必要になるわけでなし。
 あと、貴族階級に対する反感持った老刑事が、あからさますぎてなんだかな。安直に「つっかかる」だけなのがリアリティの欠如。
 トリックがどうの雰囲気がどうのというより、単に物語として没入できるかどうか、という点が問題のような気がします。読者の選ぶベストに入らないのも当然かな。

 ちなみに横溝作品は、「人形佐七捕物帳」も好きです。
 しかしこれも、Kindleでは自選ベストで3冊しか出てないんだよなぁ。実家には文庫で全部揃ってるけどさぁ。
 銭形平次とか、捕物帳系は好きなのでどうせならKindleで揃えて、思い出したときに常に手元にあるようにしたいのですけど、全話揃ってるものがないのがツラい……。




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